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20話 僕とオークの生態

 歴史の授業は面白かった。

 

 やはりファンタジー世界らしく、オークとの戦争の歴史とか。

 僕が重々しく頷きながら話を聞いていたら、どうやら歴史の先生、ひげもじゃの赤髪の先生は僕のことが気にいったらしく、たまに重々しく頷き返しながら歴史を教えてくれた。


僕はどうしても気になった事を、聞いてみた。

 

「先生質問です」


 先生は重々しく頷いた。

 

「どうした」


 僕は重々しく頷いて聞いた。


「オークに捕まったらどうなりますか?」

 

 先生は重々しく頷いて答えた。

 

「……食われる。文字通り、骨の髄まで、綺麗にな」

 

「え、あ、そっちなんだ」

 

 僕は思わず重々しく首を傾げた。

 

 おかしいな、前世の薄い本とかネットの知識だと、オークに捕まったらなんかこう……『くっ、殺せ!』的な、もっとこう、色々あるはずなのだが。この世界のオークは、純粋に食欲の化け物らしい。

 

 僕が微妙にガッカリ……いや、困惑していると、隣の席のリアが、つ、と目をそらしながら、信じられないものを見るようなジト目を向けてきた。

 

「……ご主人様。私のスキャンセンサーが、主人の脳内から『オークに対する身の程知らずで不健全な期待』を検出しました。捕まったら普通に命の終わりです。今すぐその薄汚い妄想を永久に消去してください。……キショ」

 

「だから期待なんかしてねえよ! 純粋な学術的好奇心だよ!」

 

「嘘を言わないでください。主人の顔、いま一瞬だけ『くっ、殺せ!』のシステムが起動しかけていましたわ。オークの皆さんも、そんな不審なジャガイモ農家を捕まえても、不燃ゴミが増えるだけなので大迷惑ですわよ」

 

「言い方ァ! オークの心配をするな!」

 

 僕たちがいつものように言い合っていると、斜め後ろの席からヤマトが「ふむ……」と腕を組んで、これまた重々しく頷いた。

 

「オークとの戦い、まさに命がけの死闘……。ユーキ殿がそれほどまでに敵の生態を深く知ろうとする姿勢、拙者、感服いたした。やはりただの農夫ではないな」

 

「いや、ヤマトくん、君は僕を評価しすぎだからね!? あとなんか怖いからその期待の目をやめて!」

 

 さらに、前髪の長いシエルくんがメガネの奥の目を輝かせながら、僕の右手の小指をじっと見つめてきた。

 

「なるほど、オークの厚い皮膚を撃ち抜くために、【小指からビームが出る】っていうスキルをどう応用するか考えていたんだね? ユーキくん、やっぱり凄いよ。……ねえ、授業が終わったら、その小指の構造、僕の鑑定眼でじっくり調べさせてよ」

 

「だからシエルくんもなんか目がこえーよ! 小指をバラそうとしてない!?」

 

「あら、ラ・フィ。ユーキが今度はオークと怪しい契約を結ぼうとしてるわ」「本当ね、レ・フィ。エルフの次はオークだなんて、人間って本当に怖いわね。怖いわ怖いわ」

 

「うさ耳姉妹、君たちは僕をなんだと思ってるの!? あと、指を絡めながらほっぺたくっつけて僕を見るのをやめなさい。今は授業中です」

 

 教室のすみっこで僕たちがそんなギャーギャーとしたやり取りを繰り広げている中、ひげもじゃの赤髪先生は、僕たちの賑やかさを怒るでもなく、むしろ満足そうに重々しく頷いた。

 

「うむ。皆、初日から実戦を意識した素晴らしい気概だ。──では、次の章、オークの『食の好みの』について。オークは人間の、特に女性の騎士を好みとし、」

 

 先生が教鞭を執り直すと同時に、僕は我慢できなくて思わず叫んだ。


「やっぱくっころじゃねーか!」

 

 それを見た先生も、やっぱり嬉しそうに重々しく頷き返してくれる。

 

 まぁ、オークに食べられる心配はなさそうだし、授業自体は面白いから、これはこれでいいのかな。

 

 僕は窓の外ののどかな青空を眺めながら、まだ見ぬ明日の授業(と、リアの野次)に少しだけ期待を寄せて、もう一度、重々しく頷いたのだった。



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