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虚無からはじめる異世界生活 ~最強種の仲間と共に創造神の加護の力ですべてを解決します~  作者: すなる
1章 第二部 王都ベルセリア編

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44話 デモンストレーション

翌日、朝食をご馳走になり、サタナキアの部屋を皆で訪れていた。


「おもてなし感謝します」


「いえ、気に入って頂けようでなによりです。もしよかったらまたいつでもお越しください。あなた方ならばいつでも歓迎したしますよ」


「それでは」

そう言うとハルトは目の前にアルレンセスへの扉を出した。


「これが異世界へ繋がる扉……」



「色々ありがとうございました。ではまた情報があれば連絡を取り合いましょう」


「ええ、よろしくお願いします。プルフラ、ハルトさん達の力になってあげてくださいね」


「はい、行ってまいります」



横でアモンとシンがなぜか握手を交わし別れの挨拶をしていた。


「また手合わせできることを願っております。その時は負けませんよ」


「こちらこそ」


どうやら朝早くから二人で模擬戦をやっていたらしい。


「ではまた」

そう言ってハルト達はアルレンセスへ帰って行った。



「とても強い力をお持ちの方々だというのに、普段の装いからは全くその強さを感じさせないというか、傍にいると自然と落ち着いてしまうようなオーラを纏った、なんとも不思議な方達でしたね」


「ええ、あの方たちはきっとこの世界を良い方向へ導いてくれる。私にはそんな気がしています」




※  ※  ※




アルレンセスへ戻るといつものようにセバスがさっそうと目の前に現れてお出迎えをしてくれた。

急に目の前に現れたセバスに、プルフラはとても驚いていた。

そんなプルフラを紹介しながら魔王領で聞いた話をセバスにも共有した。


「それで?店の皆からは連絡はあったのか?」


「いえ」


ふむ、順調にいっているってことなのかな?


「気になるのであれば一度赴いてみてはいかがでしょうか。ハルト様が顔を見せればユキ達も喜ぶと思います」


「そうだな。昨日は開店初日で忙しかっただろうし、プルフラにこの街を一通り案内したら店に陣中見舞いに行くとするか」





※  ※  ※





時は少し遡り早朝――

幻想郷アルレンセスの方では商業ギルドの妨害工作に対抗するための作戦が開始されていた。

朝の開店時間には予想通り客足は少なく。

遠目で眺めている者達はひそひそと会話をしていた。


「予想通り、いやそれ以上だなぁ……」


「でもここまで噂が浸透しているなら、この店は街の皆の興味を引いているのは間違いなさそうね。これならうまくいきそうよ。ライラさん、早速実演販売を始めてもらえるかしら?」


