73話 結婚
突如乱入したグライストフによって驚きはあったが、有益な情報も得ることが出来た。
人を想う力の強さか……。
そういえば、あの世界に転生したときの星や大地、大気は本物の創造神様が俺の想ってサービスで作ってくれたんだよな。
人を思いやる力が強ければ、俺もいつかあんな規模で能力を使えるようになるってことなのか……?
「ご主人様……?」
「いや、何でもないよ。まだ加護の力を全然使えてないことが分かったからこれから頑張らないとなって思っただけさ」
「それで、ハルトさんたちはこれからどうなさいますか?」
「そうですね。グライストフの話を聞いて色々試してみたいこともできたので一度戻ろうかも思います」
「わかりました。ではまた進展がありましたら連絡を頂けると助かります。プルフラさん。ハルトさん達のことをよろしくお願いしますね」
「かしこまりました」
「それでは私がお見送りを―――」
アモンが転移魔法でハルト達を送り届けようとしたところで、ハルトはそれを制止した。
「あ、この子も転移魔法を使えるので大丈夫ですよ」
「なんと。流石ハルトさんのお仲間ですね。わかりました」
「ではお気を付けください。皆様の無事を願っております」
「サタナキアさん。ありがとうございます。ではまた」
ハルトがそういうと、リンは転移魔法を発動した。
「前から思ってはおりましたが、本当にすごい方々ですね……」
「ええ。あの方たちならこの世界を本当に救ってしまえるかもしれませんね」
※ ※ ※
幻想郷アルレンセスの休憩室に転移した面々の前には、丁度休憩中でお茶を飲んでいるナターシャがいた。
「ただいま」
「早かったわね。てっきり今日は帰らないかと思っていたわ」
「ちょっと予想外のことがあったけど、収穫があってね」
「へぇ?ってことは異世界への扉の付与の目途もついたってことかしら?」
「そこに関しては俺と付与される人次第みたいなんだけど。まぁ色々試してみる価値があるかなって」
「ふぅん。それで?これからまたアルレンセスへ?」
「ああ。けど今日は出来たら久々に全員に集まってもらいたいんだ。あとで迎えに来るから今日は閉店後、そのままここに残っててもらえるかな?」
「わかったわ。皆には私から伝えておくわ」
「あ、そうだ。ついでにルッツ達も呼べるかな?」
「うーん。依頼で遠出してなければ見つかると思うけれど、いいわ。私が冒険者ギルドに顔出してくるわね」
「わるいね」
「いいわよ。ちょうどギルマスから指名依頼を受けて欲しいって言われてたから。声を掛けるのはルッツ達とケビン、ベンセル、マーレだけでいいわよね?」
「ああ、そうだな。そのメンバーでよろしく頼む」
※ ※ ※
アルレンセスへ戻ったハルト達は、今夜皆を集めようと思っていると伝える。
するとメイドたちは目を輝かせ、久々の宴会の準備にやる気をみなぎらせていた。
大勢あつめるならということで、ハルトはBBQを提案した。
メイドたちには肉と野菜の切り分け準備を、キャトラン達には果物を絞った飲み物の準備を、セバスには来客用の部屋の準備を進めてもらった。
ハルトは加護の力を使いBBQセットを大量に用意する。
いつものように目を閉じ念じるが、今日は皆の顔を思い浮かべながら創造し。
皆でBBQを楽しむ姿を連想した。
すると10セット程のBBQセットとキャンプ場にあるような長椅子とテーブル、そして大量の花火と浴衣類、キャンプファイヤーのセット、更にいくつもの瓶に入ったお酒と見覚えのあるお菓子類が大量にその場に現れた。
楽しむってのを考え過ぎたかな……?
