エルフの村でのんびりする(読み飛ばしても〇)
冷たい水を持ってきてくれた女性にお願いして、この村の代表者のところへ案内してもらった。
二日酔いのこの有様ではかえって失礼かと思いもしたが、とにかくお礼とお詫びと考えたのだ。
年を取ったエルフが、頭を冷やしながら、玄関から現れたのを見て、申し訳ないことをしたなと、思った。
しかし、エルフは
「いや、いや、いや」
と、首を振った。
「長年、ここで暮らしてきましたが、あんなに楽しい時間を過ごしたことはありませんでしたわい。感謝しますぞ」
トンボ型の精霊がすっと老エルフに近づいてその肩にとまった。
「わしらは、精霊種族とうまく付き合ってきたと思っとりましたが、まだまだ、だったのですね。
昨日の神官様の神々しいお姿と生涯忘れられぬ音楽。神代の時代とはこのようなものであったのだろうかと」
なにか陶酔してる、と、コピペは思った。
ライブ帰りって、なんかこんな感じだったよねー。
ふわふわ気持ちよく酔ったような、そしてなんか日常に戻って物悲しいような。
初ライブが私なんかで、ほんと申し訳ありません……。
エルフは排他的な種族かと思いきや、精霊に好かれる=エルフの仲間、という考えらしく、打ち解けてしまえば、人間や獣人とさほど変わりはなかった。
老エルフの代わりにその娘である女エルフが、コピペの疑問に答えてくれた。
「確かに私たちは、昔、神様にひどいことをした人間を軽蔑しているわ。けれど、神の代わりである神官様には、人間であっても、敬意は払っているの」
でも、と少し神妙な顔をして話を続ける。
「一応、注意しておくわね。貴方たちは、樹人族の聖地である泉から来たわね?」
あの美しい湖のことだろうか。立ち枯れた木に囲まれた、湖。
「樹人族は、変化についていくことができずに、滅びてしまった種族。
仲間が死んでいく度、残ったものが神に祈ってその姿を残したの。
そして最後の一人になった樹人族は、泉の真ん中で息をひきとったわ。
その最後を看取ったのは、エルフよ」
あの木は樹人族だったのか。
「かつて最大と言われた回復の泉。
その泉のおかげで彼らは意思のある木として生きていけた。
けれど、今の泉はただの水よ。
何の力もないわ」
そうなのか、泉らしい気配は感じなかった。
枯れるのではなく、変質してしまったのか。
「もしもですが」
コピペは言った。
「回復の泉が復活したら、樹人族はすくわれるのでしょうか」
「無理ね、だってもう亡くなっているもの」
容赦ない言葉だったがもっともである。




