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虚無からはじめる異世界生活 ~最強種の仲間と共に創造神の加護の力ですべてを解決します~  作者: すなる
1章 第二部 王都ベルセリア編

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68話 ミケーネ商会 継承と付与条件

ブランドの案内でミケーネ商会が運営する宿に到着した。

その宿はこの世界の技術水準にしてはかなりしっかりした3階建ての大きな建物だった。


「へー!立派な建物だな」


「ミケーネ商会が運営するこの宿は王都でも1,2を争う高級宿ですので」


なるほど。

あっちでいう高級ホテルみたいなところってことか。


「では参りましょうか」


ブランドが先導し、一同は宿に入った。


外観もそうだが、内部もかなりしっかりしていて、ただの石つくりの壁ではなく壁も真っ白に塗り上げられており、見るからに高級感にあふれていた。

一同が内観を見て感動していると奥から、宿のスタッフと思われるスーツ姿の若いキャトランの男性がこちらへ向かって歩いてきた。

クールなセバスとは違い、若いイケメンのキャトランだ。

ハルトはアルレンセス以外で初めて見る若い男のキャトランに目を奪われていると、横を見るとルナ達もスタッフの男をじっと見つめているのが分かった。


やっぱ同じキャトランに魅力を感じるんだろうか?

そう思うと少しだけ心がズキッとしたような気がした。


「ようこそおいでくださいましたハルト様ご一行でお間違いありませんか?」


「はい」


「会長よりハルト様方が来られたら案内するように父から仰せつかっております。私はミケーネの息子のミケーロと申します。以後お見知りおきを。それではお部屋の方へ案内いたしますのでこちらへどうぞ」


ミケーロの案内についていくと、3階の奥から一つ手前の部屋の前にたどり着いた。


「ここから先の4部屋を確保しておりますので自由にお使いください。会長が皆様を夕食に招待したいと申しておりましたので後ほどお迎えに上がります。それまでゆっくりとおくつろぎくださいませ。では私はこれで失礼致します」


スタッフの教育が完璧に行き届いている。

あの物腰穏やかなミケーネさんの息子だから当然といえば当然なのだろうけど。

さすが高級ホテル……。


「ひとまず夕食まではこっちの部屋でみんなで休憩しようか」


「私は一度騎士団に顔を出そうと思います」


「ウィリアムさんも居ないから騎士団もバタバタだろうしね。いいよ。ミケーネさんとの食事には同行するよね?」


「ええ。それまでには戻ってこれるかと」


「わかった。んじゃまたあとで」


ブランドは挨拶を終えると足早に騎士団の詰め所へと向かって行った。

ほんとは後処理に紛争してるカイたちが心配で、すぐにでも向かいたかったんだろうけど、俺たちを案内するのを優先してくれたんだろうな。





「んじゃ部屋の中に入りますか」


「「「はーい」」」


ブランドを見送り、早速用意してもらった部屋の中を確認した。

ホールや廊下の様子からもわかっていたが、ドアを開けるといかにもな高級感あふれる家具や装飾が施された一流のスイートルームともいえるような部屋がそこには広がっていた。


部屋は3部屋に分かれており、1部屋目はリビング、2部屋目はキッチン付きのダイニング、3部屋目はバスルームまで併設されたベッドルームだった。


スイートルームもそうだけど。

天蓋付きのキングサイズのベッドなんて、まさか自分が使う日が来るとは思わなかったな。

ミケーネさんありがとう!!


少し目を離すと、さっそくルシアとヴィアラがベッドで跳ねて遊んでいた。

そんな二人をプルフラとユキがベッドで遊んではいけませんと優しくなだめ、言い聞かせている。


一通り部屋を見て回り、はしゃいでた二人も落ち着いてきたのでリビングのテーブルを囲んでミケーネさんと話をする内容を確認した。


「まずは何の目的があってフォーレンシアへ向かうかは聞かれそうだよな」


「そうですね。サタナキア様の話を出すわけにもいきませんし、私が魔族だというのも話してよいものかも迷うところです」


「うーん。とりあえずマナリスのことについて話す以上、サタナキアさんのことは話しておいた方がいいんじゃないかな。で、その反応をみて、問題なさそうならプルフラさんの素性を明かしてもいいかなと思ってる」


「大丈夫でしょうか?ミケーネさんという方に私はまだ会ったことがないのでどんな方かわかりませんが、1000年ほどほとんど交流がなかった種族ですよ?ハルト様たちのように普通に受け入れる方はかなり特殊な部類かと思うのですが……」


