55話 誘拐と疑心
目の前でリンとプルフラをやられた上に、マルバスに気を取られている間にルナとユキまでも連れ去られてしまっていたことに悔いてハルトは後悔と絶望を感じ地に両手をついていた。
そんなハルトにルシアが声をかける。
「大丈夫。みんな強い。簡単には奴隷になんかならない」
「ハルト様……。すみません、私がもっと注意していれば……」
プルフラは傷を負った腕をかばいながら下を向いて嘆いていた。
「いや、プルフラさんは悪くないよ……。それよりもまず傷を手当しよう」
プルフラの腕の傷に包帯を巻いて応急処置を施した。
そうしていると倉庫に王宮騎士達がやってきた。
「お前らここで何をしている!!」
プルフラは近寄る足音を聞き、即座に人化し直し魔族であることを隠した。
中に入るや否や一人の騎士がハルト達に気が付いて声をかけてきた。
「ハルト殿……!?ここでいったい何があったのですか!?」
そう声をかけてきたのはカイだった。
話を聞くと騎士団はこの倉庫で激しい音が聞こえると通報を受けたので調査に来たらしい。
ハルトは賊と交戦したこと。
三人が攫われたこと。
敵に魔族の男が居たこと。
そして、騎士団で昨日話した内容が漏れていたことを話した。
「カイ……賊と内通していたのは君か……??」
ハルトは鋭い目つきでカイを睨みつけた。
その目つきにカイは戦慄を覚えた。
「い、いえ!私はそのようなことは決して!!ブランド様もウィリアム様も決してそのようなことは……」
「では一体なぜ、あの部屋で話した内容が漏れていたんだ!!」
ハルトは拳に全力で力を込めて地面を殴りつけた。
加減をせずに打ち付けられた拳は地面に大きな穴を穿ち、それをみた騎士団員は皆静まり返った。
「……一度騎士団の詰め所へ行きませんか。ブランド様とウィリアム様へ相談しましょう。誘拐事件については以前から騎士団でも犯人を特定すべく調査をしていましたので……」
ハルトはもう誰も信じれいないといった目をしていた。
「……お前らは信用できない。……情報遮断の結界が張られていたというあの部屋に居たのは俺ら以外はお前ら3人だけだ。あの部屋に招いたのはブランドだったな」
「ですが……!我々はそのような……」
ハルトは立ち上がると何も言わずに倉庫を出いった。
「ハルト様……」
プルフラは怒りと絶望に満ちたハルトの様子を見て戸惑いつつも後を追った。
ルシアも黙ってハルトについていった。
去り行くハルトにカイは声をかけた。
「……我々は我々で調査を続けます!ハルト殿の疑念を払拭すべく、ブランド様とウィリアム様の潔白を証明するためにも必ず賊の尻尾を掴んで見せます!!」
「……」
ハルトはカイを一瞥するとそのまま黙ってその場をあとにした。
ルシアもハルトの後を追い。
プルフラはカイに軽く頭を下げてハルトの後を追いかけた。