「かしこまりました」


ライラが昨日と同じく試食の商品を準備し始めると、昨日購入してくれた人達が徐々に集まってきた。


「昨日買わせてもらった果物が家族に大好評だったんだ。また売ってくれるか?」


「今日は別の物も買ってみたくなってきちゃいました」


「妹からとても美味しいフルーツがあると聞いてきたんですけど」


リピーターに加えて、いい情報を聞いてきてくれた客もちらほら集まっていた。




その様子を影で見ていたバルディスが部下をけしかけようとしていた。


「まだ完全に潰すまではいかないか……。おい、今日はこれを仕込んであの店にとどめを刺してこい」


バルディスは後ろにいる部下に毒瓶を手渡そうとしている。




「我々の店に何か御用ですか?お客様♪」

バルディスは背後から急に聞こえてくる女性の声に咄嗟に反応し、飛びのきざまに両手にナイフを持ち身構えていた。


「へぇ?意外といい反応するじゃない?少しは戦いの心得もあるようね」


「お前は……ナターシャ!」


ナターシャ瓶を奪って放り棄てた。


彼女の足元にはバルディスの部下と思われる男が既に倒れていた。



「私のとこを知っているのね。なら私がなぜあなたの元へ来たのかはもう分かってるわよね?」


「ふん、何のことかな?」


「しらばっくれちゃってまぁ。では口を割りたくなるまで可愛がってあげるわねっ!」


ナターシャは細剣を抜いてバルディスに切りかかった。

バルディスはギリギリのところで攻撃を躱しながら大通りへ出る。

そのまま人込みをかき分けつつ幻想郷アルレンセスの側までやってきた。


「おいおい、いいのか?こんなところで店の店員が証拠も無しに俺を攻撃したらそれこそ店の心象は最悪なものになると思うが?」


バルディスは後ろにある幻想郷アルレンセスの看板を見ながら笑っていた。


「そうね……」


ナターシャはそう言うと細剣を納めた。

その様子を見てバルディスはしたり顔でニヤリと笑い隠し持った短剣を後ろ手で握りナターシャの隙を伺っていた。


しかし次の瞬間。

ナターシャは細剣を抜刀し、バルディスが構えているナイフごと腕を一瞬で斬り飛ばした。

「カラン」と真っ二つに切られたナイフの刃が地面へ落ちると、バルディスの叫び声が周囲に響き渡る。


「うぎゃあああああ!!俺のうでがぁ!!」


『きゃああああああ!』


民衆は突然の出来事に大騒ぎになっている。




「これは何事ですか?」


そこに現れたのは馬車で通りかかったアイデンリヒトだった。

それを見てバルディスはこの状況を見れば店の信用は地に落ちると確信し、斬られた腕を抑えながら大声で叫んだ。


「りょ!領主様!そこの店の店員が急に襲い掛かってきて俺の腕を!!」


「……なるほど。この者を連行しなさい」


アイゼンリヒトは無表情のまま、傍にいた兵たちに捕縛の指示を出した。

バルディスはその言葉を聞いて、ナターシャをまんまとはめることに成功したと確信し内心では嘲笑っていた。


ざまぁみろ!!

俺の勝ちだナターシャ!!

お前は公衆の面前でここまでしたんだ!

もう店の信用は地に落ちたも同然!!

くくく!


しかし、アイデンリヒトの周りに居た兵士は何故かバルディスを取り囲んでいた。


「は?どうして俺を取り囲んでる!?俺は被害者だぞ!?」


切られた左腕を右手で抑えながら騒ぎ立てるバルディスの前にアイデンリヒトは歩み出て言った。


「あなたが裏でマーティンと繋がっているという情報は前から耳にしておりました。証拠がつかめないのでこれまでは黙っていましたが。先ほどその店の方が来られて、営業妨害をしている犯人を見つけたから確認しに来てほしいというので、私の部下のヘイゲルにずっと同行させていたんですよ」


アイデンリヒトがそう言うと、男の背後に急にヘイゲルとリンが現れた。


「なっ!?いつからそこに!?」


「あなたが路地裏で部下に指示を出しているところから拝見させていただいておりましたよ。アイゼンリヒト様。この男バルディスはマーティンと裏で密会し、取引しているところまでしかとこの目と耳で拝見いたしました」


バルディスの情報は昨日レイラが調査済みだったので。

リンは進化の時に習得していた気配断ちのスニークと隠密と言うスキルを駆使しヘイゲルを連れてバルディスを朝から尾行していたのだ。


「くっ!」


完全不可視化だとぉ!?

それも自身以外にまで影響を及ぼすほどの能力なんて聞いたこともねぇぞ!!

シーフの俺が気配すら探知できない隠密能力なんてあり得るのか!??



「その腕だと縄もかけられなくて不便よね?。レイラさん、いいかしら?」


「ええ。今もってくるわ」


ナターシャが声をかけるとレイラは店からポーションを持ち出してきた。

そしてそれをバルディスの腕に振りかけるとたちまち切断されたはずの腕が完治した。


「はっ!?俺の腕が……!?」


切り落とされたはずの腕が治癒していく様子を見て民衆はざわついていた。



最後に追い打ちをかけるかのように、群がっていた野次馬に聞こえるような声でアイデンリヒトが驚いて見せた。


「ミスリル製のナイフですら容易く切断した細剣。そして切り落とされた腕さえも完治させたポーション。どちらもここいらでは見ない一級品です。素晴らしいですね。是非我が家とも取引を願います」