「ミケーネさんは根っからの商人気質な人って感じだったから、種族偏見はほとんどない人だと思うよ。少し話した感じだと、種族というよりも人柄で付き合い方を見極めるような人だと思うな」


「なるほど。ハルト様から見て信用できる方だと思いますか?」


「そうだね。こちらが誠実な対応をする限り、あちらも誠実な対応で返してくれる人だとおもう。だからこちらから裏切らない限りは信用できると思う。仮に敵に回してしまった場合は誰よりも恐ろしい人だと思うけどね……」


「それは怖いですね」


「はは。プルフラさんなら大丈夫だよ」


話しているとハルトの懐のコネクトオーブが光始め、声が聞こえてきた。


『旦那ー聞こえるか?』


「ん?ロンドか?どうしたんだ?」


『いや、どうしたって。そろそろアルレンセスに戻って商品を補充しねぇと野菜や果物の在庫がなくなっちまいそうなんだが……』


「そうか。そういえばもうリーザスを出てから1週間か。わかったすぐ向かうとするよ」


『おう。頼むぜー』



「ってことだ……。悪いが少しアルレンセスに戻ってくる。ルナ、プルフラ、俺がいない間皆を頼めるか?」


「はい♪」


「もちろんです」


「んじゃよろしく頼む。リン。転移魔法で一度リーザスの店舗に送ってもらえるか?」


「かしこまりました」


「それじゃ行ってくる!夕方までには戻るから!」




※  ※  ※




店舗の倉庫に転移すると、レイラが丁度最後の荷だしをしようとしているところだった。


「きゃっ!??ってハルトじゃないの!急に転移してこないでよ!!びっくりして変な声が出ちゃったじゃないの!!」


「はは、ごめんごめん。ロンドに在庫が切れるって聞いたから飛んできたんだ」


「そうよ。これで今あるのは最後ね。これからアルレンセスへ?」


「ああ。ここに扉を開いてもいいか?」


「それは別に構わないけど……?もう行くの?」


「ん?」


「いや、せめて皆に顔出していくとかしないわけ?戻ってきてそのままアルレンセスに行ったって知れたらナターシャ達に後で何を言われても私は知らないわよ?」


「うーん。それは困る……。ちょっと顔出してくるよ」


「そうして頂戴。このまま私だけ会ってハルトいかせたってなると、私がとばっちりを食うんだから」


「ごめんって。そういうわけだから、扉だけ出して店に顔を出してくるからリンは先にアルレンセスに戻ってセバスたちに話しを伝えておいてもらえるか?」


「かしこまりました」


ハルトは倉庫に荷物の搬入に備えて、大きめの異世界への扉を出すとリンを残してレイラと二人で店に戻った。

倉庫を出るとすぐに裏で武具を磨いていたロンドと武具の手入れの仕方を学ぶシンの姿が目に映った。


「おう!戻ったか旦那!」


「ああ。悪いなこっちを任せっきりにして。ロンドもシンも元気だったか?」


「まぁな」


「うん。いま武具の手入れをロンドに教わってた」


「なるほど。シンは近接戦闘が得意だから武具の手入れを知るのはいいことだな」


「うん。武器は大事にしたい」


「ははっ。鍛冶師として俺は武器を大切にするやつは大好きだぜ!」


ロンドはシンの頭をくしゃくしゃっと撫でまわしながら笑った。

3人の話声を聞きつけて店頭に出ていたナターシャも裏に入ってきた。


「やっと戻ったわね!?まったく!私たちのことを放っておいて!」


「はは、任せっぱなしで悪いとは思ってるよ。でもこっちも色々大変だったんだぞ?」


「ふーん?まぁいいわ。その話は今度一緒にお酒でも飲みながらゆっくり聞かせてもらうとするわ♪」


「ああ、フォーレンシアの件が落ち着いたら皆でアルレンセスに戻って宴でも開こうか」


「かはは!そりゃいいな!」


「ふふ♪いいわね♪」


「とりあえず向こうで夕方からフォーレンシアへ向かう打ち合わせが入ってるから、出来るだけ急いで商品の補充をしたいから手が空いてたら搬入を手伝ってもらえると助かる」


「んじゃ俺が店番をやっとくからシンとレイラとナターシャは旦那を手伝ってきてくれや」


「わかったわ♪」


「肉体労働は苦手なんだけど、仕方ないわね」


「うん。わかった」




※  ※  ※




4人がアルレンセスに戻ると、セバスの指示の下でレナとヒナタとマリアとライラと一緒に来ていたメイド3人が農作物を大量につめた木箱を荷車に積み込み作業を行っていた。

リンの姿が見えないので何をしているかセバスに確認すると、久々に戻ってきたので屋敷で好物のイチゴを堪能しているらしい。


流石に遠出に野菜は持ち歩けないからなぁ。


「セバスたちもずっとこの世界で留守番させてしまってすまないね」


「いえ。この世界では食べる物にも困りませんし、ミラさん達の料理もとても美味しいので毎日楽しく過ごせております」


「何か変わったところとかは特になかったか?」


「そうですね……。特段変わったところはありませんが、ルナ様が豊穣の力を使って以降、以前に増して作物の成長が早まっていまして、収穫が追い付かないのでミラさん、ルミナさん、エリーゼさんにも収穫を手伝っていただき、7人総出で何とか午前中に収穫を終えるような感じになっているくらいですかね」


