67話 フォクシルの少女
ハルト達は一度昨日の宿に戻りルナたちを迎えに向かった。
宿の前までくると、ブランドはここで待っているというので、ルシアと二人で宿に入った。
宿に入ると女将さんがプルフラの取っている部屋へ案内してくれた。
ドアの前に立ち「コンコン」とノックする。
するとプルフラの声が聞こえてきた。
「どちら様ですか?」
「俺だよ。ハルトだ」
するとすぐにドアを開けてプルフラが出迎えてくれた。
そして最初に目に飛び込んできたのは、プルフラの背後に立ち、申し訳なさそうな雰囲気でこちらを見つめている少女だった。
「ん?そのこは……?」
「お待ちしておりました。その……彼女がどうしても皆さんに謝りたいと訪ねて来られて」
「君は昨日のフォクシルだよね?」
「……はい」
「それで謝りたいっていうのは?」
「うっ!うぅ……。ごめんなさい……!」
「えーと………?」
急に泣きながら謝罪する少女に戸惑い、ハルトはプルフラの顔を助けを求めるように見つめた。
「それが、この子はウロボロスに奴隷として使役されていたらしく、首に嵌められている隷属の首輪の効果で命令には逆らえなかったそうです。ですが自分と年も近いルナさん達を拉致する手助けをしたことをとても悔いているようでして……」
「なるほど。そういうわけか」
ハルトはフォクシルの少女の前に腰を落とし、目線を合わせて声を掛けた。
「君、名前は?」
「うぅっ……ヴィアラ……」
「ヴィアラちゃんか。俺はハルト。俺たちは別に君に怒ってないよ?」
「……でもっ!私があいつらに協力したからキャトランのお姉ちゃんたちが酷い目に……」
「大丈夫。みんな無事だったから。ルナ達も怒ってないと思うから安心して?」
「うっ……うぇぇぇぇん!」
「よしよし。辛かったね。自分も辛かったはずなのに人の心配ができるなんて、君は優しい子だね」
ハルトはヴィアラの頭をそっと自分の肩に寄せてヴィアラを落ち着かせるように優しく頭を撫で続けた。
暫くするとヴィアラも落ち着いたようで、涙をぬぐって立ち直った。
「プルフラ。隷属の首輪っていうのは外すことはできないのか?」
「奴隷に対して使用されるような強制力の強い魔道具ですので、簡単に外せるものではないかと……。私もあまり詳しくはないのですが、この類の魔道具は所有者の魔力が登録される仕組みのはずです」
「ルナたちに付けられていた魔力を抑えるような簡単な鎖とは物が違うってことか。そして主がいるということは、つまりウロボロスの誰かが……」
「ええ……」
「はぁ……。この子の主はもう死んでるってことか。無理に外そうとしたらどうなる?」
「この子の命に係わる可能性が高いと思われます……」
「はぁーー。そりゃまぁそうだよなぁ……」
「ハルト様」
ルシアがハルトの服の袖を引っ張りながら名前を呼んだ。
「ん?どうしたルシア?」
「ハルト様の力で外すことはできない?」
「んー。俺の力は何かを作り出す力だからなぁ……。いやまてよ?そうか、そういう能力を創造してみたらいいのか」
「うん。試してみる価値はある」
「ダメもとでやってみるか!無理なら他の手を考えりゃいいしな」
ハルトは目を閉じて隷属の首輪を安全に開錠できるような能力を創造してみる。
『能力の創造に失敗しました』
「ダメか……。具体的な何かをイメージ出来ないと無理みたいだ」
「む。プルフラ。鍵を開ける魔法ないの?」
「えーと、流石に私はそんな魔法は聞いたことがありませんね……」
「鍵を開ける魔法か。うん、ナイスだルシア。それならイメージできるかもしれない」
再びハルトは目を閉じて創造した。
どんな鍵でも開けることが出来るマスターキーを連想した能力を。
頼む、成功してくれ!こんな幼い子が奴隷のままだなんて……。絶対に助けてあげたい!