でも、以前は容器に入ったお酒なんて創造できなかったのに上質なお酒がこんなに。
何より驚いたのはお菓子が創造できたことだ。
以前は食料品は野菜や果物のような未加工のものしか創造できなかった。
加工された食料品が創造出来るようになったということは、かなりありがたい。
明らかにいままでより創造する範囲と量の精度があがったのを実感した。
他者を思いやることで効果を増す力か……。
でも、あの時みたいに負の感情が溢れると闇に転じる可能性もあるか……。
これからはもっと強い気持ちを持たなきゃだめだな。
もう二度とルナにあんな顔をさせない為にも。
「ハルト様。屋敷の準備は整いました。食材の準備も滞りないそうです」
「ありがとうセバス。んじゃそろそろ店のみんなを迎えに行ってくるよ」
ハルトは目の前に異世界への扉を出現させ、店に向かうと既に皆は集まっていた。
ルッツ達はもちろん、ケビンにベンゼルも一緒だ。マーレは仕事の都合で来られなかったそうだが、代わりにライナスが来ていた。
そして驚いたのはアイゼンリヒトとヘイゼルの姿があったこと。
「やぁハルト君。お久しぶりです」
「アイゼンリヒト様も来られていたんですね。ヘイゼルさんもお久しぶりです」
「ご無沙汰しております」
「今日はみんなが集まるとライラから聞いてね。私もハルト君の世界には興味があったので仕事を圧して来てしまったよ。呼ばれてない私が来ては迷惑だったかな?」
「いえいえ、迷惑だなんてとんでもない。ライラさんたちにはお世話になってますので、紹介してくださったアイゼンリヒト様にはとても感謝しています。是非今日は楽しんで行ってください」
「おい!ハルト!ルッツやケビンらには声を掛けて、俺を呼ばないってのはどういうことだぁ!?」
「ライナスさん!?いや、ライナスさんやアイゼンリヒト様は立場もあるし忙しいだろうと思ったので……」
「んな楽しそうなことをするって聞いたら俺らが行かねぇわけねぇだろうが!!次からは俺らも絶対呼べよ?絶対だぞ!?」
「わ、わかりましたから!ではもう準備は済んでるから行きましょうか」
ハルトを先頭にして集まった面々は扉を抜けてアルレンセスへ向かった。
始めて異世界への扉を目にするライナスは、でかい図体のわりに意外とびくびくしながら扉を抜けるのに躊躇していたので、後ろからルッツとローガンに押し込まれるようにしてアルレンセスへ足を踏み入れていた。
「わっ!ばか!押すな!押すなっての!!」
「ふふふっ」
そんな様子を見て一同は笑っていた。
全員集まったところでグラスを配り、様々な飲み物が用意された中で希望を確認しつつライラ達メイド4人は飲み物を注ぎ分けていた。
全員に飲み物がいきわたったのを確認してハルトはジョッキを持ち上げて掛け声をかける。
「本日は皆さんお集まりいただきまことにありがとうございます!食べ物も飲み物もたくさん用意してますので存分に飲み食いを楽しんでいってください。ここに集まってもらった方々には私や私の大切な仲間たちが日頃から助けていただいていますのでとても感謝しています。今日はそんな日頃の恩に少しでも報いたいと思ってこの宴を開かせてもらいました。本当にありがとうございます!まだまだ色々と至らないこんな俺ですが、これからもよろしくお願いします!……それでは、乾杯ー!」
「「「かんぱーい!!」」」
ハルトが挨拶を終えると、皆、思い思い飲んで食べて楽しんでいた。
ローガン、エレン、ロンド、そして以外にもヘイゼルは様々な酒を飲み比べて楽しんでいた。
ルナ以外のキャトラン達とルシア、ヴィアラは我先にと焼けた肉の争奪戦を展開。
流石にキャトラン達に押し負けていたヴィアラにルシアが確保した肉を分け与えている様子は微笑ましかった。
ライナス、ケビン、ベンゼル、レイラ、アイゼンリヒト、プルフラは大人なだけあって、テーブルに座り談笑しながら食事とお酒を楽しんでいた。
ハルトはそんな皆の様子を見ながら、忙しく動き回るライラ達メイドの手伝いをしながら一息ついているとグラスをもってルナとナターシャが近づいてきた。
「ちゃんと飲んでるー?」
「ああ、少し落ち着いたからこれから飲み食いしようと思っていたところだよ」
「ご主人様。それではこちらをどうぞ。私はもう少しお肉と野菜取ってきますね♪」
そういってルナは肉と野菜がたっぷりのったお皿をハルトの前に差し出して再びコンロの方へ走って行った。
ハルトは目の前に置かれた山のような肉と野菜を前にして冷や汗を流した。
すごい量だな……。俺こんなに食べられるかな……?
