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31/44

31灰


 黒い感情しか読み取れない『感情把握』をオフにするとようやく姿を視認できた。

 体調は2メートル程度の人間――――ドンクだ。


 目の白い部分が黒くなり、肌は毒々しい紫色に染まっているが間違いない。



「俺はディーナーとなった。いや薬の配合を変えた今、もはや別の存在! 今ならニューインズ様とも対等になれる気すら覚えるわ!」



 鋼鉄の肌をもつディーナーを食ったドンクの身体がひとまわり大きくなる。



「成功だ。俺は食事によって力を取り込む完全無欠の存在へと進化したのだ! 人類掌握の時は近い! ハハハハハハハハ!」



 僕の身体が意図せず後退する。

 さっきから汗もとまらない。



「オイオイ、逃げられると思っているのか?」

「ああ思っているよっ!」



 踵を返し距離をとる。

 なにも考えず、ただ怯え逃げる小動物のように。



「興醒めだな」



 突如眼前に現れるドンク。

 速い。だが!


 そうくると思っていたよ。

 知能があるのならそれを利用すればいい。

 あらかじめ仕掛けておいた2つの魔石に糸経由で魔力を注ぎ込む。



「あの世で師匠にかかわるなよ」



 爆破。


 耳を裂くほどの轟音と閃光に包まれるダンジョン。

 僕も爆風に吹き飛ばされ地面を転がる。



「どうだ僕のとっておきは」



 そう最後の2つはただの魔石じゃない。

 純度の高い魔牢石だ。

 威力はざっとみて2倍。

 破裂方向以外にもダメージを及ぼすのは問題だが切り札として申し分ない威力だ。



「お前いったいなにもんだ?」



 疑問の声に背筋が凍る。

 なぜ、生きているんだ。



「ディーナーを越えた俺に傷をつけられる冒険者はそういないはずだ」



 そういって指さした先には浅く小さな傷がある。



「嘘……だろ。最大化力だぞ」

「まあお前を取り込めばわかる話か」



 気づいたときにはドンクの手が僕の首をつかんでいた。

 『すりぬけ』でなんとか逃げる。しかし――――



「面倒な技能だが、永久につかえるハズもない」



 そう結論付けたドンクは間髪いれずに僕への攻撃を続ける。

 そう、一日につかえるのは約一分。

 残った時間でこの場から逃げるしかない。


 できるだけ壁の中を進み追跡を妨害する。

 しかし、いにも介さずダンジョンの壁を破壊し僕にぴったり張り付くドンク。


 そして無慈悲にも『すりぬけ』の効果時間が終わった。

 同時に避けようのない攻撃が僕を襲い、左腕が血しぶきをあげて跳んだ。



「い"っ!」

「お、時間切れか。意外に短かったな」



 つまらなさそうに声のトーンを落としたドンクは容赦なく僕の右腕も破壊してみせた。


 目で追うこともできない。

 僕は殺されるのか?

 師匠の仇もとれずに?


 絶対にダメだ。

 まだなにか手があるはずだもっと柔軟に考えろ。



「なすすべもないって感じだな? せっかく俺の力を知るいい機会だと思ったのに拍子抜けだ」

「……殺すまえに教えてよ。勇者ニューインズはディーナーと何か関係あるの?」

「死ぬまえにそんなことをきいてどうする?」

「ただの好奇心だよ」

「まあいいか。好奇心は重要だからな」



 ただ時間がほしくて質問をとばしたが存外うまくいったようだ。



「研究所を追い出された俺に声をかけてくださったんだ。『君の才能は凡人にはわからない。俺のために薬を作らないか』ってな!」



 恍惚と頬を染めるドンクの話はとまらない。



「彼が求めた世界の改変に震えた。そう彼は神になるつもりなんだ! よって俺は神の使いだ!!」

「世界の改変って?」

「勇者が存在する前の世界に戻すんだ。魔物がひしめき人間が重圧を受ける世界に! 俺を理解しない人間なんて必要ないんだ!」



 両腕を広げ天井をあおぎみるドンクの手は震えている。

 展開された謎理論に全身の力が抜ける。



「そんなことのために師匠は殺されたっていうのか」

「そんなことだと? 俺を理解しないなら今すぐ死ねぇええ!!」



 目にもとまらぬ速さで繰り出された拳は僕を完全に捉えた――――と思っているだろう。



「な、なんだこれは!」



 拳が捉えた『僕』はまとわりつくように形を変えまとわりついた。

 目を見開くドンクが引き剥がそうと手を触れると『僕』はさらに貼り付く。



「くそっ! とれない!」



 剥がそうと暴れるほどに『僕』はひろがる。

 やがてドンクの全身を覆いつくした僕は作戦の成功を確信する。


 もちろん今ドンクまとわりついている『僕』は僕じゃない。

 モチのように性質を変化させた僕の魔力だ。



「たぶん力じゃどうにもならないよ。のびて貼り付くだけだ」

「身動きが、とれないっ」



 全身をおおった魔力は赤くかがやき始める。

 そう爆発寸前の魔石と同じように。


 僕の全魔力を滝のようにそそぐ。


 帰路のことは考えない。

 いまは全力で倒すことだけに集中する。



「終わりだ」

「まさかっ! 爆っ――――ニューインズさまぁあああ!!」



 僕のひと言を合図にダンジョン内は轟音と閃光に包まれる。


 なにも聞こえないしなにも見えない。


 しばらくしてまだ痛い耳を押さえながら立ち上がるとドンクの消滅を確認した。 

 そりゃそうだ。ただの魔石爆弾とはわけがちがう。

 爆風は全て内側に向くよう設計し、力の逃げ場はほとんどない。

 閃光のなかで延々と続く爆発にのまれたのなら身体は消し炭と化しているハズだ。



「師匠。仇はとったよ」



 膝を折りたおれこんだ僕にもう立つ力も残ってはいない。

 毎度こんな体たらくじゃいつか死ぬ。もっと強くならないと。

 そう決意して目蓋を閉じようとした時。


 爆発の中心地だった部分に残った灰が音をなして動いた。



「神の……使いが、死ぬものか」

「まだ、死なないのか」



 風が吹けば崩れてしまいそうな弱々しさで僕に近づいてくる。

 一歩進むたびに身体が崩れ落ちるが確かに生きている。

 このままじゃ殺される。


 一歩も動けない。

 魔力も残っていない。


 万事休す。


 死の淵で聞いたのは聞きなれた声だった。



「あーしのハルクにさわってんじゃねぇええ!!」


面白くなりそう!

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