21話 部隊編成
ハルトは冒険者ギルドに向かう途中ロンドと今後について少し話し合った。
「ほんとにあの洞窟に行くのか?」
「ああ、もう行くしかないだろう。それに何でもくれるって言ってたしな~」
「ほんとに大丈夫なのかよ……。旦那たち基礎能力は化物みたいに高いけど、戦いはてんで素人なんだろう?」
「だから行くってものあるかな。洞窟には魔物も出るんだろう?いい練習になると思ってね」
「はぁ、まぁいいが気を付けてくれよ。おらぁ流石に戦闘は無理だから留守番しとくぞ」
「ああ、こいつをロンドに渡しておくよ」
ハルトはプルフラからもらったコネクトオーブをロンドに渡した。
「なんだこの石?……ん?微かにだが魔力を感じるな。魔道具か?」
「流石職人。これは遠隔で連絡を出来る魔道具らしいんだ。俺らが洞窟にもぐってる間にもしプルフラさんから連絡があれば聞いておいて欲しい」
「何だかわからねぇけど話を聞いとけばいいんだな。任せとけ」
「それと、料理人と畜産家の手配も頼みたいんだけどいいかな?」
「うーん。それは街に来てもらえるやつをってことだよな?街のことを話しても信じてもらえんだろうが……。一応探して見とくよ」
「まかせたぞ」
話をしながら歩いていると冒険者ギルド前に到着した。
冒険者ギルドへ入ろうとすると中から大声が聞こえてくる。
何の騒ぎか気になりつつも扉を開けると、そこには剣を構えたベンゼルとケビン、その後ろにマーレが立っていた。
「これは一体どういう状況なんだ?」
ハルトが問いかけるとベンゼルが大きな声で叫んだ。
「そいつは裏切り者だ!!俺は見たんだ!マーレが怪しい奴らと会話しているところをなっ!!魔族を招き入れたのはそいつだ!!」
ハルト達はそれを聞いて驚いた。
ケビンはマーレがそんなことするはずがないと擁護している。
「二人とも剣をおさめ――」
ハルトがそう言いかけたところでギルマスが二人の間に飛び込み二人の首に剣をつきつけた。
「ギルド内での決闘は……ルール違反だぞ?」
ギルマスの圧に押され二人は剣を納めた。
うわ~。あの人めっちゃ強いじゃん。
この二人って上級冒険者だよね?
その二人を圧倒するってギルマスが現役の時いったいどれほど強かったんだ?
「丁度ハルト達も来たみたいだな。お前ら俺の部屋にこい」
ライナスの部屋に入り全員でテーブルを囲んだ。
部屋には先に来ていたルッツ達のチームとレイラともう一人知らないエルフが既に待機していた。
ベンゼルはマーレをまだ疑っておるらしくソファーの脇に立ったまま睨みを利かせている。
「みんな揃ってるな?では単刀直入に言う。お前ら全員で退魔の洞窟へ向かってもらう」
事情を知っているハルト達以外の冒険者はそれを聞いて驚いた。
「ギルマス!いくら何でもあの洞窟の攻略をこの人数ではさすがに……!」
ケビンはライナスにいくらなんでも無謀だと意見する。
「こいつも一緒にか!?俺は怪しい奴と行動するのはごめんだぜ!他にも知らない顔もいるじゃないか!?」
ベンゼルはマーレを指さし更にエルフとルシアの方を見て言った。
「ベンゼル。ここにいる奴らはこの街で最も戦闘に長けていると思われるメンバーだ。……一人だけ俺も知らん奴がいるようだが、まぁいい。黙って聞け」
ベンゼルはライナスの睨みで口を閉じた。
「今朝領主様からダンジョンに魔族が侵入したらしいと報告が入った。そこで冒険者ギルドもダンジョンの調査協力を要請されたんでお前らに集まってもらった。魔族の狙いはまだわからねぇが、それを探るのと、可能であれば魔族の討伐をお前らに頼みたい」
「ちょっといいかしら?」
レイラが手をあげて質問を始めた。
「ああ、なんだ?」
「私は入ったことがないのだけど、退魔の洞窟の内部では魔法を使えないと聞いているわよ?魔法に特化した私やマーレさんまで召集されたのは何故かしら?悪いけど役に立てるとは思えないのだけれど?」
「お前らにはルッツのチームと共に洞窟の入り口で出てくる魔物を殲滅と魔族の出入りが無いか監視と警戒をしていてもらいたい。街の衛兵は昨日の魔族の襲撃で半数以上がまともに戦えない状態だそうだ。動けるものは街の護衛にあたらせるからダンジョンの方をギルドに任せたいと言われている。仕事が片付いたら俺もそこに合流する予定だ」
