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33陰謀と協力

【奴隷商ヤン視点】


 今日もハルクを探してやかましい街を練り歩く。



「ハルクめ、必ず見つけ出して報いを受けさせてやるぞな」



 もちろん自分の足では歩いていない。

 奴隷たちに馬車をひかせている。


 一時全ての金を失ったが息子を売った金で再起はたした。

 それもこれも全てはハルクのせい、ワシはまだハルクへの呪いを忘れていない。



 そんなある日。

 馬車の動きがとまった。



「誰が止まっていいと言ったぞな! 歩くこともできんクズどもが!」



 愛用の鞭で奴隷をしつけると馬車が揺れる。



「ゆらすな!」

「す、すみません。チラシが飛んできたので」

「言い訳をするなぁ!」

「すみません!!」



 肌がみえるところ全てにミミズ腫れをつくった奴隷が馬車を持ち直す。



「そのチラシを寄越すぞな!」



 手を伸ばし引ったくるようにチラシを奪う。



「なっ」



 チラシの内容は広告だった。

 『心理士ハルク~あなたのお悩み解決します~』

 なんの捻りもない広告文に才能のなさを感じとったがそれどころではない。


 ハルク?


 ハルクだと!?



「おい! 今すぐここへ迎え!」

「え?」

「いいから黙って迎え!」

「心理士はすぐ目の前ですが……」



 奴隷にいわれ正面を見ると確かにあった。

 『心理士ハルク』


 客は長蛇の列をなし、金の匂いがぷんぷんする。

 おもわず馬車から降りて立ちつくしてしまう。



「まさか奴隷ごときがワシより稼いでいるぞな?」



 ありえんぞな!

 ゆるさんぞな!

 金をもっていては簡単に復讐できない!

 どうする? どうすればハルクを……。


 唇から滴る血が地につくまえに誰かに肩をポンとつかまれた。



「あんたも心理士に用があるのか?」



 だれだこの童顔金髪は。

 マントなんて羽織って勇者きどりの痛いやつか?



「気安く話しかけるでないぞな。平民が」

「鬼みたいな顔で睨んでいたけど、心理士にうらみがあるなら手助けしてあげるよ。金なら腐るほどあるからね」

「へ、平民にそんな……」



 マントの男は人目を憚るようにパンパンに膨れた小さな袋を渡してきた。

 訝しげに男を一瞥し、中を覗くと白金に輝く硬貨がつまっている。

 本物ぞな。



「どうだ。もっとほしいか?」

「ほしい、やつに鉄槌をくだせるのならどんなことでもやる。もっと金をくれっ!」

「ははっ、心理士を始末してくれるならそれでいいよ」



 僥倖! 渡りに船!

 ついに運がまわってきたぞな!



「お名前をちょうだいしても?」

「俺を知らないとは珍しいな。ニューインズ、勇者ニューインズだ」

「なぜ……」

「おっと、余計な詮索はやめてもらおうか。もし俺のことを口外すれば……わかるよな」



 柔らかく微笑む表情から発せられたとは思えない冷たい声。

 こいつは勇者なんかじゃないぞな。

 他人のために命を懸けるような愚か者ではない。

 いつか必ず人類の敵となる、そんな予感に確信をいだけるほどの危うさを感じる。


 本来なら関わるべきではない。

 しかし復讐の炎はそんな警戒心すらも燃やしつくす。



「わかったぞな、ハルクは必ず消す。だからもっと金を」

「こいつをやる」



 ニューインズが取り出したのは一枚のカード。



「白金貨1000枚分入っている」

「それだけあれば好きなだけハルクをいたぶれるぞな!」

「必ず殺せよ」



 さり際にみたニューインズの顔はとても勇者とは思えないほどにゆがみ狂気に満ちていた。

 上等ぞな。

 その狂気、ワシが飼い慣らしてみせるぞな。


面白くなりそう!

更新頑張れ!


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