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虚無からはじめる異世界生活 ~最強種の仲間と共に創造神の加護の力ですべてを解決します~  作者: すなる
1章 第二部 王都ベルセリア編

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65話 王城の混乱

ハルト達は未だ魔道具の影響で意識が朦朧としていたルナたち3人をプルフラに託し、ブランドを連れてマルバスがいたという王城へ向かっていた。

ブランドは何を考えているのか分からないが、逃げたり敵対するそぶりもなく、素直にハルトに従い付いてきていた。


ハルトとルシア、ブランドの3人が王城へ到着すると、王城は魔族による侵入と現王クライスの暗殺事件という前代未聞の状況で大混乱に陥っていた。




※  ※  ※




遡ること1時間前―――


騎士団は全軍を率いて王城に集まっていた。

ウィリアムはハルトの伝言を直接受け取ったカイと話していた。


「カイ。ほんとにハルト殿は王城だと言っていたのか?」


「ええ。確かに聞きました!」


「でもそのハルト殿はどこにもいないぞ!?」


「それは俺に言われても…………」


ウィリアム達が賊の襲撃に備えて王城の周囲を警戒していると、場内から『きゃあああああああ!』

と激しい悲鳴が響いてきた。

すぐさまウィリアムは城内に入り、声の聞こえた方向へ向かう。


すると、そこは王の居室の前だった。

侍女が扉の空いた部屋の前で座り込み、部屋の中を指さしながら震えていた。


「陛下!!」


ウィリアムは国王の身に何か起こったと察し、すぐさま部屋の中を確認する。

すると、執務用の机に大量の血を流し倒れ込む王の姿がそこにはあった。

慌てて駆け寄って容態を確認するが、既にこと切れていた。


「くそっ!遅かったか!賊は一体どこから!!おいおまえ!犯人の姿は見たか!?」


「あ……ああ!」


「おい!しっかりしろ!犯人を見たのか!?」


「は、はい。少しだけですが、背中に黒い翼を生やした人型のなにかが……」


背中に翼!

昨日ハルト殿たちを襲ったという魔族か!?


「そいつはどこに向かったのか分かるか!!」


「窓から出て……、下に……」


チィッ!

下ってことはもう逃げたのか?

いや、翼をもつ魔族は飛行能力を備えていると聞いたことがある。

逃げるなら何故階下へ?

まだ何か目的が……。

この下は……?

まさか!?


嫌な予感がしたウィリアムがすぐさまバルコニーに飛び出し、階下へ飛び降りた。

下の階のバルコニーに飛び降り、部屋の中を確認すると予想通り賊と思われる者の姿がそこにあった。

それも皇太后の首を片手で持ち上げ、胸を貫く姿が。


「き、貴様!!よくも我が妻を!!」


前王が叫び声をあげながら壁に飾ってあった剣を手に取り魔族と相対した。


「ゲリック様!!」


「おお!ウィリアム騎士団長か!!こいつが我が愛しのフロレンスを……!!」


「くっ!!」


「愛しの?お前こいつのことを愛していたのか?」


「当然だ!35年ともに連れ添った妻なのだぞ!!よくも……。よくも!!」


「ふっ。俺は聞いているぞ。30年前に前騎士団長が長期遠征中にその妻を金で攫わせ無理やり手籠めにしたと」


「……!貴様どこでそれを……」


「一体何の話ですか……?ゲリック様……?」


「まだまだあるぞ?貴様が賊を手引きし、キャトランを違法に捕らえ、金で買っていること。そして飽きたらフォーレンシアへ横流ししていることもな」


「ゲリック様……?こいつの言っていることは本当なのですか……?」


「ええい!うるさい黙れ!!魔族の分際でありもせぬことをぺらぺらと!!どこにそんな証拠があるという!余を貶めようとしたとてそうはいかぬぞ!!」


「……ウロボロス、ボーゼス、ロンメル、ヴェルナーお前には聞き覚えがあるはずだ」


魔族がそう単語をつぶやくと、ゲリックの表情がゆがみ、眉をしかめた。

その様子をみて魔族がニヤリと笑う。

ウロボロスという裏組織が国内に存在するという話は当然騎士団長であるウィリアムの耳にも入っていたので知っていた。

だが、他の2つの名前は聞き覚えがなかった。

その名前に眉を顰め、鈍い反応をしめしたゲリックを見てウィリアムはその名前に意味があるのだと思い、確認した。


「ウロボロスという犯罪組織があるというのは知っている。ボーゼスというのは王との商会長の名だな?他の2つはなんだ」


「はは。知らないよな。ロンメルはボーゼスから奴隷を買って他国へ売りさばいている闇ドレイ商。ヴェルナーはウロボロスのボスの名だ。そしてそいつは3人のお得意様ってわけだ」


「ゲリック様……?」


「し、しらん!そんな名前聞いたこともないわ!!騎士団長ともあろうものが魔族の言葉に惑わされるでないわ!!こんな奴さっさと殺してしまえ!!」


「いいのか?俺を殺すと真相は闇の中だぞ。まぁ貴様に俺を殺せるほどの力量があるともおもえぬがな。ブランド程の実力があれば別だが」


「!?お前、ブランド殿とも知り合いなのか!?」


「ああ。ヴェルナーとこいつに復讐を果たしたいというブランドと俺は協力関係にあるからな」


「なん……だと?」


ブランドほどの男がこんな魔族を招き入れて王族暗殺を企むなど!?