「なるほど。それなら問題ありませんね」
「他に質問があるやつはいるか?」
エルフの男が手を挙げた。
「俺はダンジョンに向かうのは構わないが一人で動かせてくれ。実力も素性も知れない者たちに危険なダンジョンの中で背中を預けることはできないんでな。先ほど仲間割れをしているようにも見えた。そんな奴らと組むのは御免被る」
ベンゼルを横目でみながらエルフの男はそう言い切った。
「てめぇ!それは俺のことか!?」
「他に誰がいる?」
「てめぇが何者なのか知らねぇが、ダンジョンに1人で挑むだと?調子に乗るのも大概に――」
「ベンゼル。そいつはたまたま王都から商人隊の護衛依頼で来ていたマーキュリー等級の冒険者だ。実力は俺が保証する。だがエラルド、一人であの洞窟で行動するのは流石に危険すぎる。こいつらの実力と素性は俺が保証する。信用してやってくれ」
「ライナスさんがそこまで言うのなら一応信用はしましょう。ですが、実力不足だと私が感じたときは切り捨てて私一人でも任務を遂行します」
「ああ、それでもかまわない。全員内部では各自状況判断して行動してほしい」
「マーキュリー等級だと……?くっ!!」
「ルッツ!罠の探知にお前だけは内部に入ってもらいたいんだが行けるか?」
「……正直このメンバーの中では俺は実力不足。ですが罠探知だけなら任せてください。役に立てると思います」
「ほう。そこのティガーより余程自分の実力をわきまえてるな、お前の方が優秀そうだ」
「てめぇ!!」
「エラルド!ベンゼル!話を続けさせてくれるか……?」
ライナスの一喝で二人は静まった。
「最後に。この任務のリーダーをハルト、お前に任命する」
「は?……俺ですか?」
ハルトは自分を指さし驚いていたが、全員意外と驚いていなかった。
「まぁ妥当だろうな」
ケビンはハルトをリーダーに認めた。
「気に入らねぇがそこのエルフがリーダーになるよりましだ!」
「俺は誰がリーダーだろうとかまわない。ただし理にかなわない指示には従うつもりはない」
「ハルト様がリーダーなのは当然です」
ルナとルシアは何故が自慢げな様子で喜んでいた。
「皆依存は無いようだな?ではハルト、皆を頼んだぞ」
「はぁ……わかりました。全員必ず無事に連れて帰ります」
断れる雰囲気じゃないししょうがない。
ケビンさんが居ることだけが救いだなぁ。
でも一触即発のエラルドとベンゼルと一緒なのは辛いな……。
「なぁそれで……お前の横にいるその少女は誰だ?」
ライナスがルシアを見て尋ねた。
「この子は俺の新しい仲間です」
「昨日言ってた登録させたい仲間の一人ってことか。何だか底知れない力を感じるんだが……。マーレ鑑定してみろ」
「わかった」
そう言うとマーレはすぐに鑑定を始めた。
直後マーレの顔が引きつった。
「……!」
「マーレ!どうした!?」
「ルシアさんは悪い存在じゃない。でも今見た内容は誰にも言えない」
何この子のユニークスキルの量……。
それに溶解液ってスライムのスキルじゃ……。
ありえない……。
そしてこのエクストラスキルの《メタモルフォーゼ》と《魔王覇気》ってスキル何!?
魔王は今この世界にはたった6人しかいないはず。
この子は私の知らない魔王だとでもいうの……!?
「スキルなどの情報は言えない……。けど一つだけ言うなら……。この子、ルシアさんはここにいる誰よりも強いかも知れない」
『!?』
それを聞いてハルトも含め全員が驚いた。
ルナだけは喜んでいた。
「ルシアちゃん一番強いってよ♪やったね♪」
「わーい」
よくわかっていないルシアはそんなルナとハイタッチしていた。
「……まぁいい。悪人じゃなければ問題はない。後程カードを作らせるから行く前に受け取っておいてくれ。今日は色々準備もあるだろうからここらで一度解散して、明日の朝にギルド前に集合してくれ。ポーション類はある程度ギルドで用意しておいてそこで配布する。んじゃ頼んだぞお前ら!」