「ねぇハルト」
「んー?」
「貴方はルナちゃんのことをどう思ってるの?」
「ど、どうって別にそんな……」
「はぁ……。ほんとにはっきりしないわねぇ?あなたはサキュバスの私を惚れさせた男なんだから、もっと男を見せなさい?」
「ブッ!惚れ……。え?」
「ルナちゃんはずっと貴方のことを待ってるわよ?」
「…………」
二人の間に沈黙が訪れたとき、追加の食料を確保したルナが笑顔でこちらに走ってきた。
「お待たせしました♪……あれ?お二人ともどうしたんですか?」
「べ、べつに?なんでもないよ」
「ふふっ♪それじゃあ私はもっとお酒を飲んでくるわね~♪」
ナターシャは手をひらひらさせながら酒盛りをするロンドたちのテーブルへと向かっていった。
暫く静かに考えこんだあと、ハルトはルナの両肩に手を置き、真面目な顔をして口を開いた。
「ルナ。大事な話がある。聞いてもらえるか?」
「……はい」
「思い返してみれば俺はずっと頭のどこかでルナのことを考えていた」
「…………」
「ルナ愛してる。俺と結婚してもらえないか」
「…………」
ハルトの告白を聞いてルナの頬に涙が流れた。
「ルナ!?」
「すみません……うれしくてつい……」
「それじゃあ」
「はい♪よろしくおねがいします♪」
二人がいい雰囲気になり抱き合い口を重ねた瞬間。
横から盛大な賛辞の声が聞こえてきた。
「「「おめでとー!!」」」
二人が慌てて振り向くと、先頭にはニヤニヤ笑みを浮かべたナターシャの姿があった。
二人の様子を伺い、告白が成功したのを察し、皆に声を掛けたようだ。
よく見るとほとんどの者たちが笑顔でこちらを見ていた。
皆に見られていたことに気が付き、恥ずかしくなり二人は顔を真っ赤にした。
そんななか、ロンドが笑いながら近づいてきた。
「やーっと引っ付きやがったか!!ほれ!こいつは俺らからのプレゼントだ」
ロンドは青く光る金属でできたブレスレットを2つ差し出した。
「これは……?」
「こいつは旦那からもらったアダマントを加工して作ったアクセサリーさ。魔法の扱いに長けたレイラとナターシャ、ルシア、ユキ、リンに魔法付与を施してもらって状態異常耐性を発現してる一級品だぞ?」
「こんな貴重な物をもらっていいのか……?」
「ばかやろう!旦那たちのことを祝福するためにみんなで頑張って拵えたんだぞ!?貰ってもらわなきゃ困る!」
「ありがとうみんな。大事にするよ」
「みんな……。ありがとう♪」
「さて、第一夫人は決まったね?んじゃこれで私もどうどうとハルトに―――」
「俺らはまだ飲んでるから二人はゆっくりするといいさ!ほら行くぞ!!みんな!」
空気を読んでロンドが無理やりナターシャを引っ張っていった。
「びっくりしたな」
「はい……。でもみんなに祝って貰えてとてもうれしかったです♪」
「だね♪俺からもルナに贈り物をしたいんだけどいいかな?」
そういうとハルトは目を閉じてルナの事を想いながら指輪を創造した。
『女神の指輪 生成成功しました』
するとハルトの手に1つの指輪が現れた。
ハルトはルナの左手を手に取り、そっと薬指に指輪をはめる。
ルナは掌を顔の前に持っていき、ハルトがはめてくれた指輪を見て満面の笑みを浮かべた。
そして胸元で両手をギュと握りしめながら口を開いた。
「ありがとうございます♪一生大切にします♪」
そして二人は熱い口づけを交わした。