「信じられないか?ブランドの妻はこいつに無理やり辱められ、子を孕み自害したそうだぞ。奴が恨むのも当然の話だと思うが」


「なっ!?」


「……」


「こいつは他にも色々な犯罪組織と繋がっていてな。例えばそう……マナリスとかとも……な?」


マナリスという組織の名前を聞いて、ゲリックはピクリと表情をこわばらせ、冷や汗を流した。


マナリスといえばハルト殿が探している魔族の犯罪組織の名前だったはず。

まさか、ゲリック様はそんな者たちまでも手引きを!?


「ゲリック様?いったいどういうことなのですか?」


「しらん!そんな魔族の組織などこの王都にあるはずがないではないか!!」


「ふっ。おろかな……」


マルバスはゲリックの発言を聞いて呆れた顔を見せた。

ウィリアムは眉間に皺をよせてゲリックを追及する。


「ゲリック様。マナリスが何故魔族の組織だと知っておられるのですか?」


「そ、それは!たまたま噂を聞いたからだ!」


「私も長年治安を維持するために騎士団を率いてきましたのでこの国に蔓延る犯罪組織には少し詳しいのですが、そんな私でさえ、マナリスについて知ったのはつい先日です。既に王位を譲り隠居されたあなたが一体どこでそのような情報をお聞きになったというのですか」


「だ、黙れ!!騎士団長如きが私に意見するきか!?不敬だぞ!!」


「……。魔族の男。貴様は一体何の目的があってこんなことをしている?」


「俺は中立派のとある魔王様の側近を務めている。主は人と魔族は手を取り合うことを推奨していて、俺もそれに賛同している」


「だったらどうしてこんな非道な真似ができる!!王と皇太后を暗殺するような奴が中立を語るというのか!?」


「なっ!フロレンスだけでなく、クライスも殺しただと……」


息子の死を知り、ゲリックは膝から崩れ落ちた。


「ウィリアム、貴様に一つ忠告してやる。悪意に満ちた人族のほうが魔族よりも遥かに傲慢で悪だということをな。皇太后はこいつと共にウロボロスを使い、犯罪に加担していたような女だぞ。現王クライスもゲリックの紹介でマナリスとも通じ、獣人や人を違法に捕らえマナリスや悪徳貴族に高値で売買していたという情報を得ている。更にフォーレンシアにマナリスの者が自由に出入りできるように、彼らの身分を保証する親書まで用意し入国斡旋までしていた。この国の王家は裏社会と密接にかかわり、犯罪と人身売買を生業としてこれまで成り立っていたのだぞ?これを聞いてお前はどう思う?俺とそいつ、いったいどっちが悪だ?」


「それは……」


「……まぁ。俺も善者を語るつもりはない。マナリスやウロボロスの動向を探るために潜入し、加担していたこともまた事実。さて……。こいつの悪行については語るのはこの辺りでもう十分だろう。最後の仕上げだ」


そういうとマルバスはゲリックの首筋に剣を突き立てた。


「最後に何か言い残すことはあるか?」


「くっ……!貴様に何もかも奪われてたまるか!!死ねぇ!!」


ゲリックは逆上して床に落ちていた剣を握り、叫びながらマルバスに切りかかろうとした。

しかし、その剣はマルバスに届くことはなく、背中を切り伏せられ、前のめりに床へと倒れ伏した。


「なっ……きさ……ま!」


ゲリックは倒れざまに自分の背を切ったウィリアムを睨みつけた。


「……いいのか?王族殺しは大罪だろう」


「……腐りきった王家に何も知らずこれまで恭順し、誰よりも近くでブランド殿を見ていたにもかかわらず救うことは愚か気付くことさえできなかったのは私の落ち度。彼や貴方だけに罪を背負わせるわけにはいかぬだろう……」


「貴様は大概不器用なやつだな」


「……そうかもしれんな」


「これから一体どうするつもりだ?」


「そうだな……。これからは自分の目で見て、耳で聞き、何が正しいのかを見極めようと思う」


「……貴様のようなやつばかりであれば、我らも人族と1000年前のように手を取りあえるのだろうがな」


「…………。お前はこれからどうするんだ?」


「俺は主の命に従って、マナリスに加担していたウロボロスとこいつらを始末しに来ただけだ。ウロボロスの方はブランドが今頃壊滅させている頃だろうしな。一度主の元へ戻り報告するつもりだ」


「そうか……。マナリスという組織の目的は一体なんだ?」


「……魔族の世界統治。奴らは目的の為には人であれ魔族であれ手段を択ばず利用し敵対する。例えそれが魔王であってもだ」


つまり、こいつが来ていなければこの国は腐敗が続き、近いうちにマナリスの手に落ちていたということか……。

自国の王が人にとっての敵で、他国の―――それも魔族のこいつらが奇しくもこの国を救う形になったということか……。


「勘違いするなよ。我々は人族の味方というわけではない。今回はマナリスに加担していた者たちを潰しに来ただけだ。結果としてこの国の腐敗を知り、根を叩くに至ったが、別にこの国を救うつもりはない」


「飽くまでも中立ということだな」


「そういうことだ。どちらの側にも我が主の天秤は傾くことはない。では私はそろそろ行く」


そう言ってマルバスはウィリアムに背を向けバルコニーへ向かった。


「今からでも、この国に巣くう悪をすべて排除することは可能だと思うか?」


「……それは貴様次第だろう。俺の知ったことではない。……だが、貴様が正しい目を持ち続けていれば叶う日が来るかもしれないな。せっかく目を覚ましたのなら、決して目を曇らせるな」


「ああ。肝に銘じておく」


「……そうだ。一つ伝言を頼めるか―――」


マルバスは伝言をウィリアムに託すと。

転移魔法を使い、どこかへ消えてしまった。

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