きれいな景色を見る(読み飛ばしても〇)
疑問に対する答えが出ないまま、先に進むことになった。少し先に同じような枯れ木がある道を選んだ。
「あはは、やっぱり顔みたいに見えますねえ、なんて種類の木なんでしょう」
前を通りながら、軽口をたたいた。
ミケさんは、話に乗ってくれず、無言だった。
道に沿って、進み、針葉樹の林に入りそれを抜けた。
いきなり目の前が開けて美しい湖のある風景が目に飛び込んできた。
「きれいな水ですねえ!」
「少し待て」
ミケさんは籠からネズミを取り出し、泉の近くに投げた。
「普通の水のようだ。近寄っていいぞ」
「なんかいい雰囲気が台無しなんですけど」
透明度の高い水。立ち枯れた木々が取り囲むように存在している。何故なのか一本だけ湖の真ん中に生えているこれも枯れた木。
湖の底が透けて見える。残念ながら魚などは存在していないようだ。
念のために、水は飲まないように注意された。
「きれいな水なんですけどね」
「せめて魚がいれば、毒などの可能性はないのだが」
「毒のせいで木が枯れたと?」
「いや、……わからん」
枯れ木が消えずに存在する理由にはならない。
残念ながら、道はその湖の周りをぐるりと回って終わりのようだった。
「行き止まりだな」
「美しい景色を見れたのだから、来てよかったですよ」
先の枝分かれした道のところまで戻ることになった。
『聖地を汚したな』
え、ミケさん何か言いました?
ミケさんのほうも、こちらを見て怪訝そうな顔をした。
お互いに、すぐ気が付いた。誰かいる。
警戒し、ナイフを構え、背中合わせになって、あたりを見渡すが、誰かいる気配がない。
空気さえ澄んでいて、あたりはシンとしている。
「誰かいるのか」
ミケさんは静かに問いかけた。答えはない。
来た道を戻るぞ、とジェスチャーで示し、その体制を崩さないまま、ゆっくりと後退した。
目の前をトンボが横切っていった。何か頭の隅に引っかかるものがあったが、それが何なのか分らぬまま、それでも最初に見た枯れ木のところまで何事もなく、無事戻った。
「綺麗ですけど不気味な湖でしたねえ」
やっぱり顔に見える木の幹をペシペシ叩きながら
「こっちの道も行き止まりなんてことはないでしょうね」
「だとしても、泉の気配を探しながら進むだけだな」
ミケさんはこちらを見ながら
「まだ、その気配は感じ取れないのか?」
「微妙な何かは感じるのですけど、泉かどうかは」
「それを当てにするしかないか」
「さっきの湖、綺麗でしたけど、泉じゃなかったでしたしね」
「あんな大きさの回復の泉があったらそれこそ聖地だろうな」
「あの時『聖地を汚したな』って聞こえましたよね」
「確かにそう聞こえた」
「枯れ木と湖とトンボしかなかったはずで」
「そのトンボとはなんだ」
「あ、見ませんでした? 虫ですよ」
「ムシ」
あ……。
あの時感じた違和感の原因に、ようやく思いいたった。
虫? いないはずの虫。
どんなものを見たのか、ミケさんに説明した。
「俺には見えないのかもしれない。それは精霊だ」
「精霊」
「彼らがどのように暮らしているのか、俺にもよくわからない。次に見たときには教えてくれ」
「気を付けておきます」
若かりし頃、長野県のとあるスキー場に住んでいました。そこで車の免許をとり、せっかくだからと近くの山々を観光しました。
これは女神湖という場所をイメージして書きました。山は、視線が上から下へ、下から上へ、雲も眼下に広がります。標高が高いと木々も少なめで見晴らしがとても良いんですよね。
少しでもイメージが伝わるといいなぁ。設定上、出せないけど、冬のダイアモンドダストも美しいですよ。ガッチガチに寒くてマジで命の危険を感じますけどね。