『万理の鍵師生成付与 成功しました』
「できた!」
「えっ!?」
「どうやらプルフラに適正があったようだな。どうだいけそうか?」
「わかりませんが……やってみます!」
プルフラは恐る恐るヴィアラの首に付けられた隷属の首輪に触れる。
そして目を閉じて開錠を意識した。
すると「ガチャ」という音がし、隷属の首輪が外れ、床に落ちた。
「よし!成功だ!!ナイスプルフラ!!」
「私、やっと皆さんの役に立てた気がします!!」
「おめでとう。ヴィアラ」
ルシアは首元を手で触り、首輪が外れたことを確認するヴィアラに抱き着いた。
「うん!ありがとう!!」
ヴィアラはここにきて笑顔を初めて浮かべるとルシアと抱き合った。
その後
ハルトはプルフラに王城で見聞きしたことを伝えた。
ルシアとヴィアラは見た目の年も近いので気があったらしく、2人が情報共有をしている間、部屋の中を走り回っていた。
「―――というわけだ」
「なるほど。ではそちらの宿へ移動する準備を始めましょうか」
「ああ。それでルナ達は?」
「あれからぐっすりと眠っていますのでもう魔道具の効果も切れることかと思います」
「そうか。んじゃちょっと見てくる」
ハルトはルナが寝ているベッドに腰かけると、ルナの頬に優しく手を添えた。
するとくすぐったかったのかルナがピクッと反応を示した。
「ルナ。大丈夫か?」
「ん……。ごしゅじん……さま?」
ハルトが呼びかけるとルナは目を覚まし、周囲を見渡した。
まだ寝ぼけているのか少し朦朧としているらしい。
「ここは宿だよ。これからフォーレンシアへ向かう打ち合わせに行くのに宿を移るから移動したいんだけど、具合の方はもう大丈夫そうか?」
だんだんと意識がはっきりしてきたルナはどうしてここで寝ていたのか思い出そうとしていた。
そして、意識を失う直前にハルトに自ら口づけを迫ったことを思い出し、急に恥ずかしくなって顔を真っ赤にしてベッドへうつ伏せになった。
「ルナ……?やっぱりまだ具合が―――」
「だ、大丈夫です!!少しめまいがしただけで!!少し休んだら準備をしてきますのでご主人様は隣の部屋でお待ちください!!」
「お、おう?そ、そうか?それならユキとリンにもルナから声を掛けてきてくれるかな?んじゃ待ってるね」
そう告げるとハルトはプルフラ達がいる部屋へ戻っていった。
ルナはハルトが部屋を出て行ったのを確認すると、一度深呼吸をしてうつ伏せのまま枕を両手でギュッと抱きしめながらハルトとの口づけを思い出して再び赤面していた。
ご主人様を助けるためとはいえ、私はなんて恥ずかしいことを……!!
~~~~!!!
何度も思い返しながら、ルナは恥ずかしさで足をバタバタさせていた為、その音でユキとリンも目を覚まし、一人で照れてバタついてるルナをジーっと見つめていた。
そんな二人の視線にようやく気が付いたルナは、慌てて取り繕うように二人に声を掛ける。
「ち、違うのよ!?なんていうかその!恥ずかしいとかそういうことじゃなくて!ねっ!?」
ユキは無言で分かっていますというかのようにニコっとルナに微笑みかけた。
リンも和服の袖口を口元に当てながら微笑みを浮かべて静かにルナを見ていた。
「もー!二人とも何とか言ってよ!!」
「ふふっ。ルナ様があまりにもかわいらしくてつい♪」
「姉様かわいい♪」
「もう!!かわいくないからぁ!!」
※ ※ ※
数分後。
支度を終えた3人が部屋を出てきた。
「ユキとリンももう大丈夫か?」
「はい。もう魔道具の影響も消えたようです。ご心配おかけしました」
「私ももう大丈夫です。ありがとうございます」
「うん。二人が無事でなによりだ。それで、ルナはどうして後ろを向てるんだ?」
「こ、これはその。寝ぐせが……!」
「寝ぐせ?そんなの気にしなくても―――」
「ハルト様。いまはそっとしてあげてくださいませ」
ユキがハルトの耳元でそっとそうつぶやいた。
「……?」
しばらくしてようやくルナもいつもの調子を取り戻したので早速宿を引き払って外に出た。
ブランドと合流した一同はミケーネ商会が運営するという宿へと向かった。




