27話 最下層
洞窟に入ったマナリスの者たちを討伐し、ナターシャを正式に仲間として加えた一行はダンジョン10層の転送門の前に来ていた。
「アスタロトの話では、ダンジョンはその攻略難度によって10層、20層が最下層になっているらしいわ。このダンジョンがもし10層で終わるダンジョンならば転送先にダンジョンを守る者が待ち受けているはずよ」
「ダンジョンを守る者?」
ボスでもいるってことかな?
最下層にボスとか不思議なダンジョンシリーズでもあったなぁ。
「魔王領では既に2つのダンジョンをマナリスが攻略したらしいけど、別の幹部の部隊だから詳しくは私も知らないのよね」
「何が来たってハルトとルナとルシアが居たら楽勝だろ?」
ベンゼルが気楽に笑っている。
「あのなぁ。さっき説明したけど、俺が使える加護の力は今日はもう1回しかないんだってば。次死にかけになるやつが複数出たらどうしようもないんだからな?」
「その加護の力で倒しちまえばいいじゃねぇか」
なるほど。
そういう使い方は考えたことなかったな。
さっき自分とナターシャに能力を使ったときにイメージしたのは元の健康な体だったけど。
逆に、ボロボロの体をイメージして敵に使えば……?
いや、なんかそういうことに使うのは気が引けるし、そもそもそういうことはあまりイメージできないな……。
「と、とりあえずみんな気を抜かないようにな。んじゃ行くぞ」
全員転送門の上に乗り転送が開始された。
転送後辺りを見渡すと9層までのダンジョンの雰囲気と少し違っていた。
綺麗に装飾が施された壁や柱が立ち並ぶ清廉な大広間だった。
「ここが……。フロアボスの部屋……?にしては雰囲気が?」
「どこかの王族の城の中みたいね。アスタロトの城もこんな感じだったわ」
「ご主人様……。なんだかすごい雰囲気を感じます……」
「私も体がピリピリします」
ルナとルシアがどっちも警戒するレベルの何かがいるってことか?
皆がダンジョンの中と思えない部屋の様子に戸惑っていると、頭の中に直接話しかけてくる声が聞こえてきた。
『よくここまでたどり着きました。私の名はデメテル、賢者により豊穣の力を授かりし存在。ここがこのダンジョンの最下層です。私を倒せたなら賢者の盟約に従い貴方がたに力を授けましょう』
「賢者?盟約?」
ハルトが聞きなれない単語に戸惑っていると、目の前に女神のような神々しい姿の女性が現れた。
緑色の髪に純白のトーガのようなものを身にまとい、彼女のとてもこの世の者とは思えない姿に一同は一瞬目を奪われた。
『では、参ります』
デメテルはそういうと両手をこちらに向けた。
両手からは魔力を発しているのか、黄色い光が発せられた。
すると地面から大量の荊が生え、皆に襲い掛かる。
武器を持つ者は武器で茨を断ち切り、ルナやルシアは爪撃や溶解液で応戦した。
全員何とか荊を処理したり避けてはいるが、デメテルの茨による攻撃の物量はすさまじく、どれだけ掃ってもまたすぐに茨が地面から生えて襲い掛かって来ていた。
一同は完全に防戦一方でデメテルを攻撃する余裕はなかった。
「チッ!このダンジョンは魔法を使えないんじゃなかったのかよ!?こんなの反則だろうが!!」
「ベンゼル!文句を言う暇があったら手を動かせ!!少しでも気を抜くと絡めとられるぞ!!」
ケビンとベンゼルは戦闘能力が低いルッツを庇いながら荊を必死で処理している。
「どうやらこのフロアは魔法が使えるみたいね……。この中に火の魔法を使える人はいないのかしら?」
「俺がやる!全員一旦散れ!!フレイムアロー!!」
エラルドが炎で出来た矢を空中に3本生成し、茨に向けて一気に射出した。
炎の矢は茨に着弾すると一気に燃え広がり、周囲の茨をすべて炎で包んだ。
全て炎上したのを見て、ハルトはやったか?と思ったが、すぐに次の荊が襲い掛かってきた。
エラルドは苦い顔をしながら再び魔法を準備し、炎の矢を射出する。
「くそっ!こいつの魔力はそこなしか!?フレイムアロー!!」
エラルドが何とか荊を食い止めている間に何か手を打たないとこれじゃじり貧だ……。
ハルトはルシアの方を見て言い案が閃いた。
「エラルドさん!そのまま荊を食い止めておいてください!ルナ!ルシア!作戦がある耳を貸してくれ!」
「何だかわからないが早くしろ!こんな量の荊を相手にしてたら俺の魔力じゃすぐに限界が――」
話し終わる前に、エラルドの首筋にサキュバス化したナターシャが噛みついていた。
「なんだと……っ!貴様……!やはりマナリスの……!?」
エラルドは噛まれた首筋を手で抑えたまま膝をついてしまう。




