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願いの橋  作者: Henmy-penmy
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願いの橋

 正面に、大きな地球儀がありました。これは、海をテーマとした世界で唯一のディズニーテーマパークであるディズニーシーのシンボルで、(ディズニーランドでいう、シンデレラ城のようなもの)これはアクアスフィアっていう名前なんだよと彼は教えてくれました。噴水により大きな地球儀が持ち上げられ(そのように見えました)表面に水が伝わり、冒険心をくすぐるようなBGMの中、ゆっくりと左から右へと回転していました。

 

 東京ディズニーシーは、当時7つのテーマポート(テーマを持った各エリアのこと)で成り立っており、訪れたお客(ゲスト)は、その世界を旅してくというテーマで造られており、冒険の象徴として、入口に地球儀があるのだそうです。風によって時々運ばれてくる水しぶきがとても心地よく、本当に海にやってきたような気持ちになりました。


アクアスフィアを過ぎると、目の前に大きな建物がありました。中央はトンネルのようになっていて、トンネルの両脇には、グッズやお菓子といった、様々なお店がありました。中は込み合っているようです。「こんにちは」と言って笑顔で手を振ってくれた、風船を持ったお姉さんとハイタッチをし、トンネルを通りぬけて、開けた場所に出ました。


「わあ、すごーい♡」

 

 そこに、イタリアのような街並みが広がっていました。そして、目の前には海があり、海の向こうには噴煙を上げている火山がそびえ立っていました。本当に異世界のようです。


私は思わず、彼の左腕にしがみ付きました。彼の顔は見ませんでしたが、ヒェっ!というどこから出ているかわからない声が聞こえてきました。


園内は、人のザワザワとした声、フニクリフニクラといったイタリアの曲、蒸気船の汽笛など、様々な音が交じり合い、この海の世界の魔法の効果を高めていました。


それはそうと、入場制限がかかっていた昼の時間は園外で待っていたため、小腹が空いていることに気が付きました。


 私たちは、さっそく軽食をとることにしました。トンネルを抜けてすぐ右奥手にある、マンマ・ビスコッティ―ズ・ベーカリーという名前のパン屋さんに行き、20分ほど並んでサンドイッチとドリンクを買いました。少々値段は張りましたが(園内のものは全体的に値段が高い気がします)、暑いパンに挟まれた暑いベーコンチーズが口のなかに広がり、私のお腹をまるで魔法のように満たしてくれました。


乗せてあげたいアトラクションがあるということなので、彼はマップを片手に、私を連れて行ってくれました。


 向かったのは、ヴェネチアン・ゴンドラというアトラクションでした。さっきいた開けた広場(ミッキー広場って言ううらしいです)から、建物の隙間に見える小道を通り、進んでいくとそれはありました。水の都ヴェネチアを再現した街並みとのことですが、私は本当にヴェネチアに来てしまったようにしか見えませんでした。水路に掛かるアーチ状の橋を越え、乗り場の島に入り、(40分くらいは待ったかな)ようやくゴンドラに乗り込むことができました。船の中心を囲むようにゲストが乗り込み、船頭(キャスト)さんの指示に従って座りました。詰めて座るため、彼はもちろん隣に座った男性の体も当たっていました。


 2人のキャストさん(船の前と後ろ)が大きなオールをこぎ、船はゆっくりと進み始めました。最初に、簡単なあいさつに使う、チャオという言葉を教わりました。すれ違う船や、水路の脇で歩いている人たちには、元気にあいさつをしましょうとのことです。ちょっと照れくさかったですが、なにせここは異世界。誰もが抵抗も感じていないようで、楽しそうにあいさつを交わしました。私も彼もいつのまにかそうしていました。水路にかかる大きな橋をくぐり抜けると、最初に見た海が再び現れました。海の上に来てしまった。今度は海からこのヨーロッパの街並みを見渡すことができました。ディズニーシーに来て最初にくぐったトンネルがある大きな建物は、よく見ると、一つにつながって港の両脇に広がっていることがわかりました。区画?ごとに色分けされていて、住居が密集しているように見せていたのです。さらには、壁を見ると絵が飛び出しているように見えます。だまし絵という美術の技法だとのことです。私はすっかりだまされました。

 

 そして彼は、この建物はホテルミラコスタって言って、本当に宿泊できるのだよと教えてくれました。私は、「えっ!そうなの!すごーい」とついはしゃいでしまい、乗客から一斉に視線を向けられてしまいました。恥ずかしくなってうつむいたのですが、キャストさんが「そう、冒険には驚きがいっぱいあるのです!」とすかさず声をかけてくれたため、雰囲気が一気に和みました。


海に突き出た人工島(リドアイル)をぐるりとまわりながら、島にいる人たちにチャオと言ってあいさつを交わしたあと、船は元の水路の方へ向かい始めました。


 キャストさんがこんなことを言いました。「今から、ポンテヴェッキオという橋の下をくぐって出航した島へ戻ります。実はこの橋は“願いの橋”と呼ばれていて、この橋の下をくぐりながらお願いごとをすると、それは叶うと言われているのです」


 願いが叶うなんて、なんて素敵なことなのでしょう。何にしようかしら。私はゆっくりとお願い事を考えました。



 「これから橋の下をくぐります。目をつむって、イタリアの歌を聴きながらゆっくりとお願いごとをしてください」


 そう言われ、船の乗客は全員目をつむりました。歌が聞こえてきます。これは、サンタルチアという歌かな。言葉は分からないけれど、故郷イタリアのことを歌ったものだったと思う。キャストさんの優しい歌声が橋の下のトンネル内で心地よく響き渡っています。彼の体が密着しています。彼は何を願っているのかしら。


 

私も自分の願いを、ゆっくりと、心の中で唱えました。


船は島へと戻りました。アリデヴェルチ(さようなら)という言葉をキャストさんと交わし、下船しました。キャストさんは私たちの方を見て、素敵な笑顔で手を振ってくれました。


 「何お願いごとしたの?」

私は彼に聞いてみました。彼は、少しうろたえて、しばらく口ごもったあと、やっぱり教えられないと照れ笑いをしました。


 「あそう。じゃあ、私も教えなーい」

目が合いました。お互いに微笑みました。また彼の方から手を取ってくれて、ヴェネチアの街をゆっくり歩きはじめました。


 途中、水路を移動するゴンドラのキャストさんとお客さんから、チャオとあいさつをされました。私たちは、笑顔でチャオと返しました。





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