56話 自暴自棄
ハルトは焦っていた。
速足で当てもなく通りを歩き続けるが、敵の情報は何もない。
攫われた三人に念話も試してみたが応答はなかった。
「くそっ……!くそっ!!!」
ハルトは怒りの矛先を見失い、地面を何度も蹴り続けた。
「ハルト様……」
プルフラが話しかけるがハルトは当てもなくそのまま歩き続けた。
黙って二人はハルトの後を追った。
朝日が昇り始め、辺りはうっすらと明るくなり夜も明けようとしていた。
そんなとき一人の男がハルトへ声をかけてきた。
「ハルトか?」
ハルトは鋭い目つきで声をかけてきた男を見た。
そこに立っていたのはエラルドだった。
「なんだ……エラルドか……」
「なんだとは薄情な奴だな」
エラルドはハルトの目つきや様子を見ていつものハルトではないことを一目見て確認した。
「……何があった?いつものキャトランの嬢ちゃんは一緒じゃないのか?」
ハルトは歯を噛みしめ黙っている。
エラルドはハルトがまともに会話ができるほど冷静ではないと判断し、顔見知りであるルシアに何があったのか確認してようやく事情を理解した。
「なるほどな……。俺も探すのに協力しよう」
「……」
ハルトは黙っている。
「仲間が攫われたからって自暴自棄になるな」
「お前に何が分かる!!!」
ハルトは叫んだ。
自分のふがいなさ、油断、自分の力の過信で仲間を攫われたことに対し、行き場のない怒りと後悔の念に囚われていた。
エラルドは黙ってハルトを殴り飛ばした。
「……!?」
プルフラは直ぐにハルトを守るために割って入ろうとしたがルシアがそれを止めた。
プルフラはルシアを見ると、ルシアは首を横に振った。
エラルドは倒れ込むハルトの胸ぐらをつかんで引き起こした。
そして一言いうたびに殴り続けた。
「お前がそんなんでどうする!!誰にでも失敗はある!それをいつまでも悔いていてなんになるんだ!!ルナ達が心配なんじゃないのか!?」
「でも……俺の力じゃどうすることも出来なかった……。俺は誰にも負けないと思っていた……。だけど俺は目の前で仲間たちを攫われてしまったんだ……。俺は弱い……!!」
「わかってるじゃねぇか。確かに今のお前は弱い!!この俺に一方的にやられているくらいなんだからなら!悔しかったらやり返して来いよ?お前はその程度の奴だったのか?」
「……」
ハルトは黙って言われるがままだった。
エラルドはハルトを床へ着き飛ばすと立ち上がり背を向けた。
「お前がここまで弱い奴だとは思ってなかった。残念だ……」
そういうとエラルドは去って行った。
「ハルト様……」
二人は黙ってその状況を見ていることしかできなかった。
日が昇り街の人々が行きかい始めたので二人はぐったりと寝ころんだまま天を見上げるハルトに肩を貸し、最初に騎士団から斡旋されていた宿まで戻った。
幸い部屋料金は払っていたので部屋はそのまま確保してくれていたらしく、ハルトを部屋に運び入れた。
ハルトはベッドにうずくまったままじっとしている。
二人は静かにそんなハルトを見つめていた。
「お前ら……こんな俺は置いていけよ」
「……」
「プルフラは使命があるんだろう。すまない……俺はもう協力できそうにない」
プルフラは返事をせず黙っていた。
暫くしてプルフラはルシアの方を見て口を開いた。
「ルシア様。ハルト様をよろしくお願いします。私はお二人の捜索へ出ます。何か分かれば連絡を入れます」
「わかった。プルフラも気を付けて」
プルフラはハルトへ軽く頭を下げると部屋を出て行った。




