28複業と開業
職業鑑定所。
太い柱が等間隔にならび、汚れひとつない柱たちが鏡のように僕の顔をうつしている。
「かなり金をかけてるな」
「人生決まっちゃうからねー」
あまりの広さと綺麗さに下世話な想像を口にする。
柱が地下に伸びているように錯覚するほど鮮明に柱をうつしだす床を鳴らしながら受付へ向かう。
簡単な手続きをすませると水晶の間へ案内された。
部屋の真ん中には直径3メートルほどの水晶が鎮座し、鑑定を待つものたちがぐるりと囲んでいる。
目の前にたつと透き通る水晶にポツポツとみえる灰色の不純物が目立つ。
「はぁ」
気は進まないが文句をいったから終わるわけでもない。
僕はしぶしぶ水晶へ手をかざす。
水晶の中の不純物がゆっくりと動き出し、集まり、形を作りだした。
不純物はやがて文字となり僕へ現実を突きつける。
「これは……いったい」
僕の眼前には「無職」の文字――――だけではない。
「心理士」
「逃亡者」
「魔力使い」
「ほらやっぱり職業あるじゃん!」
「いやもうあるないの問題じゃないよ」
冷静に考えたいのに心が躍る。
狂喜乱舞している。
心臓の音がうるさいので止めてやろうかと思うほどだ。
死ぬから止めないけど。
「おちつけ、おちつかないと」
「はい、ひっひっふー、ひっひっふー」
職業はひとりにひとつまでだ。
例外は聞いたことがない。
だが目の前の文字は常識を否定している。
「ねぇねぇ、どんな技能があるの?」
そうだ。義肢装具を身にまとう僕は身体能力向上の恩恵が少ない。
問題は技能だ。
試しに心理士の技能をつかってみると光があたったように世界の色がかわる。
「すごい……これが技能」
「なになに、どうなったの?」
リリをまっすぐに見つめると。
手に取るようにわかる。
10数種類だった色が数百に増えた感じだ。
「リリ、いま嬉しい反面、残念だとも思っているね? そう、僕の不完全さが失われたようでどうしたらいいか判断できないんだろ」
「まって心を? ちょっと覗かないでっ」
「でも心の奥底では答えがでているらしい」
不完全コレクションとしてみていた僕への感情が愛情に変わっている。
こそばゆいから口にはしないけど。
「なんかずるい。ハルクも教えてよあーしのことどう思ってるの?」
「いやいや今はそんな場合じゃない。他の技能も知りたいし活用方法も考えなきゃ」
じっと心を覗くように睨みつけるリリを尻目に水晶の間を飛び出す。
見せられない。今の僕は誰にでも心を読まれてしまうほど顔が赤くなっているだろうから。
◇◇◇
鑑定所で解散したあと、街の道端に箱と座布団そして看板を設置し待つこと2時間。
最初の獲物がかかったようだ。
「ようこそ。心理士ハルクへ」
「無料でお悩み解決ってかいてあったんだけどほんと?」
獲物は負のオーラを纏った小太り中年男性。
自信という自信を喪失して今日にでも死にそうな雰囲気だ。
「ほんとうです。占い師じゃない僕の力を疑っているようですね」
「そりゃまあ聞いたことないしね、心理士なんて」
「お悩みは……パワハラですよね」
図星をつかれて目を見開く男性。
「理不尽に怒鳴られ、やることなすこと全てにケチをつけられているんですね」
「こりゃ本物だ。そう、そうなんだ! 魔力を温存しろっていわれたから温存していたのに、『サボるな!ちゃんと援護しろ!』って、だから援護して魔力不足になると『温存しろっていっただろ!』って」
一気に話し出したな。溜め込んだストレスが爆発寸前って感じか。
「じゃあやめちゃえば?」
「そんなこと」
「――――したら家族が養えないって? 大丈夫。火魔法魔法使いは街でも仕事がある。風呂屋、鍛冶屋、料理屋、ギルドの訓練所。食っていくだけなら十分でしょ?」
押し黙る男性を躊躇させるのはプライド。
自分より若いリーダーに屈したという事実を受け入れたくないようだ。
「逃げたっていいじゃないか、プライドを捨てられたら自由だよ。あなたを縛っているのはあなただ」
「……そうか、そうだよな! ありがとう!」
「はいはい、お代はいらないからお店を宣伝してね」
そんなこんなで店を構えた僕はどんどん悩みを解決した。
大概の悩みはみんな答えがでている。
ただ認めたくない、見たくない、選びたくない。
そんな心のつっかえを指摘し外してあげるだけでいい。
一週間の無料期間が終わったあとも大繁盛。
ひっきりなしの客をどんどん捌いた。
2ヶ月間はトラブルもなく順調に稼ぎ、月の売り上げはだいたい白金貨5枚になった。
たちが悪いのは富裕層。
金をもっているくせに踏み倒してくるのだ。
『逆らったら明日の朝には店がないと思え』だってさ。いつか見返してやる。
脳内で思考を重ねていると見知った人物が駆け寄ってきた。
「繁盛してるねー」
「リリ! 久しぶり!」
リリは職業判明の日から『ハルクに見合う女になる』といってしばらく姿を消していたのだ。
「あーし結構つよくなったんだよ。だからまたダンジョンにいこ!」
「もうダンジョンはこりごりだよ。稼ぎ口も見つけたし正直もう危険をおかしたくないかな」
「お師匠さまが亡くなった原因がわかったとしても?」
面白くなりそう!
更新頑張れ!
と思った方は、画面下の☆☆☆☆☆からご評価ください!
最高の応援になります!
めちゃくちゃ嬉しいです!
ブックマークも大歓迎です!
ぐんぐんモチベーションあがります!
よろしくお願いします!




