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18話 僕の昼ごはん。

 僕は重々しく頷いた。


……なんでこうなった?


「ごめん、まさかヤキウなるものが、格闘技ではなかったとは」


 サムソン……お前、バットでいきなりキャッチャーを殴りかかるとは思ってなかったよ。


「いや、立派な防具つけてたし……」

 

「キャッチャーの格好はたしかに立派な防具だね!あいつ本格的な防具持ってたばっかりに……」

 

「「ごめん、まさかヤキウなるものが、ペアで参加出来ないなんて」」


「あ、うん」


 ラ・フィとレ・フィね。最初白黒一緒にバッターボックス入ったもんね。その後説得されて……今度は左右のバッターボックスに入ったもんな君たち!

 

 ほんと仲いいな!

 

 今だって指絡めながらほっぺたくっつけてるってどんな関係だよ!反省の欠片も見えないな!


「ごめん、まさかヤキウなるものが、玉を叩き落とす競技じゃなかったなんて…」


「あ、うん。ラフェが一番おしかったよ……」


「うん…手の届くところに来た飛んでるものは叩き落とすって本能が抑えられなくて…」


 それが素手じゃなければなぁ。


「ごめん、まさかヤキウなるものが、球を斬ったらいけないとは…」


「あ、うん」


 ヤマトはこえーよ!こいつバット居合に構えて、球斬りやがった!何をどうやったらバットで球斬れるんだよ!


 リアと目が合った。

 リアがつ、と目をそらした。


「野次飛ばしても、僕たちの試合、終わってるからね!?それよその試合だからね!僕たち1試合目、2回でコールド負けだからね?試合3回までなのに、最後までいかなかったからね!」


「いえ、ベンチの中だけでも参加してる雰囲気にしようと思いまして」


「いや、ここベンチじゃないからね?すみっこで邪魔にならないように、皆で座って眺めてるだけだからね?雰囲気悪い集団にしないでくれる?」


 そんなこんなで、交流が目的という午前の授業?は終わった。ずっと座ってるだけだったけどな!

 まあ、みんなと仲良くなれたからいいかな。


 グラウンドでの泥泥野球から解放された僕たちは、お腹を空かせて広い食堂へとやってきた。

 

 長い机につくと、それぞれの席の目の前の木目に、淡く輝く魔法陣が浮かび上がっていた。

 

 先輩の話によると、この魔法陣は座った人間の思考を読み取って、その人が『いま一番食べたいもの』を自動で用意してくれる素晴らしい仕組みらしい。

 

 だが、その説明を聞いた瞬間、僕の脳裏に最悪の嫌な予感が走った。

 

 朝食の時は、僕が「とりあえず小腹を満たしたいな」とぼんやり考えていたからか、出てきたのは普通の食パンと牛乳だった。だから周りの目を引くこともなく、平穏に紛れることができたのだ。

 

 だけど、お昼はまずい。午前中にあれだけ泥まみれになって動き回り(僕はツッコミを入れていただけだが)、エネルギーを極限まで消費した僕が、今猛烈に欲して止まない食べ物──。

 

(ラーメンだ……。濃厚で、油がギトギトに浮いた、あのジャンクな豚骨ラーメンが食べたい……!)

 

 一度浮かんだイメージは、空腹の脳内で完全に固定されて消えてくれない。

  

「おい、もうすぐ時間だぞ!」

 

 サムソンの声と同時に、食堂全体の鐘がゴーンと鳴り響いた。

 一斉に机の魔法陣が眩しい光を放ち、生徒たちの前に、それぞれが望んだ料理が現実化していく。周りを見渡せば、豪華なステーキや、都会風のお洒落なパスタ、山盛りの果物などが次々と現れていた。

 

 そして、光が収まった僕の目の前に現れたのは──。

 

 大きな黒い丼。その中に並々と注がれた、白濁とした濃厚なスープ。

 

 香ばしいにんにくと油の香りが立ち上り、ぶ厚いチャーシューと、細切りのキクラゲ、そしてたっぷりの青ネギが美しくトッピングされている。

 

 前世の日本の味が、完璧に完全再現された【特製・豚骨ラーメン】だった。

 

(うわあああ、やっぱり出ちゃったよ! 匂いが完全に異質すぎる!)

 

 慌てて隣を見ると、なぜかリアの前にも、僕の丼と寸分違わぬ豚骨ラーメンがどんと鎮座していた。

 

「……。ご主人様、私の目の前に、私の知識には存在しない『未知の油の沼』が生成されたのですが。この、強烈に食欲をそそる不審な香りは一体何なのですか?」

 

「いいから黙って食ってみて。これが前世の日本の至高の技術だから」

 

 みんなが「いただきます」とそれぞれの食事を口にし始める中、僕とリアも、箸を使って麺をすすり始めた。


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