24話 裏の裏
ナターシャの案内で2時間ほどで7層まで到達できたがまだ魔族の気配はなかった。
軽装の装備と短い細剣の二刀流で鮮やかに出会う魔物を蹴散らしていくナターシャは流石リーザス1の冒険者と言った強さだった。
ハルトがそんなナターシャに質問をする。
「ナターシャさんはこのダンジョンをどこまで潜ったことがあるんですか?」
「んー?最近は小遣い稼ぎに5~7層まで潜って帰るくらいね。でも一度だけ9層まで……、行ったことがあるわよ」
終始明るかったナターシャが一瞬だけ暗い顔を見せた気がした。
「では9層までは魔族よりも早く進めるので追いつくチャンスは十分にありますね」
「そうね……」
エラルドがそんなナターシャの様子を見て目を細めていた。
7層を超えると出てくると魔物も上級冒険者でないと太刀打ちできないほど強力なものが現れ始めた。
サンドリザードにバジリスクといった状態異常攻撃を持っている敵。
更には、大きな角の生えた巨大な蟻、ホーンドアント等、エラルドが言うにはどれも冒険者の等級で言うとアダマントクラスの者が相手をするような魔物や魔獣だそうだ。
全員で隊列を組みながら周囲を警戒しつつ、エラルドとナターシャの助言で的確に敵の弱点を突きながら大きな問題もなく先に進んでいった。
そして、8層の通路でようやく魔族の痕跡を捕えることができた。
先に通った魔族が戦ったと思われる魔獣の死体だ。
ダンジョンは魔力で制御されており、死体は2~3時間もすればダンジョンに吸収されてしまうらしい。
低級の魔法生物であるスライムや、アンデッド系は討伐された瞬間体が消滅するが、この程度の階層までくるとそんな低級の魔物はいない。
この死体がまだここにあるということは、2~3時間以内に誰かがこの道を通ったということだ。
「近いぞ皆警戒を怠るな」
エラルドが皆の気を引き締めた。
そこから慎重に進むが9階層へ向かう転移門までに結局魔族とは出会わなかった。
「この先で待ち伏せている可能性もあるかもしれないな。どうする?」
「パーティを2組に分けてはどうでしょうか?」
「ほう?でもそれではこちらの戦力が分散されて危険じゃないか?」
「もし敵が待ち伏せしているのなら逃げ場のない通路での挟み撃ちを狙うはずです。そうなった場合は2組に分けていれば後方から敵の伏兵を討って退路を確保できる可能性があります」
これはとあるゲームで効率的に進むうちに身に着けた知識なんだけど、まさか役に立つとは……。
「なるほど。となれば先行チームは機動力に長けた方がいいな。罠の危険性は警戒してルッツ、ルナ、ルシア、そして俺だ。ハルト、ナターシャ、ケビンそしてティガーは後から転移門を通って追ってきてくれ」
「分かったわ~。よろしくねハルト君♪」
ハルトにナターシャが近づいたのでルナが再び警戒を強めた。
「ハルト様ぁ……!」
「大丈夫。俺もすぐ後を追いかけるから、ルナもルシアも何が待ち構えているか分からないから慎重にな」
「わかりました」
「うん。わかった」
「よし、んじゃ先行隊は行くぞ。門が使えるようになったらハルト達もすぐに追ってきてくれ」
「わかりました。気を付けてください」
こうしてエラルド達は先に9層に向かった。
門は一度使用すると数分間のインターバルが発生するらしく。4人が使用した後はすぐには使えない。
「ねぇルシアちゃんだっけ?あの子何者なの?」
「何者って言われても……、俺の大切な仲間です」
「仲間……ねぇ。ルナちゃんもそうだけど、あの二人の貴方を見る目、ただの仲間って雰囲気じゃないと思うけどね?ふふふ♪」
「おい、あんまり茶化すなよ。それとハルト君には手を出すなよ?」
「ケビンならいいってよ」
「そうは言ってねぇ!!ベンゼル!お前さっきからなぁ!」
「はいはーい。私も死にたくないからハルト君には手を出さないってば」
そう言いつつもナターシャはハルトを鋭い目つきで舐めるように眺めていた。
暫くして転移門が再び使えるようになったので4人も先行したエラルド達を急いで追いかけた。
9層に入り道を進んでいくと人影が見えた。
やはり先行した4人は魔族の待ち伏せに会っていた。
エラルド達の前に6人、背後に4人。
背後の敵さえ倒せば何とか退路は確保できそうだ。
「みんな!!大丈夫か!?」
ハルトが叫びながら4人の背後を固める魔族達に攻撃しようとしたその時、『ブスリ』と背後からハルトの背中に1本の剣が突き刺さった。
剣はハルトの体を貫き、胸を貫通し突き出していた。
剣が引き抜かれると、ハルトは血が流れ出る胸を苦しそうに押さえながらそのまま床に倒れ込んでしまった。
その様子を見て絶叫するルナ。
「いやあああ!!!ご主人様あああああ!」
そして強烈な殺気を放つルシア。
「許せない」




