ラノベのお約束、チートを使いたいんだってば
後は奉仕活動組と泉回復組に分かれて移動した。
やる気のないジュさんはコピペと同じ泉回復組だった。移動しながら、先生がジュに
「あなたはもう三周目の講義ですね」
と咎めるように言った。
ジュは口をとがらして
「まだ自信がないもので」
とうそぶいた。
不思議な人だな、とコピペは思った。
体格も悪くないし何より男だ。他に仕事を探せば割のいいところもあるだろうに。
これほど大きな町なのに。
泉は神殿の中庭にあった。
直系三メートルほどの泉の周りを囲むように警備の騎士たちが配備されていた。
中庭には彫刻や花壇、供え物の台などの設置がされていて、さすがにそこは神殿らしい厳かな演出がされているようだった。
ジュは手馴れたようにさっさと前へ進むと、石のふちに手を当てた。
「神よ、我らを憐れみ、許し、癒しを与えたまえ」
え、意外と神官らしいじゃあないですか。
驚いているコピペの目の前で、泉の水は青く光を増した。
さっと、先生が前に出て泉の内側にあるメモリを確認する。
「1.5センチ」
おおっ、と周りの騎士たちから驚きの声が上がった。
「いつ見てもすごいな」
「正規の神官でも1センチ行くのは珍しいのに」
「少し売って経費のたしにできますね」
先生は冷静だ。
「17日コースの間の費用は充分です。ジュさん、あなたは信力だけは立派ですよ。巡礼に行くのが嫌なら、正規にここでお勤めしたらどうです」
ジュさんはへらへら笑って相手にしない。
先生がコピペを見た。コピペはわくわくした。
異世界のお約束。チートを使って、みんなの度肝を抜く、だ。
おっし、がんばっちゃうよ?
「コピペさん」
先生が気の毒そうに言った。
「回復はこれで充分です。先に優れたものを見せつけられると初心者は委縮していつもの力が出せなくなりますよね。気にしないで、労働奉仕に切り替えましょう」
慰めるような言い方だ。
えええ~。
見るとジュがふっと鼻で笑っている。
えええ~。
-・・・-・・・-・・・-
結局、掃除・ご飯づくり・会計の手伝いをした後、外から帰ってきたミケさんと合流し、夕食を一緒に食べながら、大いに愚痴った。
「私の華麗な神殿デビューが! ああっ悔しい!」
「なんか悪役みたいなセリフだぞ、それ」
「いいんです! こんなに地味な生活が続いたら皆様に飽きられてしまう!」
「なんの話だ。誰に向かって言っているんだ」




