ただでお泊りし、ただ飯を食う。何の文句もありません
チンチラゼミの話はとりあえず棚上げしておいて、大部屋に案内してもらい、まずは食堂に行ってみることにした。
ずらりと人が並んでいる。同じように続きお盆を手にし、まず「おまかせ」を取る。続いて小鉢が並んでいるが、こちらは有料。無料のスープを自分でよそってお盆の上へ。最後にお会計のおばちゃんが待っている。
おばちゃんはちらりとお盆を見て、無料の物ばかりだと黙ってスプーンを差し出し、有料の物が乗っているとお金を受け取り
「まいど」
と言った。
席は何処でもよいらしいので適当にミケさんと座って、食べた。味は悪くない。
「肉、少ない」
「無料ですからね」
そこはしょうがないでしょう。しかし、衣食住が落ち着くと、気持ちに余裕が出てくるのがよくわかります。食べながら、これからをミケさんと相談しましょうか。
「寝る場所をただで確保できたのは幸いでしたね」
「金貨を使ってしまったからな」
「しかし、使うだけの価値はありました」
「使わなければここまでたどり着けなかっただろう。しかもこんなに早く」
まあ、ワイバーンに乗る時は本気で抵抗しましたけれども。
しかし、しかし文無しはヤバいでしょう。ここではお金の流通が要の都市のようです。
「狩りをしたいな」
ミケさんが言った。
「それに、少し稼ぎたいな。今後の為にも」
「ミケさん、分かってます? こういうところでは、柿の木一つでも誰かの所有物なんですよ。勝手には持っていけないんです。それに下手をしたら、勝手に狩りをしてはいけない場所もあるかもしれません。なんでも確認しないと」
「今までの暮らしと、だいぶ違うな」
ミケさんは面倒くさそうに言った。
「万の人間が暮らしている場所なんて、そんな感じですよ」
困りましたね。私ができることって何でしょう? 歌って踊って、大道芸人みたいな?
「神官がそれをやるほうが、問題になると思うが」
……確かにね。
ミケさんは冒険者組合に行ってみることにするらしい。主に体を使う仕事で何かできないか探してみるという。ドワーフ街へ行って、手持ちのナイフも砥ぎに出したいそうだ。
何かあれば精霊をよこせと言う。
ミニ精霊は、時間・空間に縛られない不思議な生き物だ。
「いるの」
と聞くと、
「別にいたっていいけど?」
とでも言いたげにピカッと短く光った。
楽しそうでないと、気乗りしないようだ。
コピペは、神殿のことをまともに知らない神官なんて、詐欺のようだからと、チンチラゼミを利用することにした。
ゼミ費用は泉の回復でまかなうとして、空いた時間に雑用をまわしてもらい、旅の費用を捻出できないか相談してみるつもりだ。
するべきことが、定まると、気持ちが落ち着く。
なじんだ生活に近い環境だというのも、良い。
この町に来てよかった。




