60話 救出劇1
ハルトはルシアとプルフラを部屋に呼び戻し作戦会議を始めていた。
「2人とも……すまなかった!」
二人と顔を合わせるなり、ハルトはテーブルに頭を付けて謝罪した。
「あ、頭をあげてください!ハルト様!」
「……」
「いや、俺はどうかしてた。俺が一番しっかりしなきゃならないのに。ほんとにダメ人間だったって自覚したよ」
「そんなことはありません!ハルト様がいなければ私も……」
「プルフラの言う通り。ハルト様だけの責任じゃない。皆の責任」
プルフラとルシアは握りハルトの手を握りハルトだけの責任ではないと強調した。
「ありがとう。俺はもうくよくよしない。こうしている今も3人は辛い目に合っているはずだ。1秒でも早く救出することだけを考えて行動するよ。二人は何か分かったことはあるか?」
ハルトが立ち直ったことに安堵し、2人は顔を見合わせて少し微笑んだ。
そしてプルフラが口を開いた。
「私は冒険者を中心に聞き込みを掛けて来ました。そこで聞いた話なのですが、この王都にあるスラムは以前は中心街だった場所だそうで、現在はほとんどの住居が廃棄され、そのまま残っている層で、犯罪者や闇ギルドの巣窟になっているとのことでした。なので冒険者や騎士団でも余程のことがない限りは立ち入らない場所だそうです」
「なるほど。スラムがあるのか。監禁されているとしたら可能性は高いな。ルシアはどうだ?」
「私は魔眼で高い建物の上から街を見てきた。魔眼は高い魔力を見ることが出来るから」
「なるほど……。高い魔力、つまり魔眼を使えば例の魔族を見つけ出せるってことか。それでどうだった?」
ルシアは首を横に振った。
「高い魔力を持った存在は王城と騎士団以外には見つからなかった」
「王城と騎士団か」
近衛兵やウィリアム達ってところか……。
しかし、見つからないなんてことがあるのか?
魔眼はとても珍しいと聞く。
そんな魔眼に対する対策なんて普通するのか?
魔力を完全に隠す……、そういえばレナースは魔力阻害の魔道具がどうこうって言ってたな。
「ルシア。魔力が高い存在じゃなくて一切魔力を感じない場所か、もしくは魔力がとても希薄になってる場所はなかったか?」
「んー。あ。王都の西。少し崩れかけた大きな建物がある辺りは魔力を感じなかったかも」
「西というとスラム……。私も遠目で少し見て来ましたが、ルシアさんが言っている建物とは、もとの教会痕だとおもいます。今は崩れかかっていましたが、大きな鐘があったとおもわれる塔が併設されておりました」
「旧教会の廃墟か……。調べてみる価値はありそうだな。その前に少し試してみたいことがあるから協力してもらえるか?」
ハルトは魔力の痕跡を辿れる能力の創造を試みようと思っていると二人に説明した。
さきほどルナがとぎれとぎれながら念話で話しかけてきたので、もし念話先の魔力の痕跡を辿れるなら確実に所在を確かめることが出来るはずだと。
「なるほど。確かにそんな能力があれば可能かもしれませんね」
「うん。魔眼と一緒に使えたらきっと見つかる」
「よし、ほんとは日に使用できる加護の回数が決まっているからもっと仲間がいる状態で試したいんだが、今は時間が惜しい。早速試してみる」
二人は頷いた。
ハルトは目を閉じて魔力の痕跡を追跡できるような能力をイメージし、創造神の加護の力を発動した。
『マナトレース スキル生成付与 成功しました』
「よし!成功した!俺自身は適性がなかったみたいだ……」
「大丈夫。私が授かった。魔眼と一緒に使えば絶対皆を見つけられる」
「ああ、んじゃルシア。早速頼む」
「わかった。念話の残滓をトレース開始……」
ルシアは目を閉じて念話で使用された魔力がどこから流れてきたのかを探知し、その行き先を探った。
すると先ほどの予想通り、旧教会が脳裏に映った。
そしてその隣にある建物。
おそらく教会がまだ使われていたころに安置所として使われていたと思われる地下へ続く階段だけがある建物を感じ取った。
しかし、魔力探知は階段の奥まで伸ばそうとすると、ふとそのばで途絶えてしまった。
「むっ!?」
「どうした!?」
「魔力の探知には成功した。でも途中で遮断された。魔力を阻害する何かがあるみたい」
魔力阻害……。
やはりレナースが言っていた魔道具か。
それでルナからの念話はとぎれとぎれになり、リンも転移での脱出を出来ないってことか。
「わかった。ありがとうルシア。魔力を阻害する魔道具の対策はもう考えてある。すぐにその場所に向かいたいが、一度騎士団に報告してからでもいいか?」
「それでは騎士団への報告は私が―――」
プルフラが手をあげ、報告役を買って出ようとしたそのとき、「コンコンッ」と部屋のドアがノックされた。
「だれだ?」
「俺です!カイです!」
「要件は?」
「ブランド様がこちらに来ていませんか!?」
カイの質問の意図が理解できずに三人は首を傾げた。
カイを部屋に招き入れ詳しく話を聞くと今朝からブランドの姿が見当たらないという。
「普段なら誰にも告げずに日中出歩くなんてないんですけど、ハルトさんの仲間の誘拐事件についての対応で騎士団内がバタバタしているうちにいつの間にかいなくなっていたらしく……。ウィリアム団長も人手が少しでも欲しい時に居なくなったので、もしかしたら責任を感じてハルトさんのところへ向かったんじゃないかと」
「なるほど。それでカイがここへ訪ねてきたってわけか。悪いがブランドさんは昨日見たのを最後に一度も会っていないぞ」
「そうですか……。一体どこへ……」
……。
ブランドの行先には思い当たる節はある。
しかし、俺の予想が当たっていれば……。
「カイ。俺らは族のアジトを特定した」
「えぇ!」
「これからすぐ向かうつもりだ。騎士団に場所を伝えてもらえるか?」
「それはもちろん構いませんが。お三方だけで向かうつもりですか……?」
「ああ」
「その……。皆さんが俺らなんかよりも十分強いのは理解してますが、流石に危険かと……。昨日のこともありますし……」
カイは昨日、この三人がいながら族に仲間を攫われたことを知っている。
流石にいくら強くてもまた返り討ちにあうと心配しているのだろう。
ハルトはそう思ってカイの心配を払拭するために口を開いた。
「俺はもう手段を択ばない。それにもう慢心も油断も決してするつもりはないよ。例えどんな相手が来ようとも決して負けるつもりはない。だから安心してくれ」
「……わかりました」
「では伝令を頼む。敵のアジトは―――」




