娘エルフから、昔の話を聞く
次の日、さっそく老エルフの娘に案内してもらい行ってみた。家の中には、枯れ果てた泉の名残があるだけだった。
「回復させてもいいですか」
聞いたのは、エルフにとってその必要性を感じなかったからである。
「少しだけなら」
許可が出た。
人間族にとって脅威でしかない魔獣も、エルフにとっては番犬替わりなのか。
ひとのせいで滅びた種族を看取った彼らは、できる限り人を避けて暮らしたいのだろう。
それも彼らの選択肢だと、コピペは思った。
エルフがこの先も穏やかに生活できるよう、祈った。
淡く優しい光が泉を包み、水が滲み出てきた。
水筒に、ようやく半分くみ取った。
「私はここにいた神官様のことをおぼえているわ」
娘エルフが思いがけなくも、言った。
「食事を届けるのが仕事だったの」
興味があるのを見て取った娘は、思い出す限りのこと話してくれた。
信力はさほどないが神話学に興味を持ったため神官になった女性は、考古学者のようなこともやっていたらしい。
人がいかないような土地も廻って古い伝承を集めていた。
彼女は危険を冒して、竜が集まる土地まで行ったのだそうだ。
樹人族と同じく竜たちも無事ではなかった。その大半が知性を失い、ただの獣と化していたのだ。
ようやく、話ができる古竜を見つけることができ、昔の話を聞き出すことも成功した。
そして、長寿族のことを知った。
「長寿族、また新しい言葉が出てきた」
コピペは思った。
長寿族、それはかつて神の力を奪い、ぜいたくにそれを取り込んだ人間たちの直系血族だった。
その時代の人間たちの良くも悪くも先駆者だった。
あらゆる分野で最先端を走っていた彼らは、多くの人間たちを導き、大いに発展させた。
一部の者は贅沢に溺れて自滅していったが、一部の者は今のハムズ王都で未だ隠れ住み人々の為、尽力しているという。
「その流れが今の神殿そして神官につながっているというの」
娘エルフの表情は複雑だった。
「ほかの種族にとっては、悲劇であっても、人間にとっては英雄伝説、みたいな感じなのかしらね」
まさしく、神官であるコピペは肩身が狭い。
償いの為に献身的に生きる長寿族の話が唯一の救いである。
黙って話を聞いていたミケさんが口を開いた。
「その長寿族に、『人』であること以外の特徴はあるか?」
「その名の通り長寿であること。神様にそっくりな容姿。大きな信力。そして知性。……ああ、思い出した。その話をしてくれた女性神官のことだけど」
考えながら娘エルフは言う。
「名前はアグネと言ったわ」




