35話 僕と魔王。7
「……ま、まあ、勇者?であることに変わりはあるまい。スキルも小指からレーザー?光線か? 強そうではないか」
冗談じゃない! このままでは魔王すら勝てないレベル100の戦いに強制投入されてしまう!
「僕のスキルなんて、本当にただの、こんなのですよ!?」
僕は右手の小指を虚空に向け、ピッと突き出した。
ズガァァァァン!!!!!
凄まじい大爆音と共に、僕の小指から極太の光の熱線が発射された。
「うっはあ!」
レーザーはハーフ魔王の頬の数ミリ脇を掠め、そのまま魔王城の重厚な壁を綺麗に十数枚ぶち抜いて突き抜けていった。
「わあ! ナニコレ!?」
ツー、と魔王の頬に一筋の血が流れる。
魔王は、ガタガタと全身を震わせながら涙目で叫んだ。
「こちらのセリフだ馬鹿者が!!! 我が必死に超反応で避けなければ、また本気で一度死ぬところだったわ!!!」
「あー! 止まらないいいいい!!!」
レベル47の魔力が暴走してるのか、小指レーザーの照射が全く止まらない。僕の手の動きに合わせて、暴れるレーザーが魔王城の天井や床を無慈悲にガガガガと破壊していく。
「我の城を壊すな!!!」
「そんな事言ったって!!」
必死に指を曲げようとするけど、全然止まらない! わあーー! ああー! と上体を激しく逸らしたり、ジャンプしたりしながら、必死のカメラワークでレーザーを避ける魔王。
「あっ、ヤバい! リア避けて!!!」
完全にコントロールを失った光線が、ソファーの上のリアの細い体に正面からブチ当たった。
「あばばばばばばばばばばば」
激しい光と煙がリアを包み込む。……が、なんかあんまり効いてない!?
「リア、大丈夫!?」
「あばばばば……。ご主人様、これ、絶妙な振動と熱量で肩こりにめちゃくちゃ効きそうですわ。血流のログが通常時の4倍にデプロイされています」
魔王が、避難した物陰からぽんと手を打った。
「ああ、なるほど。完全な『光属性』の熱線なのか。ならばハイエルフには1ミリも効かんな」
「そうなの!? どんなご都合主義の属性システムだよ!?」
ズガアアアン!
魔王は、さらに華麗なイナバウアーで僕のレーザーを回避しながら叫んだ。
「あああ! こっちに向けるでない! 万が一、ルビーに当たったらあの歩く肉塊など一瞬で木っ端微塵だぞ!」
ピタリ。
あんなに止まらなかった小指レーザーが、一瞬で消滅した。
僕は重々しく頷いた。
「それは、全人類の損失ですね」
「止められるではないか!!!!!(涙目)」
魔王は息を荒くしながらソファーにへたり込んだ。
「とにかく! お前はもうレベル47なのだから、むやみにスキルを使うでない! レベル3の時とは質量が違うのだ!」
ああ、そうか。あのペヤング熱湯の暗殺のせいで、僕、いつの間にか一線級のスペックまでレベルが跳ね上がってたんだ。
「でも、急に勇者って言われても、伝説の武器とか防具とか、そういうテンプレの装備がないぞ」
「あー。それは問題ない。ルビー、鎧だ。勇者のやつを出せ」
「はい! 魔王様ぁ!」
ルビーさんはお間抜けに返事をすると、またしても胸の谷間にガバッと手を突っ込み、そこから禍々しい赤黒い色をした鎧一式を次々と取り出し、ガラスのテーブルの上にドサドサと積み上げた。
「ふむ。少々、前の汚れが残っているな」
魔王が指先を鳴らすと、鎧が不気味な黒い炎に包まれた。そして炎が消え去った後には、ピカピカに光輝く、純白の白い美しい鎧がポップしていた。
「待って! なんで今、そんな血みどろみたいな赤黒い色だったの!? 前の持ち主どうしたの!?」
「……まあ、細かい事は気にするな。ここに突っ込んできた勇者が着ていたヤツだ。たぶん伝説の鎧とか、そういう便利なやつだ」
「気になるよ!!! その勇者、今どうなったんだよ!」
魔王は、耳をほじりながらめんどくさそうに吐き捨てた。
「粉微塵になって死んだ。前の勇者、まったく話が通じなかったからな」
隣でリアが、完全に大真面目な顔で呟いた。
「食べたんですね」
「食べてないわ!!!!! 我を野生の魔獣か何かと勘違いするな!!!いいからそれを着ろ!」
僕は渋々、ルビーさんに手伝ってもらいながら、その純白の美しい鎧を全身に装着していった。……が。
「魔王、大変だ」
「どうした?パワーアップしたか?」
「重くて動けない」
「貧弱か!!!」




