36話 僕と魔王。8
聖剣、重い。
盾、重い。
「次はぁ、こんなのはどうでしょうかぁ」
次にルビーが出した『魔法使いのローブ』は普通に着ることができた。
「おお、軽い! 着れる!」
「良かったではないか!」
魔王が満足げに頷いた瞬間、隣でリアが冷たく言い放った。
「ですがご主人様、魔法を1ミリも使えないジャガイモ(ぽんこつ)なのですから、それを着ても防御力が不燃ゴミになるだけでは?」
僕は無言で、そっとローブを脱いだ。
「次!」
「はぁい! ピンクのハイレグアーマー!かわいいですねー」
「着れねーよ!!! ペラッペラじゃねーかそれ!勇者、なんてもの仲間に着せてんだよ!次!」
「はぁい! 黒光りする首輪(光るクローム製)です!」
「装備部位バグってるだろ!!! あと何そのサイバーパンクな質感は!? 勇者何に使ってたのコレ!?」
「あ、ごめんなさい、ルビーの私物でした!」
「混ぜるな不審者が!!!」
「次い!!」
カサッ。
テーブルの上に落ちたのは、クシャクシャになった茶封筒。
「……なにこれ。手紙?」
中を覗き込むと、達筆な文字で『お母さんへ。魔王城に着いたら仕送りを──』
「未投函の実家への手紙じゃねえか!!! 泣けるからやめろよ!!! 粉微塵になる直前のリアルを出してくるなよ!!!」
「次!」
「はぁい! ネコ耳カチューシャ! 全耐性80%アップ! 防御力も爆上がりする最上級アイテムです!」
「……。性能はすごいな。おいリア、これお前にいいんじゃないか?」
僕が勧めると、リアは親の仇でも見るようなジト目で僕を睨みつけた。
「拒否しますわ。高貴なハイエルフの私が、そんな他人の尊厳を完全焼却するためだけに作られた獣耳の模造品を頭脳に乗せるわけがありません。きしょ……」
「えー、かわいいと思うのに。じゃあとりあえず僕が──」
僕は軽い気持ちで、それを自分の頭の上に載せた。
カポッ。
被った瞬間違和感が。
ん?んん?
──でろでろでろでろでーん♪
突如、ガラステーブルの上のステータスプレートから、おどろおどろしい呪いのファンファーレが鳴り響いた。
『 ユーキは呪われた! 』
「あ、その装備呪われてます!」
「遅いよ!なんで装備した後に鑑定の結果を流すんだよ!!」
「ご主人……ププッ……様。ものすごく、お似合い……ぷぷっ……ですぷよ?」
こいつ、他人事だと思って…まあ性能はいいし、とりあえずはいいか…
「次」
「はい! 『激辛ペ○ング』にオススメ、世界樹の枝で作られたマイ箸です!」
「なんで世界樹の枝をそんな無駄遣いしてるんだよ!装備品ですらねえよ!!」
「いただきます」
スッ。
隣から伸びてきたリアの手が、無言でルビーさんからマイ箸をもぎ取った。
──その後も、ルビーさんの谷間から不条理なアイテムがポップし続けた結果、最終的に僕が全身に装備できたのは以下の通りだった。
『盗賊のバンダナ』
『勇者が持っていた頑丈な布の服(ただの普段着)』
『盗賊の皮の手袋』
『盗賊の皮のブーツ』
「……。ご主人様、それ、どう見ても勇者ではなくただの『盗賊』の初期グラフィックなのでは?」
「お前が他人の装備をことごとく拒否させた結果だろうが!!!」
「ま、まあ、見た目はどうあれそれらも伝説級の性能なのだ。良かったではないか」
魔王は、僕の頭の上で情けなくピコピコと動くネコ耳を見つめながら、必死に笑いを堪えている。
「で、どうなの?迷宮のボス?これで勝てそう?」
僕が真面目に尋ねると、魔王はふっと目を逸らしながら、
「あー……。どうだろうな。アイツ、この世界の存在ではない……他の世界の神? 邪神?っぽいのだがな。最低条件として、この世界の『神の手助け(加護)』がいるな。忌々しいことだが」
「神の加護? そう言えばさ、さっきからルビーさんの在庫の中に僧侶系の装備が全然無かったけど、前の勇者パーティの僧侶はどこにいるの? 生きてるの?」
僕が最悪を想像して身構えていると、魔王がめんどくさそうに言った。
「僧侶? ああ、それならルビーが──」
もしやその僧侶、別の意味でこの爆乳サキュバスに食べられちゃったとか……?
「はぁい! 勇者パーティの元僧侶でぇす!」
「いやお前が僧侶なんかい!!!!!!!」




