41話 僕と最悪のレベリング。
「そんなばかな……でござる」
どさり。ちゃりーん。
校庭の土の上に、悲しく転がる刀。
ヤマトくーん! 実力派のプライドが音を立てて崩れ去ったよ!
「あぁー!!」
幸せそうな顔で上空へ吹っ飛んでいくサムソン。そうだよね、サムソンは素手だからそのまま愚直に殴りかかったら、レベル90超えの乳ビンタを正面から喰らって吹き飛ぶしかないもんね! 力任せの乳ビンタ、恐ろしすぎる!
「つっよー!!!」
同じく乳ビンタの直撃を受けて、笑顔で空を舞うラフェちゃん。楽しそうで何よりです。
いや、これよく見たらほとんど聖剣関係ないな! 谷間から剣を生やしたまま、ルビーさんが全速力で左右に振る乳ビンタの風圧と質量だけで、クラスメイトを薙ぎ払ってるだけだな!
風圧で吹き飛ぶのを耐え、
乳ビンタの直撃を耐え、
それを超えると、やっと胸の聖剣との打ち合い(本番)になるんだな!
なんで無駄に段階を踏んだ、洗練された修行システムになってるんだよ!
「ユーキくん、大変だよ!」
血相を変えたシエルくんが走ってきた。
「なんだ? なんか進行不能のバグでも見つけた!?」
「『鑑定』でずっと見てたんだけど、あの乳ビンタ食らうと、なぜかレベルが1上がる!!」
「なんでだよ!!」
「レベル差のせいですわね。あの乳オバケ、無駄にレベルだけは無敵級に高いですから。システム上のパーティアタック扱いですわ」
リアが隣で、さも当然のように解説を挟んだ。
「殴られるほうのレベルが上がるのはおかしいだろ! どんなMMOの育成論だよ!」
「さあ、邪神に瞬殺されたくなければ、ご主人様もちゃんと乳ビンタされてレベル上げてきてください(笑)」
「今、最後の語尾に露骨に(笑)って言っただろ! 絶対僕が吹っ飛ぶところを見たいだけだろ!」
あーもうしょうがない、全員が空へ吹っ飛んで全滅したタイミングで、僕はルビーさんに右手の小指を向けた。
「ルビーさん! レーザーいくから、ヤバそうだったら避けてね!」
「ユーキさん! どんとこいです! んしょ」
ルビーさんが両手で胸の外側から肉をグッと中央へ寄せ集め、谷間に挟まった聖剣をしっかりと固定した。
「集中できないので、構えがいちいちえっちなのやめててもらっていいですか!?」
「えへへー」
確信した! あれ、狙ってやってるわ!
魔王は「ルビーに当たったら一瞬で木っ端微塵だぞ」って言ってたけど、聖剣を構えて正面から受け止めれば平気だよね?
「いっけー!!」
僕の小指から、極太の光の熱線がルビーさんに向かって真っ直ぐ放たれた。
ズガァァァァン!
あ、聖剣で受け止めた。あ、受け止めそこねて体に直撃した。
「あばばばばばばばばば」
あー、これあれだ。魔王城でリアに当たった時と全く同じ挙動だ。聖剣なだけに光属性なんだ! 持ち主も聖剣を装備してる間は、光属性の判定になるんだな!
「ああああああああああ……っ」
なんか、激しい振動のせいかルビーさんの声があやしくなってきた……。僕は慌てて小指のレーザーを止めた。
「はぁ……はぁ……。ユーキさん」
頬を赤く染め、やけに艶っぽい表情で僕を見つめるルビーさん。
「な、なに?」
「ユーキさんには……もっと、修行が必要です」
「あ、ああ。そうだね? 僕の魔力コントロールが甘かった?」
「もう一回です! さあ! あ、今度は胸と下腹部あたりを、こう、撫でるようにお願いします!」
「いやだよ! 絶対に本来の目的が変わってるだろそれ!!」
──邪神との決戦まで、あと20日。




