41弾丸と正義
【ジャスト視点】
スターシャといったか、分断されてからずいぶん焦っているな。
剣筋が荒い。
「どいてよ!」
「俺の役目はお前を止めること、聞けない相談だな」
前回の戦いは俺の魔力拒絶が妨害されたことで戦術が崩れた。
妨害前提で戦術を組めばどうとでもなる。
矢のような速度で繰り出される剣戟をいなし、距離をとって新武器で応戦する。
大剣を手放した俺が握った新たな武器は飛び道具。
ハルクのアイデアで鉱石の筒から鉱石の弾を射出するものだ。
弾にこめた魔力を瞬間的に拒絶することで稲妻のような速さと轟音で敵を襲う。
「あたしの反転が効かないっ!」
連続で狙い撃つことで間合いがひらいていく。
完璧にハマったようだな。
もはや短剣ひとつでどうこうできる状態じゃない。
「スターシャよ、お前は勇者こそが正義だと言ったな」
「だからなに?」
「俺は弱きを助け悪しきを挫き正義を行ってきたつもりだった。だが力の前にはなんの役にもたたなかった」
「そうよ、ニューインズくんは最強。ニューインズくんに任せておけば人類は救われる。つまり行動はすべて正義なの。わかる?」
偏った考えだ。
端的にいえば勇者に支配されろと。
思考と自由をすて命をひろえというのだ
とても正気の沙汰ではない。
だが彼女は本気だ。
「成した行動でも結果でもなく、勝者が正義として扱われると身に染みた。ならば勝って正義を名乗らせてもらうことにしよう」
「反転を破ったのは褒めてあげる。でもねあたしはニューインズくんの複製体。あんたごときが勝てるわけないのよ」
通りで身体能力が高いわけだ。
しかし完全に抑え込んでいる状況でなにができる?
万全を期してふたつ目の武器を取り出す。
魔力をおびた鎖。
内包する魔力に呼応して動力が発生する。
魔力拒絶によって内包量を調整することで意のままに動く手となる。
近寄れば鎖の餌食、離れると鉱石弾。
俺に死角はない。
スターシャは大きく息を吐き俺に視線をもどす。
「撃ってみなよ」
「言われるまでもない」
狙いをさだめ躊躇いなく放つ。
しかし当たらない。
放つ瞬間にスターシャが移動したからだ。
即座に次弾を放つ。
放つ。
放つ。
当たらない。
発射口の向きから推測しているのか?
それにしては……。
「はやい?」
散歩でもするように近づくスターシャは短剣を胸の前で構える。
後退しながら撃ちつづけるがことごとく闇の彼方へと消え去ってしまう。
「むだってわからない?」
踵が下がらない。
追い詰められた。
至近距離だと言うのに依然として被弾はない。
「さよなら。つまらなかったよ」
短剣は抵抗をうけず俺の胸を貫いた。
「これで躱せまい」
「あんたわざとっ! くっ!」
慌てて飛び退こうとするが遅い。
背中からのびでた鎖は金属音をならして俺とスターシャを包み込む。
「こんなもの反転でっ!」
「技能を無効化しているのはこの短剣だろ。簡単には返さんぞ」
スターシャからの答えはないが奥歯を食い縛る表情が肯定している。
やはりそうか。
短剣は俺の胸にささったまま。
鎖で逃げ場はない。
「正義は必ず勝つ」
洞窟に破裂音と断末魔が響きわたる。
ハルクを助けに言ってやりたいが動けそうもない。
胸に受けた刃が許してくれない。
洞窟が大きく揺れる。
気をつけろ。勇者は未来をみている。
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