63話 救出劇4
ハルト達が地下通路の奥に進むと所々に惨劇の痕が点在していた。
途中にある小部屋で待機していた者たちだろうか。
何かから逃げようとして背中を切られこと切れたと思われる、無数の賊の遺体が通路に横たわっていた。
「これはいったい…………」
「どの遺体もほぼ一撃で切り捨てられているようですね……」
「ああ。いくら犯罪者集団とはいえこの状況はあまりにも……。うっ!」
ハルトは大量の遺体を目の当たりにし、通路に蔓延する血の匂いにやられ、唐突な吐き気に襲われた。
「すまない……」
「いえ……。私も戦場に初めて出た時はそうなったので……」
「はぁ、はぁ……。もう大丈夫だ」
ハルトは立ちあがりながら横に寝ころぶ死体へ目を向けると、そこには見覚えのある男が転がっていた。
「こいつは……レナード?」
こうなってしまったら、こいつに対して怒りもわかないな……。
まぁ同情はしないけどな。
「ハルト様。あと少しで突き当りだと思う」
「……わかった。先を急ごう」
もし仮に予想が外れていたら、ルナたちも危険だ……。
急がないと……!
※ ※ ※
ルナたちとボーゼスを連れて逃げ出そうとしていたリヒターは目の前の状況を見て震えていた。
「あ、あ……。ガートさん……?」
リヒターたちの目の前には血まみれで床に横たわりピクリとも動かないガートの姿があった。
「ひいぃぃぃ!!」
ボーゼスは腰を抜かし目の前のに立つ者に恐怖し後ずさりをしながらうろたえていた。
ルナたちももうろうとする意識の中で、冷や汗をかきながら眼前の状況をただじっと見つめていた。
血まみれで伏すガートの頭を踏みつけながら襲撃者は口を開く。
「たわいもない」
※ ※ ※
遡ること数十分前―――
リヒターとボーゼスはルナたちを連行して避難路へ、ガートは侵入者の対応へ向かおうとしていた。
そんなとき、通路の方から「カツン、カツン」とゆっくり歩きながら部屋に近づいてくる足音が聞こえてきた。
皆警戒して足音の聞こえる方へ視線を向ける。
するとそこには老齢の剣士の姿があった。
「てめぇは!!騎士団の!?」
「ほう?私のことをご存じでしたか」
「この街で商売してて前任の騎士団長を知らねぇ奴がいるはずねぇだろうが……。どうしててめぇがここに!」
「そんなこと言わなくてもわかるでしょう」
「くっ……!」
現団長のウィリアムも大概やべぇがこいつはもっとやべぇ……!!
騎士団に所属してこの年になるまで一度も負けたことがないことから、たしか無敗の騎士って呼ばれてたはず!!
どうしてこいつがこんな場所にいやがる!!
「どうしました?顔色が悪いですよ」
「おい。うちの別動隊や通路で待機していたやつらはどうした……?」
「この剣を見ればわかるでしょう?」
ブランドはそういって、右手に持つべったりと血がついた剣を突き出す。
「くそっ!」
一体どこからこの場所の情報がこいつに漏れた!!
というかこいつは犯罪者でも非殺傷でとらえる模範的な騎士って話じゃなかったのかよ!!
ガートが冷や汗を流しながら思考を巡らせている間も、ブランドはゆっくりと1歩ずつガートたちの方へ近づいていく。
「そ、それ以上近寄るんじゃねぇ!!おい!!リヒター!!ボーゼスを連れてさっさといけ!!」
「はい!」
「ま、まて!!商品たちが!!」
「んな場合かよ!!騎士団に見つかってんだぞ!?まだ商売出来るつもりでいんのかよ!?」
「私は今ここに騎士団としてきているわけではありませんよ」
「……は?んじゃ一体なんのために……」
「騎士団として来たのでは、復讐を果たせませんのでね。私は今日ここへ来たのは過去を清算するためです」
「復讐……だと?俺たちに一体何の恨みが……」
「ヴェルナーへの復讐ですよ」
「ボスに……?あんたとうちのボスに一体どんな因縁があるっていうんだ」
「あなたは知らないのですね。ヴェルナーは私の兄になるはずだった男です」
「……は?」
最強の元騎士団長とボスが兄弟!?
そんな話聞いたことがねぇぞ!!
「兄といっても私の婚約者の兄ですがね」
「それが一体何故……」
「もう私のことはどうでもいいでしょう。あなた方はどうせここで死ぬのですから」
「くっ!」
「逃がしませんよ?」
ブランドとガートが話し込んでいる隙に逃げようとしていたリヒターとボーゼスだったが、ブランドが剣を軽く振り、行く手へ斬撃を飛ばすと、脱出路の壁が崩れ落ち退路を塞がれた。
「あぁ!!お前がぐずぐずしているから!!」
「黙れ!!貴様が商品商品って言ってるからこんなことに!!くそっ!」
リヒターは悪態をつくボーゼスを殴り飛ばした。
「き、きさま!私にこんなことをしてただで済むと思って―――」
「うるさい人ですね。あなたから殺してもいいんですよ?」
ブランドの殺気のこもった睨みを受け、ボーゼスは腰を抜かし床へ座り込んだ。
「ひっ!!」
「くそおおおお!こんなところで殺されてたまるか!!」
ガートが必至な形相で、短剣を抜いてブランドに飛び掛かった。
しかしブランドが剣を一閃したかと思うと、ガートの防具はすべて切り刻まれ、全身から血を吹き出しながら前のめりに床へと倒れ込んだ。
「ば……かな……」
「ガートさん!?」
「ひぃぃぃぃぃ!!」
「次はどちらですか?」