「ええ。幻想郷 アルレンセスの商品は品質と性能に一切の偽りはございません。アイゼンリヒト様、今後ともごひいき願います」



「商業ギルドの闇との繋がりまで暴いていただきありがとうございます。それでは私はこれで」

ナターシャの耳元でそういうと、アイデンリヒトは馬車に乗って去って行った。

リンはヘイゲルと共にバルディスを牢へと連行するためについていった。



民衆は突然の騒動にざわついていた。



この機を逃すまいとロンド達は更に畳みかける。


「先ほど男のナイフを切り裂いた剣は俺が仕上げたものだ。もし興味があれば店の中を覗いていっちゃくれねぇか?受注生産も請け負ってるぜぃ?」


「おい、あれって名工ロンドじゃねぇか?最近店を閉めたってきいてたけど……。まさかこの店に雇われていたなんて」



「先ほど男の腕を治してみせたポーションは、キャトランの里で採れた最高級の薬草を元に作り出したハイポーションですわ。性能は先ほど見ての通り。もしよければおひとついかがですか?今なら開店サービスでお安くなってますよ♪」


「ハイポーションだってよ!?エクストラポーションじゃなくて!?あの性能でか!?」


「ちょっと、あの人って王都でも有名な薬師レイラさんじゃない?」



「最高級の薬草が取れる畑で作られた新鮮な果実や野菜も沢山ありますよ~♪実際のそれらの野菜を使って料理したものがこちらになります。無料で試食をお配りしておりますので良ければおひとついかがですかー♪」

ライラは試食品をテーブルに並べながら周囲で様子を伺っている人に向かって手を振った。


「これらの品が揃うのは我が店、幻想郷アルレンセスだけですよ♪皆様是非足を運んでくださいませ♪」

ユキの笑顔に、集まっていた男性の冒険者や民衆は完全に心を掴まれていた。



このバルディスを利用したデモンストレーションはたちまち話題を呼び、店で扱う商品の噂はすぐに広まって行った。

最初に広まっていた悪評のおかげで店の話は既に広まっていたので、この話は瞬く間に街中へと広まることとなった。


こうしてアイデンリヒトの協力もあり、マーティンの目論見を潰し、商品の宣伝も出来たので作戦は大成功だった。




※  ※  ※




商業ギルドではマーティンがバルディス捕縛の噂を聞きつけて逃げる準備をしていた。


「あら?マーティンさんどちらへ行かれるのでしょうか?」


「ひっ!?お前はナターシャ!?くそっ!」


マーティンは踵を返し、裏口から逃げようとするが扉の前に行くとそこにはリンが待ち構えていた。


「ここは通しませんわ」


「ひぃいいい!金ならやる!いくら欲しい!頼む見逃してくれ!!」

マーティンは土下座しながら泣いて詫びていた。



「わたしたちじゃなくてこの方に聞いてみたら?」

ナターシャがそういうと後ろからアイデンリヒトが現れた。


「ひっ!領主さま!?」


「……何か申し開きはあるかい?マーティン?」

流石のマーティンもアイデンリヒトの姿を見て諦めたようだ。

素直に罪を認めてお縄に着いた。


商業ギルドが気に食わない店舗を潰しながら開業費用を不正に集めていたことが発覚し、マーティンは更迭。

王都の商業ギルドから新たな人事があるまで代理としてレイラが商業ギルドの運営を任された。



妨害してきたバルディスをデモンストレーションとして利用し街頭宣伝に使ったことで、インパクトと話題性から噂が広まり一躍人気店となった。

こうして幻想郷アルレンセスの人気が上がるにつれ、幻想郷の噂はさらに広まることとなった。




※  ※  ※




深緑の都フォーレンシアのとある建物にて――


「キャトランの住む秘境で採れた作物を販売する商店がベルセリアのリーザスって街に出来たそうよ」


「へぇ。それは興味深いわね。シェリーはどう思う?」


「んー?私たちの身内がそこいるかもってことでしょう?エアリスはどう思うの?」


「私はもっと別の何か。そんな感じがするわね」


「なにそれ?」


「まぁ猫の感かしらね、ふふふ」


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