20話 ダンジョンの存在
翌朝。
ロンドが慌てて部屋を訪ねてきた。
「旦那!起きてくれ!」
ハルトはロンドの声で目を覚ます。
いつものごとくルナとルシアはハルトに引っ付いて寝ている。
ハルトは二人に気が付いて苦笑いをし、ロンドはその様子を見て少し冷たい目を向けたが、もう見慣れたといった感じでため息を付いて要件を話し始めた。
「はぁ……。3人とも早く起きてくれ!!宿の外に客が来てるぞ!」
せかされるように支度をし、ロンドに連れられて宿の入口に向かうと、そこには執事と思わしき老齢の人が立っていた。
老人はハルト達を見ると会釈をし、声をかけてきた。
「おはようございます。ハルト様ですね。お待ちしておりました」
「おはようございます。あなたは……?」
「私はリーザス領主様からあなた方をお迎えに向かうように命じられたヘンゲルと申します」
「え?領主様から?何で!?」
「昨日の事件で凶悪な魔族を打ち取ったのが屋敷の衛兵の間でも噂になっております。この辺りでは珍しいキャトランと行動している黒髪の冒険者だと。そこで領主様がどんな人物か直接会って話がしたいということで私がお迎えに上がりました次第です」
「今すぐですか?」
うーん。
これからギルドによってルシアのカードを作ろうと思っていたんだけどなぁ。
買い物もしたかったのに。
「さほどお時間は取らせませんのでご同行願えないでしょうか?」
「……わかりました。この三人も一緒にいいかな?」
「名工ロンド様と最強種キャトランの冒険者ルナ様、それと青髪の少女……?この辺りでは見かけない身なりの少女ですが、ハルト様のお仲間の方でしたら問題はありません」
こうして馬車に乗せられてハルト達は領主の屋敷に連れていかれた。
昨日広場から見た屋敷は遠目から見てもその大きさを感じたが、近くで見るとかなりデカい。
セバスたちの住んでる屋敷もかなりの大きさだけどそれ以上だ。
部屋数はセバスたちの屋敷の倍はあるんじゃないか?
掃除とか大変そうだな……。
ハルトはそんなことを考えつつヘンゲルの後ろをついていくと屋敷の玄関に到着した。
ヘンゲルが扉を開けると兎の耳を生やしたメイドらしき者がハルトたちを出迎えてくれた。
「私はこの屋敷で雇われているメイドのライラと申します。ようこそお越しくださいましたハルト様御一行殿。それではお部屋まで案内いたしますのでこちらへどうぞ」
ライラのあとについていくと、大きな両開きの扉の部屋の前に到着した。
「こちらになります」
ライラは軽く会釈をしながらそう言うと、「コンコンッ」と扉をノックした。
「アイデンリヒト様、お客人方を連れてまいりました」
ライラの声に応え、部屋の中から男の声がする。
「入りたまえ」
「失礼します」
ライラが扉を開け、皆を部屋の中に案内する。
「よく来てくれた。急な呼び出しをすまない。私はこの街の領主をしているアイデンリヒトだ」
そういう男は金色の長い髪に緑色の瞳、そしてとがった耳。それはファンタジー世界の知識で知るところのエルフ族そのものだった。
初めて見るエルフ族に戸惑っていたハルトだったが、そんなハルトの様子を伺うようなアイデンリヒトの視線に気が付き、挨拶をした。
「私はハルト、こちらはルナ、ロンド、ルシアです」
ハルトが順に紹介し、皆軽く頭を下げていく。
「そうかしこまらなくていいよ。先ほどの反応。君はエルフ族を見るのは初めてのようだね」
「はい。人以外の種族にはあまり縁がなかったものでして……」
「ふむ、君は余程田舎から出てきたのかな?」
「ははは……まぁそんなところです」
「まぁいい。今日君達に来てもらったのは昨日の件の礼もあるが、一つ頼みたいことがあるからなんだ」
「頼みたいことというのは?街を守ってくれとか言われてもさすがに無理ですよ?」