「えぇ!?7人総出で午前中いっぱいかかってるの!?」


「はい……?そうですが」


「いやいや。流石にそれはかなりの重労働だから何か対策を考えるよ。メイドの人達は飽くまでも料理のために来てもらってるから農作業まで手伝ってもらうのは流石に申し訳ないしね」


「むしろ皆さん喜んで収穫に参加されておりますよ?」


「え?そうなの?」


「なんでも見たこともない野菜や果物だから楽しいと。取れたての果物をその場で食べれるというのもとても好評ですね」


あー、イチゴ摘みやブドウ狩りの体験みたいな感じか。

確かに自分で収穫してその場で採れたてを食べるあの感覚は俺もとても好きだから否定できない……。

でもそれはたまにやるからいいのであって、それが何日も何週間も続くとなると話は別だ。


「うーん。人手か……。流石に求人募集なんて無理だし、猫の手でも借りたい状況……。ん、猫?」


「ハルト様?」


「そうだ!セバス!」


「は、はい?」


「リーザスに野良猫って結構いたよな」


「まぁ……。かなりの数がいたと思いますが」


「セバスが見て性格もよさそうで、ここに住んでもいいって猫たちを街でスカウトしてくれないか?」


「スカウトですか……?できなくはないとは思いますが、リーザスの猫たちは皆縄張り意識がとても強いのでほとんど集まりそうにありませんね」


「ダメか……」


セバスとハルトが悩んでいると、後ろからメイドの一人が声を掛けてきた。


「あのー。今の話を聞いていたのですが、ここで働きたいという人員をお求めですか?」


「君は確か……。エリーゼさんだっけ?」


「はい。人手をお求めだというお話が聞こえてきたのですが、私達はお役御免ということでしょうか……?」


「へ?いやいや。むしろ逆です。メイドとして来ていただいたのに農作業まで協力させては悪いと思ったので、作業要員を増やそうかなと」


「それは全然問題ありませんよっ!私たちは好きでやってますので!ねっ?ルミナさん。ミラさん」


「はい♪」


「そうですね!」


「ここは食べ物もおいしいし♪お屋敷もとても綺麗だし♪毎日温泉に入れて最高だし♪なによりセバスさんはかっこいいし♪何も文句なんてありません!」


ん?

