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17話 僕の初試合。


「ヘイヘイヘイ!ピッチャーびびってるよ!」

 

 リアの汚い野次がグラウンドに木霊する。

 真顔でなんてこと言うんだこのエルフは。


 学園記念すべき最初の授業は…なんと野球だった。

 眼鏡を掛けた、渋いおっさん先生が、教室にはいるなりこう言った。


「あー。今日からこのクラスを担当するベネディだ。これから親睦を兼ねて野球するから、全員着替えてグラウンドに集合!」


 この世界、野球あるのかよ!


 朝食が大広間でのポッター形式だったから、西欧風の世界かと思ったら…野球かよ!


 9人のチームを適当に作れとのこと、僕、ラフェ、サムソン、リアに、ボッチそうなシエルくんを引き込む。


「えっぼく?」


 

 目を白黒させるシエルくんを確保し、あと四人。「連れてきたよー!」ラフェが、なんか背の高いうさ耳少女二人を連れてきた、あと二人。いやその二人気になるな!

 

「連れてきたぜ」サムソンがにこやかに、顔に隈取り模様を施した少年を連れてきた、あと一人。いや、すごいの連れてきたな!


 あ、そうだ、あの令嬢は?

 普通に人だかり。貴族グループには近づけそうもない。

 お、ぼーっと立ってる女の子発見。


「良かったら、僕らと組もう」

 

 声を掛けると、僕の事をぼーっと見たあと、無言で手を出す。ん?


「?」

 

「?」


 差し出された手を取って、引いてみる。ついてきた。あ、そういうこと?


 みんなと合流。


「お、みんな集まったな。じゃあ自己紹介だ。俺はサムソン。スターター村から来た」

「シエル・ノエル。ノエル村から来たよ」

「私はラフェ!スターター村のほうから来たわ!竜人よ!よろしくね!」

「ユーキだ、僕もスターター村からだ。で、これが」

「リア。ユーキの下僕のエルフよ。毎日あんな事やこんな事をユーキにされている、可哀想なエルフ」

「言い方ァ!」


「聞いた?ラ・フィ。人間怖いわ。この歳で、もう○奴隷ですって」


「あら、レ・フィ。私には肉○○って聞こえたわ。私たちも狙われてるのよ。怖いわ怖いわ」


「いや、全然怖がってないよね!?うさぎの獣人のお二人は、ラ・フィとレ・フィでいいんだね!よろしく」


 僕がなげやりにそう言うと、


「俺はそう言うのは良くないと思う」


 隈取りの少年は居住まいを正した。

 

「俺はヤマト。東方の国から、己の武芸を磨くためにこの辺境伯領にやってきた。……ユーキ殿、先ほどのような不埒な行為は、武士として看過できん。だが、同じチームになった以上は勝利のために全力を尽くす所存だ」

 

 めちゃくちゃ真面目な硬派だった。

 ガチガチな武士道オーラだが、誤解を解く体力はすでに僕の残量にはない。

 

「あ、うん、よろしくヤマトくん。……で、君は?」

 

 僕は、手を引かれるがままについてきた、最後のぼーっとした女の子に向き直った。

 

 声をかけると、彼女は感情の読めない瞳で僕を見つめ返し、小さく口を開いた。

 

「……ミント。特技は、……寝ること。気づいたらここにいた」

 

「拉致されてんじゃねえか!! 自分の意志で入学しろよ!」

 

「……ハァ。ご主人様、都会の強制徴収システムを甘く見ないでください。彼女のような『とりあえず年齢に達したから引っ張り出された個体』は、この二千人の中に山ほどいますわ。むしろ、そのぼーっとした態度の裏に、どんなとんでもないバグスキルを隠し持っているかを警戒すべきです。腐ってもAクラスなのですから」

 

 リアがジト目でミントちゃんを観察し始めた。

 

 ともあれ、これで僕、リア、サムソン、ラフェ、シエルくん、ラ・フィ、レ・フィ、ヤマト、ミントの九人が揃った。

 

 見事なまでに統一感のない、限界突破した寄せ集めチームの完成だ。

  

 対戦相手を差配していたベネディ先生が、紙の束を見ながら僕たちに向かって顎をしゃくった。

 

「よし、人数が揃ったな。お前たちのチームは、あっちだ。まずは『地方の道場で少し腕を鳴らしてきたっていう威勢のいい奴ら』のチームと対戦だ。さっさと守備につけ!」

 

 言われた方向を見ると、そこには「へへん、田舎の芋掘りどもに、都会の洗礼を浴びせてやるぜ!」といかにも噛ませ犬っぽい良い笑顔で素振りをしている平民チームが待機していた。

 よかった。これなら僕の平穏を愛する心も、そこまで拒絶反応を起こさない。


 こうして、僕たちの輝かしい学園生活最初の授業──「身分格差をぶち破る(前哨戦の)泥泥ベースボール」のプレイボールの鐘が、今、高らかに鳴り響いたのだった。

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