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虚無からはじめる異世界生活 ~最強種の仲間と共に創造神の加護の力ですべてを解決します~  作者: すなる
1章 第二部 王都ベルセリア編

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72話 付与条件と想いの強さ

「リン。頼むよ」


「かしこまりました」


一同はリンの転移で幻想郷アルレンセスへ飛んだ。

客がいる店内に転移するわけにもいかないので倉庫に飛んでもらったが、先日大量の荷を運んだばかりなので倉庫は荷物でいっぱい。

転移すると全員もみくちゃのぎゅうぎゅうの状態になってしまった。


「うわっ!せまっ!」


「んっ!?ハルト様、その……手が当たっております……」


「わっ!ごめんユキ!!」


「いえ、ハルト様でしたら別に……」


そんな様子を見てルナは少しむっとした顔でハルトにしがみ付いた。


「ちょ!ルナ!こんなところでそんなにひっついたら―――」


ハルトが困惑していると「バタン」と音を立てて倉庫の扉が開いた。

騒ぎを聞きつけたナターシャが確認しにきたようだ。

ナターシャは抱き合っているルナとハルト、そしてこの場を利用してハルトに体をよせるユキとリンの姿をみてため息をついた。


「はぁー。騒がしいと思って来て見れば……」


「ど、どうも……」


「来るのは歓迎するけど。来て早々いちゃつくのは流石にどうかと思うわよ……?」


「ち、違うんだ!倉庫がいっぱいだったのを忘れてて……」


「…………」


ナターシャは無言のままジトっとした目でハルトとルナを見つめた。


「な、なんだよ」


「はぁ……。この分じゃまだみたいね。とりあえずそこから早くでてもらえるかしら?」


ナターシャは少し棘がある言い方でそう言った。

いつものナターシャよりなんか少し不機嫌そうな様子だったが、ハルトには理由がわからなかった。



その後、皆は倉庫を出て休憩室に集まった。

ライラがすぐさま全員分のお茶の用意を済ませ運んできた。

久々にライラと顔を合わす面々はお茶を飲みながら談笑している。


ハルトはナターシャとロンドに急に来た経緯を説明した。


「なるほどな。昨日の今日で来た理由はそういうことか」


「確かに、あなた以外に異世界への扉を使える人が居たら便利だけど……」


ナターシャは少し考え込んでいた。


「ナターシャ?」


「ああ、ごめんなさい。ちょっとね」


「何か気になることでも?」


「気になる……。というほどではないのだけれど。確かにハルト以外にも異世界への扉が使えたら便利になると思うわよ?でももしそうなったら、その……頻繁にあなたがこっちに来る必要はなくなるってことでしょ……?」


「まぁ……。誰かに頼めるのなら交代でアルレンセスとこっちを繋ぎに来ることになるのかな?それがどうしたんだ?」


「…………言わせないでよ!バカ!」


「ガッハッハ!旦那は頭は回るくせにこういうことにはとんと疎いなぁ」


「どういう意味だよ……」


「ナターシャは出来るだけ旦那の顔を見たいって言ってるのさ」


「それって……」


「あ、あたしはレイラを手伝ってくるわ!じゃあね!」


ナターシャは若干顔を赤くして店頭のレイラの元へと向かっていった。

その途中、じーっと黙って状況を伺っていたルナの耳元でこうささやいた。


「あんまりじれったいと私がハルトの一番奪いにいくわよ?」


「……!!」


ルナはビクッとして手に持っているティーカップを落としそうになっていた。


「頑張りなさいよねっ」


それだけ言い残すとナターシャ行ってしまった。

ルナは少し真剣な顔をしつつ、微かに頬を赤らめていた。



その後、時間通りアモンが迎えにやってきたのでハルトはルナ、プルフラ、リン、ユキを連れてファーメルハイトへと向かった。




※  ※  ※




前回同様、つかない倉庫に転移するかと思っていたが、今回はいきなりサタナキアの自室へと転移した。


「えっ!?ここってサタナキアの自室じゃ」


「はい。前回は初見でしたので、正式な形で対応させていただきましたが、既に皆様は旧知の中ですので直接部屋へ案内して構わないと」


「なるほど」


でも魔王様でありしかも妙齢の女性の部屋にいきなりっていうのは流石に気が引けるんだけど……。

サタナキアさんの指示とあればアモンも従うほかないのだろうけど、いいのか……?


