42話 僕と決戦の日。
とうとうこの日が来てしまった。
今日が満月の日。
いや人多くない!? 城塞都市の外に兵士の大群がおるんだけど!
「……国王に話したから」
ぽつりと呟いたミントちゃんを見やる。ああそう! ミントちゃん神様なんだっけ!? お告げでも下したのかな!?
「お前らは一番下っ端だからな! 最後尾だ!」
教官の怒声が響く。
あれ? これはある意味、僕たちは戦わなくてもいい奴では? 数の暴力で邪神ヤれるんじゃない?
あ、遠くで王冠かぶった王様みたいのがなんか演説してる。まったくきこえないな!
地響きのような大歓声。とりあえず波に乗っておこう。
「おーー!!!」
「なにを口をぽかんと開けて叫んでいるのですか、ご主人様。頭の中のハエでも追い出そうとしているのですか?」
隣から冷たい視線と鋭い毒舌が刺さる。リア、いつものことだが、相変わらず容赦がないな!
おや? なんか豪華な鎧を着た小太りの男がこっちきた。
「邪神が居る迷宮はここから十キロの黒霧の渓谷だ。いくぞ!」
「あ、お前、チーザー・ベッケンブヮーガーじゃん! なんか偉そうだな!」
「偉いんだよ! ここの領主の息子だぞ俺は!」
徒歩かー。まあレベルも上がったし、十キロぐらいたいしたことないよな。
◆
「ぜえ……ぜえ……ぜえ……十キロ……死ぬかと思った……」
「ぜえ……ぜえ……ぜえ……死ぬかと思った……」
十キロ先の大穴に到着するなり、僕とチーザーは同時に地面へ倒れ込んだ。
「お互い体力ないな!」
「お前と一緒にするな! 俺は全身鎧なんだよ!」
肩で息をする僕たちを見下ろしながら、リアが小さくため息をつく。
「ご主人様。この程度で根をあげるなんて、足までジャガイモでできているのではないですか?」
「だからジャガイモを悪口にするのやめろよ!」
「毎日、小指からレーザーを出して蒸し芋を作っていらっしゃいますものね。いい加減、私のためにより上質なオヤツを用意するべきでは?」
「お前が夜になるたびにお腹すいたって言うからだろ!? いつも黙々と食べてるじゃんか! 僕の分まで!」
「がはは! 相変わらず二人は仲がいいな!」
「うらやましい……」
豪快に笑うサムソンと、うらやましそうに呟くヤマトくん。
え、二人ともそんな目で見てたの!?
「うらやましいとか言われても……なあ?」
隣にいたシエルくんに同意を求めるも、彼はやれやれと首を振ったあと、静かに他のクラスメイト達を指さした。
「……っえ!?」
ハンカチを噛んで「キーッ!」と悔しがっているヤツ。盛大なブーイングを飛ばしてくるヤツ。あ、僕と目が合うと、親指で自分の首を切る仕草をしたあとにグッと下に向けたヤツまでいる!
「リアさん綺麗だから人気なんだよ。知らなかったの?」
シエルくんの呆れ顔に、僕は思わず声を張り上げた。
「ウソだろ!? リアだぞ? 口を開けたら毒舌しか出ない女だぞ!?」
「ふふん。当然ですわ」
自慢気に胸を張るリアだが、そのままそっと僕の背中に隠れて盾にしてきた。やめろよ! まだ人見知り治ってないのかよ!
「なにを今更……従者枠で男女同室なんて貴族ぐらいしかいないんだからな。平民のお前がエルフと同室なんて妬まれて当然だろ」
チーザーの指摘にハッとする。
「!? そうかー! いや、みんな僕が毎日床で寝かされてるの知ったら、そんな嫉妬の態度取れなくなると思うけどね!?」
「ともかく! あの巨大な洞窟が目的地だ。もう残ってるのは俺達だけだ! 突入するぞ!」
チーザーが掛け声を上げた、その瞬間だった。
——ドサドサドサッ!
「え? チーザーくんの取り巻き達どうしたの? 急に白目剥いて倒れたんだけど!?」
「ふむ。今回はだいぶマシだな」
振り返ると、まともに立っているのは、チーザーくん、シエルくん、サムソン、ヤマトくん、ラフェちゃん、うさ耳姉妹、リア、僕、そしてミントちゃんだけだった。
泡を吹いて倒れた大勢の生徒たちの間を縫うようにして、ルビーさんを伴った第一形態のロリ魔王が、こちらへ優雅に歩いてきた。




