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38話 僕の帰還。

「よし。では次の満月だ。この世界の神の力が一番増す次の満月を決戦の日にする。ルビー、次の満月は何時だ?」

 

 魔王の問いかけに、ルビーさんは胸を張ってキリッと即答した。

 

「わかりません!」

 

「分からないなら堂々と言うな!!!」

 

「次は21日後ですね」

 

 隣でリアが、淡々と答えた。

 

(うちのメイドがポンコツじゃない……だと!?)

 

「当たり前ですわご主人様。あの歩く肉塊と一緒にしないでいただけます? 私の頭脳は、ゴミの処理日程から天文の周期まで完璧にインプットされておりますので。ご主人様の脳みそのキャパシティがジャガイモ並みなだけですわ。きしょ……」

 

(容赦のない毒舌で無駄に凹ませてくるんじゃないよ!!)

 

「21日後、迎えに行く。それまでにその小指を使いこなせ。無事邪神を倒せたら祝言だ」

 

「だから、そういうのは──」

 

「人間を皆殺しにするのと、どっちがいい?」

 

「逃げ場がねえ!!!」

 

「おめでとうございますご主人様。合法の化け物と祝言を挙げた暁には、ご主人様の尊厳は完全に削除されますわね」

 

「不吉な祝辞を述べるな!!」

 

「では、帰れ」

 

 魔王が指先を鳴らした瞬間、僕とリアの足元の床に巨大な黒いゲートが開き、僕たちは無慈悲に暗闇へと落とされた。

 

 ──ふぎゅぅっ!?

 

「ぶはっ!?」

 

 校庭の上空から放り出された僕の身体は、地上に倒れていた『ラ・フィ』と『レ・フィ』のウサ耳双子の上に、見事なジャストサイズでドスンと落下した。

 

「レ・フィ!? 大丈夫!? 嫌だわ、穢らわしい男(不燃ゴミ)に触られたわ!!」

 

 ラ・フィが目を回して「ふぎゅぅ……」と倒れているレ・フィを抱き起こし、パニックになった。

 

「大変! どうしようどうしよう、人工呼吸だわ! こういうときは人工呼吸って保健の授業で習ったわ!!」

 

 長いウサ耳をパタパタとせわしなく動かしながら、ラ・フィはレ・フィの唇に勢いよく覆いかぶさった。……そのまま、白目を剥いていたはずのレ・フィが、ラ・フィの腰にしっかりと自分の足を絡め返し、真っ昼間の校庭で濃厚すぎるキスを交わし始めた。

 

「いやいやいや! 意識めちゃくちゃあるじゃん!! 白目剥きながら足を絡めてんじゃないよ!! 真っ昼間の校庭で何をおっぱじめてんだよ!!!」

 

 僕が秒速で突っ込んでいると、周りからぞろぞろとクラスメイトたちが集まってきた。……ミントちゃんの姿だけが無いな。

 

 どうやら、さっきまで校庭全体を覆っていた魔王の覇気がようやく解けたらしく、みんな頭を振りながらヨロヨロと起き上がり始めている。

 

「あれ? ユーキ……なんかお前、急に雰囲気に威厳?が増してないか?」

 

 サムソンが首をかしげながら言った。


 ……なぜだか、両方のまぶたが真っ赤に腫れ上がっているのを、僕の心の平穏のために見なかったことにした。

 

(あ、そうか! みんな気絶してたから、僕が魔王城に連れ去られてたのを知らないのか!)

 

「なんだか……ひときわ強そうになってるでござるな!?」

 

「あれ? おかしいな……僕の『鑑定』のスキルが弾かれる!?」


 シエルくんが片目を押さえた。


「シエルくん、君ね、他人のステータスを息をするようにすぐ鑑定するのやめよう? 普通にプライバシーの侵害だからね!?」

 

 ザー……。

 

 その時、校庭のスピーカーからノイズ混じりの校内放送が響き渡った。

 

『1年のユーキと、エルフのリア。今すぐ校長室まで来るように』

 

「あー、早速呼ばれたなあ。ちょっと行ってくるよ」

 

 みんなに手を振って歩き出すと、足元でまだ倒れている女子生徒が目に入った。あ、ラフェちゃんだ。……女の子が生涯で絶対にしちゃいけない顔で、全身をビクンビクンと痙攣させている。

 

(……そりゃあ、最高峰のドラゴン魔王の覇気を浴びたらそうなるよね……。うん、見なかったことにしよう)

 

 校舎に入り、重厚な校長室のドアの前に立つ。

 

「校長室とか緊張するな……。リア、校長がもし凄い権力持ちの貴族とかだったらどうしよう? 変なこと言って怒らせたら無礼討ちとかされない?」

 

「大丈夫ですわご主人様」

 

「本当か!?」

 

「ええ。もし無礼討ちされたところで、この廊下にちょっと大きなジャガイモが転がるだけですから、世界になんの支障もありませんわ」

 

「僕の命の価値って野菜と同レベルなのかよ!?」

 

 コンコン。

 

 僕は覚悟を決めてドアを叩いた。

 

「ユーキとリア、入ります」

 

「入れ」

 

 ギィとドアを開けると、部屋の奥の豪華な革張りソファーには、いかにも厳格そうな白い髭を蓄えた老人が座っていた。

 

 そして、その前のソファにちょこんと座っていたのは、ミントちゃんだ。

 

「待ってた」

 

(あーもう! 嫌な予感しかしない!!!!!)

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