そのままアモンの案内で奥の部屋へ入ると、ティーテーブルでお茶を用意して待つサタナキアの姿があった。


「皆さんお待ちしておりました。どうぞおかけになってください」


その後、お茶を飲みながらサタナキアに異世界への扉の付与失敗の話、マナリスの動向について、ベルセリアで起きたことを説明した。



「―――なるほど。マナリスの動向についてはこちらでも調べておきます。フォーレンシアへ向かったということは既にホルストラインにも潜入している可能性もありますので」


「ええ、俺もその可能性は十分にあると思います」


「そして能力の付与についてですが、正直参考になるとは思えませんが、確認されているものもあります」


「本当ですか!?」


「ええ。ただし、飽くまでもこれまでに確認されていた能力の継承についてですが」


「継承ということは、やはり他者へ付与できる能力も存在するのですか?」


「私が知っているのは3つ。1つは覚醒というスキルで人族の勇者が持つものです」


「勇者……」


「勇者といっても、英雄譚の主人公のような世界を救うといった役割を持つ者ではなく、覚醒スキルを継承した者の呼び名です」


そりゃそうか。

物語では悪や魔王を討伐する使命を持って描かれるけど、この世界では魔王は別に悪じゃない。

ただ、魔族領で国の主というだけだしな。

魔王って言っても種族が違うだけで人の王と何ら変わらないからな。


「その覚醒というスキルの継承方法は?」


「先代を倒すことで継承すると聞いております」


「それって……」


「ええ。お察しの通り、覚醒スキルを持つ者を殺せば継承されます」


「……もう2つは?」


「一つは私の持つスキル、天通眼です」


「!?」


「天通眼も継承可能なのですか……」


「ええ。ですがこれの継承方法は参考にならないと思います」


「……というと?」


「天通眼を持つ者が、ファーメルハイトを治める王の器があると認めた者に自身の命と引き換えに託すことで継承します……。私も先代のファーメルハイト魔王から命と共にこの目を継承しました」


「そうですか……。……最後の1つは?」


「始祖の血をひくヴァンパイアのみが持つことのできる特殊なスキル、血操というスキルです。文字通り魔力で自在に血液を操る能力なのですが、この能力は始祖の血をひく者に自身の情報を持った体液―――つまり血液を流し込んで付与できると聞いております」


