表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/44

27失踪聖女と嘘


 言葉につまる僕をみて不思議そうに見つめるニューインズは短い金髪をゆらす。

 どうやら僕のことは覚えていないようだ。



「どうした?」

「リリを! こいつ毒を受けたんだ、助けてやってくれ!」

「へぇ」



 嬉しそう声をこぼすニューインズには打算の色か浮かんでいる。

 性根は変わっていないようだ。



「待って、先に対価を聞いておきたい」

「あ? それはこの女性から貰うことにするよ」

「金でもなんでも僕から支払う。僕からの依頼だからね」

「はぁ、めんどくせぇやつだな」



 丸い目が鋭いナイフのように形をかえ刺すような視線を僕にあびせる。



「つべこべ言うなら助ける話はなしだ。ふたりで勝手に死ねばいい」

「ぐっ」



 義肢装具をすべて失った僕は現状ニューインズの力を借りる以外の選択肢がない。

 かといって助けを求めれば何を要求されるのか知れたもんじゃない。



「さあどうする?」



 リリの状態は刻一刻をあらそう。

 迷っている時間はない。

 死ぬことはいつだってできるんだ、今は助けを求めよう。



「助け」

「――――おーい! 無事かー!」



 あきらめる瞬間。しゃがれた声がひびく、他の冒険者たちだ。



「ちっ、今のことは忘れろ。でないと殺すぞ」



 背筋が凍るほど冷たくいい放ったニューインズはもとの人畜無害顔にもどる。



「生存者をふたり見つけた。ここは俺に任せてくれ」

「流石にふたり抱えるとなると勇者のあんたでも大変だろう俺たちもつきあうぜ。あんたは魔物の警戒にあたってくれ」



 快活に言葉を飛ばすひげ面の冒険者たちは僕とリリを抱えあげる。



「あの対価は」

「そんなもんいらねぇよ。俺たちはギルドから金もらってんだからよ。なあ勇者様!」

「ああ、そうだね必要ない」



 言質はとったぞ。



「ありがとう。リリは毒を受けているんだ早めに頼む」

「任せとけ!」



 もう意識を保っているのが精一杯だった僕は安堵し、冒険者に担がれるなかゆっくりと意識を手放した。



 ◇◇◇



 再び手足を失って一週間がたったころ。

 僕はリリの部屋でリリとギルド員から見つめられている。

 新調した手足の動作を確認しているだけなんだが、どうも珍しいようだ。



「ちゃんと馴染んいでる、ありがとう。金は必ず返すから」

「いいって、ハルクがいなきゃ絶対死んでたし」



 気前のいいことをいうリリの顔色はすっかり血色が戻っている。

 しかし毒はかなり特殊だったらしく、あと数日は外出もできないようだ。



「それにしても毛むくじゃら魔物はなんだったの?」

「ちょうど調査結果がでたところです」



 リリの問いにギルド員が回答する。


 死後、4メートルの巨体は失踪したEランク冒険者たちの姿に変わっていたこと。

 巨大化などは薬物による影響であること。

 リリが受けた毒はEランク冒険者たちの体内からでた薬物と同種であったこと。



「ギルドでは何者かがEランク冒険者たちを魔物に変えたと見ています」

「どんな理由で?」

「そんなことは分かりません」

「犯人の目星はついているの?」

「いいえ……」



 肩をおとすギルド員は下唇を噛む。


 ほぼ何もわかっていない状態、つまり脅威はさっていない。

 もっと強くならないとな。



「ところでなんでリリは魔物にならなかったんだろう?」

「技能ですよね、リリ姉」

「んー、秘密」



 確信をもった強い目つきをギルド員がとばす。

 一方、リリは立てた人差し指を口もとにおき微かに笑う。

 どうやら元貴族といっていたけど公にはしていないようだ。



「失踪聖女」



 ギルド員の一言にリリの心が反応した。

 図星の色。



「聖女の技能のひとつに強い毒耐性があったはずです。リリ姉は3年前に失踪した聖女――フォルコ・アデリナなんでしょ?」

「そんな人しらなーい。あーしはただのリリ、不完全で自由な冒険者よ」



 姿を変貌させるような劇薬に耐えきるなんて、聖女レベルの耐性がないと不可能だという口振りだがリリは否定する。

 そういうことなら乗ってあげよう。



「僕の技能だよ」

「失礼ですがご職業は?」

「秘密さ。手の内を明かすようなことはしない」



 我ながら苦しい嘘だが、否定する根拠もないだろう。


 ギルド員は疑念の色を浮かべ、猛獣のような目で僕を睨みつける。



「……今はそういうことにしておきます」

「まーまー、そんなカリカリしないで」


「してません! では私はギルドに戻ります!」



 ぷんぷんと音が聞こえるほどに怒ったまま、ギルド員は部屋をでていった。



「ありがとね」

「で、やっぱり聖女なの?」

「そだよー」

「どうな技能なの?」

「聖域構成っていって結界をつくるの。化け物が横穴に入ってこれなかったでしょ?」

「あれはリリの技能だったのか。やっぱり職業は優秀だな」



 横穴でひと息つけなければ臨界点突破のアイデアは産まれなかっただろう。

 職業、なんとか後天的に手に入れられないだろうか。



「前もいったけどさ。ハルクほんとに無職なの?」

「ああ無職歴13年さ」

「そっかー、でもおかしいんだよね。Aランク冒険者が倒せなかった魔物を無職が倒せる道理はないんだよ」

「それはリリに魔力を鍛えてもらったから……」



 でなければ攻撃は避けきれないし、防御を突破できなかったと断言できる。



「確かに魔力で強くなってるよ? でもなーんか納得いかない。そうだ! 職業鑑定にいこっか!」

「いやだよ。試したいこともあるし、魔力のトレーニングを続けたい」

「まーまー、そういわずにちょっとだけ、ね! 魔力剤のお礼だと思って」



 ぐっ、金銭的補助を盾にされては従うしかない。



「わかったよ。無職を笑うがいいさ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