「ははは。そんなことは兵士や冒険者に依頼するよ。君たちの力を見込んでもっと別に頼みたいことがあるのさ」
つい先ほどまで笑顔を見せていたアイデンリヒトは真面目なの目つきをして言葉を続けた。
「この街の近くにあるダンジョンの攻略に挑戦してもらえないだろうか?」
「領主様!!流石にあそこは……!」
「流石名工ロンド。あのダンジョンについても知っていたか」
ロンドはダンジョンの話を聞いてから冷や汗を流していた。
その様子からかなり危険な場所なのだろうという予測をしつつもハルトはロンドに質問をする。
「ロンド?ダンジョンって?」
「ダンジョンってのは遺跡や古代に残された迷宮に魔素が溜まって魔物や魔獣が発生するようになった場所のことだ。世界各地に点在するから大昔の賢者様が作ったという噂もある。だがそのどれもが攻略できずに今は大きな都市や国で管理し、魔物が外に出ないようにするのが精いっぱいって話だ。このリーザスの近くのダンジョンと言うと退魔の洞窟……」
「そう、この街の北側にある退魔の洞窟だ。現在はこの街の衛兵を派遣して管理しているんだが、昨日この街が魔族に攻撃された際にその洞窟の警備にあたっていた者たちも何者かに攻撃を受けてね。生き残った兵の話では黒いローブを纏った者たちに襲われたという話だ」
「!?」
ということはマナリスの奴らの目的はこの街を落とすことじゃなく、街に警備の手と意識が集中している間にダンジョンに潜入すること……?
何のために?
「そのダンジョンというのは中に何があるのですか?」
「かなり古い情報になるので確証はないが、ダンジョンを踏破せし者はこの世界を導く特別な力を得ることができると言い伝えられている。現在この国で確認されているダンジョンは全部で7つ。そのうちの1つが退魔の洞窟です」
「しかしあの洞窟はその名の通り内部では魔法はもちろん、魔法の武具やアイテムも使えないって聞きますが?」
「そう。ロンドの言う通りです。それゆえ確認されているダンジョンの中でも最高難度と言われている」
そんなとこに行けってことか……。
まぁ俺とルナは元々魔法が使えないからあまり影響なないか?
だけどダンジョンって言ったら罠とか盛りだくさんだよな……。
いくらこの世界の人よりも俺達の能力が高いといっても、情報がほとんどない未知のダンジョンってのは流石にきびしいな。
でもまぁプルフラさん達とも協力するって話したしな。
マナリスの動向を調べるのは必須か。
うーん……。
つまりアイデンリヒトさんも魔族、いやマナリスの動向と目的が気になるから調べて欲しいってことだよなぁ。
「何故魔族が街に陽動をかけてまでダンジョンに入ったのかを俺達に調べて欲しい。ということですね?」
「そういうことだ。話が早くて助かるよ」
「その頼みを聞いて俺達に何のメリットがあるのでしょうか?」
「そうだね。君たちはロンド以外はこの街の住民でもないそうだし、この街にそこまで尽くす必要も義務も本来はない。なので、もしダンジョンで魔族の討伐を完了、もしくは魔族の狙いを聞き出すことが出来れば。その働きの対価として、私にできることであればなんでも要望に応えよう」
「なんでも、ですか?」
「ああ、金でも土地でも高価な魔道具や武具でも私が出来る範囲なら何でもだ。どうです?何か要望はありますか?」
「そうですね……。今はまだ思いつかないですね」
「達成してからでも構わないよ。それで……この話、受けてもらえると思っていいのかな?」
「既に魔族はダンジョンに入った可能性が高いんですよね?それなら迷ってる時間はないでしょう。その話受けますよ」
「ありがとう。冒険者ギルドにも協力を打診してあるからダンジョンに向かう前に一度寄っていってほしい」
「わかりました」
こうしてハルト達は領主の依頼で退魔の洞窟と呼ばれるダンジョンに挑むこと