「始祖の血族限定なうえに血液ですか……。どれも俺のスキルとはかなり条件が異なりそうですね」


「ですね。最初の2つはスキル保持者が命を落とすのが条件ですし、血操はかなり限られた血族に限定されていますので。力になれず申し訳ありません」


「俺も仲間に血縁で継承できる能力があるという話は聞きました。彼女がいうには俺の子孫なら継承できる可能性もあると」


「もちろんそういう能力は多いです。種族特性のスキルなどもその類ですね。ハルトさんはもうお子さんをお作りになるおつもりなのですか……?」


「い、いえ!そういうわけではないんですけど……。条件が分からないので色々と探っている段階で……」


「そうですね……」


「…………」


『どうやらお困りみたいだね!』


「その声は!?」


ハルトはもう3度目なので声にすぐ反応した。


『スキルの継承と付与についてなら条件はたった一つだよ』


「一つ?今サタナキアさんに聞いた限りでも複数あるように思えるけど?」


『表面だけを見るとそう見えるのかな?』


「どういうことだ?」


『僕は以前君に堕天について説明したよね?』


「ああ。抑えるためには愛の心が必要だと……」


『あのときはそこのキャトランの子の愛のおかげで君は堕天せずに済んだでしょ?』


ルナは皆の前でどうどうと声に出されたことで恥ずかしくなり両手で顔を覆った。

ハルトも言葉にされるととても恥ずかしくなり赤面する。


「そ、それと継承に何の関係があるっていうんだよ!?」


『君、頭は回るくせに肝心なところではほんとに鈍いなぁ~。いいかい?神の力は心の傾きで如何様にも反転することは前にも説明したよね?君がこれまでつかってきた力は愛情、友愛、慈愛といった心の作用によることろが大きいんだ。誰かを助けたい。誰かのために何かをしてあげたい。誰かを守りたい。皆を幸せにしたい。そういった気持ちが根底になければ、例え行使できたとしても大した効果は期待できないよ。心当たりはあるんじゃないかな?』


最初はルナをあの世界に召喚したときか。

あの時はルナが無事か確証がなくて、生きていることを望んだから別の世界まで届く力が?


確かに物をただ作り出すときはそれほど多くの物は創造できなかった。

最初に創造した野菜や、ロンドと会った時に出した鉱石などはすぐに消費される程度の量だ。

世界を渡る力と比べると微々たるものだろう。


異世界への扉を発現したときは俺は何を思っていた?

ルナを悲しませたくなくて、美味しいものを食べさせてあげたいと願っていた?


ルシアに新たなスキル、マナトレースを創造して付与したときは?

ルナ達を一刻も早く救い出したいと願ったから?


ヴィアラの隷属の首輪を外したいと願った時も、最初は首輪を外すことだけを考えていたから失敗したけど、2度目はヴィアラを救いたいと本心から願ったから成功した……?


もしかして創造神の加護を行使するのに必要なのはイメージの精度ではなく、誰のこと想って能力を使うかでその強さが変わる……?


「………………」


『まだよく理解してないみたいだね……。いいかい?強力な力を持つスキルは、相応の器がある者にしか扱えないようになってるのさ。覚醒スキルは強者を倒して自身を力を高めたいと願う強さにたいする渇望の心が。天通眼は自身を顧みることもせず国を憂うほどの献身の心が。血操は自身と相手に流れる始祖の血脈を心から崇拝し尊ぶ畏敬の心が。そのどれもが対応した感情が高まるのを条件にして継承できるというわけさ』


「ってことは俺の場合は?愛情や慈愛の心が高まったときに?」


『そうなるね。もっとも創造神の加護の力なんて前代未聞だから。どれほどの愛があれば継承できるのかは僕にもわからないけどもね』


「なるほど。参考になったよ。ありがとうグライストフ」


『ちゃんと僕の名前を覚えてくれたんだ!んじゃ頑張ってね!君にはいろいろと期待してるからねっ!』


そういうとグライストフの声はまた聞こえなくなってしまった。


ハルトが周囲の者たちの顔を見ると、グライストフの声を始めて聞く面々は唖然として固まっていた。


「サタナキアさん?大丈夫ですか?」


「へっ!?あっ!あの!今の声のお方の名をグライストフとおっしゃられましたか!?」


「え、ええ。それが何か?」


「グライストフという名は史実に残されております。世界各地にダンジョンを作り後世のために残した賢者として……」


「え!?ってことはあの声の主が大昔の賢者様ってことですか!?」


「我々でも知りえないユニークスキルの継承条件を知り、個人ではなく空間に対して念話を可能にするその力、おそらく間違いないかと……」


「もしかして古の賢者ってこの世界の神様なんじゃ……?」


「流石に私もお声を聞くのは初めてですので何とも……」


俺たちの行動はすべて見えてるみたいだし、普通じゃないとは思っていたけど。

まさか世界中にダンジョンを作った賢者の正体がグライストフだったなんて。

ほんとにいったい何者なんだ……。

期待しているって言われたけど、俺に何を期待しているんだ……?




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