いまセバスさんかっこいいって。

いやまぁうちは自由恋愛だから従業員のプライベートは詮索しないぞ。


「みんながそれでいいなら構わないんだけど……。ほんとにいいの?」


「「「はい!」」」


「そういうことなら悪いけど、体制が整うまでの暫くの間は収穫の補助もよろしく頼むよ。ちゃんと給料は追加で支給するから」


「えっ!?いまも十分頂いてるのに追加で!?」


「当然だよ。追加業務にはきちんと対価を支払うよ」


「今でもこんなにいい待遇なのに、ハルト様は神様ですか!?」


「ええ、ハルト様はこの世界の神ですね」


「いや、違うけど……。セバス、話をやこしくしないで……。確かにこの世界では違わなくもないかもだけども。とりあえず無理せずに休憩はしっかりとるようにしてね」


「「「はい!」」」



「ハルト様ー!。荷物の移動おわったから遊んで―!!」


「あっ!レナだけずるい!あたしもー!!」


話し込んでいる間に荷物の搬入が終わり、暇になったレナとヒナタがハルトに飛びついてきた。


「わっ!ちょっ!二人とも!落ち着けって!!」


じゃれてくる二人の相手をしていると、少し遠目からもじもじしながらこちらを見ているマリアの姿が目に付いた。

どうやらマリアは二人みたいにじゃれたいけど恥ずかしくて言い出せなかったようだ。

そんなマリアを見てハルトは微笑みながら声を掛けた。


「マリアもおいで?一緒に遊ぼう」


「……うん!」


こうして3人と少し遊んでからハルトは留守番組をセバスに託し、再び店に戻った。

店の方も大方整理が済んだようで。

皆一息ついたところだった。

先ほどは丁度買い出しに出ていたので顔を合わせていなかったライラも戻ってきてお茶の用意をしていた。


「ライラさんいつもありがとうございます」


「いえいえ。私も楽しくお仕事させていただいておりますから♪」


「なぁ旦那?」


「んー?どうした?」


「扉の力は結局旦那以外には使えないのか?」


「んー。実はまだ試してないんだよね」


「それはどうしてだ?」


「何となくなんだけど、世界と世界を繋ぐ力って加護の力の中でもかなり強力な部類だと思うんだ。だから仮に試しても俺以外に扱える気がしないというか」


「まぁその可能性は高そうだなー」


「あら?でも試してみる価値はあるんじゃないの?魔眼なんて希少なスキルを付与できたんだし?」


「そうだな。んじゃ一応試してみるか?」


ハルトは目を閉じてこの場にいる者たちへの異世界への扉の付与を試みた。


『対象へのスキルの付与 条件不足により失敗しました』


「やっぱダメだった。……ん?」


「どうしたんだ?旦那?」


「いや、普段付与に失敗したときは失敗しましたって聞こえるだけなんだけど、今は条件不足により失敗しましたって聞こえたんだよ」


「つまり、何か条件を満たせばその対象には能力の付与が可能ってことね?」


「まぁ普通に考えるとそうなるな。でも条件ってなんだろう。希少なスキルの獲得条件って何か知ってるか?」


「そうねぇ?私達サキュバスで希少な能力というとマナシフトかしら?」


「それってエラルドに魔力を分け与えてたあれか?」


「そうね。本来奪うだけのサキュバスが与えることも出来るようになるユニークスキルよ」


「その獲得条件は?」


「マナシフトをもつ対象と繋がることね♪」


「繋がるって……まさか?」


「うふふ♪そのまさかよ♪異世界への扉の条件を満たせるか私と試してみる……?」


「い、いやいや!それは飽くまでもマナシフトに限った条件だろう!?なぁロンド!何とか言ってやってくれよ!!」


「うーん……」


「ロンド?」


「いやな。ナターシャのいうこともあながち間違っちゃいねぇかもしれねぇと思ってな」


「おいおい……。お前まで……」


「いや、俺が思ってるのはちょっと違うんだが、希少なスキルってのは血縁で相伝しやすいんだよ」


「ってことは俺の子供が出来たら異世界への扉を使える可能性があると?」


「そういうことになるな」


「ハルト♪ やっぱり私と試して―――」


「まてまて!ナターシャ落ち着けって!俺はまだそういうことをするつもりはないってば!」


「あら残念。でも まだ ってことはいつかそういうことをしてくれるってことかしら♪」


「……!し ま せ ん!」


「ハルトの子供なら継承する確率は高いと私も思うわよ」


「レイラまで……」


「真面目な話、旦那ももういい歳だろう?誰かと結婚するつもりはねぇのか?ルナ嬢とか最初から旦那にべったりだからもうとっくにそういう関係なのかと思ってたんだが?」


「いや、別にそういう関係ってわけじゃないよ。ルナは家族……みたいなものかな?」


ナターシャはハルトのその発言を聞いて、小さな声でボソッとつぶやいた。

「……はーあ。ルナちゃん可哀そう」


「ナターシャ何かいったか?」


「べつにぃ?」


「そ、そういうロンドはどうなんだよ?」


「おらぁ鉄が恋人よ!女にはまだ興味ねぇなぁ」


「まだって……お前ももういい歳だろうに……」


「いい?ハルト?ルナちゃんは美人だしとってもいい子だから、あんまり待たせると他の男に取られちゃうかも知れないわよ?それでもいいの?」


ナターシャにそう言われて、何故か先ほどであったミケーロの姿が頭をよぎった。


「それは―――」


ハルトがナターシャの言葉に応えあぐねていると、コネクトオーブが光り、プルフラから通信が入った。


『ハルト様。そろそろ夕刻ですがそちらは大丈夫そうですか?』


「ああ、店の方は滞りないよ。今からそっちに戻る」


『了解しました。ではお待ちしております』


「そういうわけだから行ってくるよ。また何かあったら連絡してくれ。んじゃリン。頼む」


「かしこまりました」



ハルトとリンが転移して残った面子は顔を見合わせた。


「ナターシャ。見ていてじれってぇのは分かるが。旦那は奥手なんだ。あんまりせかすんじゃねぇぞ」


「そんなの見てればわかるわよ。でも先に進んでくれないといつまでたっても私の番が回ってこないじゃないの……」


「はぁ。もてる男はつらいねぇ」







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