無ければならないが、有りすぎると困る。それが魔素
進むにつれ、岩肌が露出し、背の低い草が所々で身を寄せ合うように生息している土地へと変わっていくのが分かった。
木は谷間など、あまり風が吹かない所に生えるか、でなければしっかりとした背の高い木が林となってかたまって生えていた。
元の世界でいうなら標高の高い山などで見られる光景。足元にスズランの花。
ん?スズラン?
「ミケさん、今って、秋? 春?」
「なんだ、そのハルとかアキって言うのは」
逆に質問された。
一見そっくりな世界だから勘違いしそうだが、虫のことといい、季節といい、やっぱりなんか違う。
「そこ、スライム」
ミケさんが足元に注意するように言う。
避けて通った。スライムは小型の何かの動物を溶かして捕食しているようだ。
「スライムは危険?」
聞いてみると、
「直接的な危険というより」
ミケさんは嫌な顔をした。
「ブーツの底を溶かされたせいで、旅を続けることが困難になるほうが」
ああ、裸足ではねぇ。
「あのタヌキの皮を持ってくればよかったな」
「置いてきてしまいましたね」
黒い煙が固まっているような、奇妙なものを見つけた。
見通しが良く晴れているので遠くからでも目立つ。
魔素だまりだとミケさんは教えてくれた。信力で散らせるという。
「やってみましょうか」
「普通なら、避けて通るが、できるなら頼む」
業務用扇風機イメージ。
ガンガン、風吹け。
吹き飛べ。
本当の煙のように、激しく形を変えた後、四散して無くなった。
「すごいな」
「すごいんですかね」
「……」
「魔素だまりは危険?」
「普通の動物が、過剰に、魔素を吸い込み続けると、魔物になるからな」
お? いきなりファンタジー設定。
「では、魔素だまりが無くなれば、魔物は生まれない?」
「今、分かっている限りでは」
「魔素だまり、ガンガン潰しましょう!」
「その前に」
ミケさんは前方を睨みつけた。
「約五十歩先に魔物。一匹だから迎え撃つ」
え、近い、何処。
僅かばかりの草むらに伏せて姿を隠している大型犬。黒い。しっぽが細くはげている。犬らしくない。
「あれはネズミの魔物だ」
に、しては大きすぎませんか。
魔物は伏せた状態のまま、声も出さずにいきなり走り寄ってくる。
早い。
ミケさんは身をひるがえし、手に持ったナイフを横へ払う。魔物のしっぽが切り落とされる。
「ヂッ」
魔物が体を大きくひねりミケさんに噛みつこうとする。
その鼻先にナイフを突き立てたままミケさんは後退。
魔物は狂ったように顔を振りミケさんを振り落とそうとするが、流れに逆らわずしかし手を放さない。 じりじりとその刃を眉間へ食い込ませていく。
最後に大きく痙攣してネズミの魔物は横倒しになった。
ミケさんは手も目も離さない。
じっとナイフを突き立てたままだ。
パシッっという鋭い音がして、魔物の体から大きく魔素が出た。
ついさっき見た魔素だまりと同じものだ。
見るとナイフの先には小さなネズミ。
「神よ、これを我に与えたまえ」
ミケさんは言うと、ナイフからネズミを引き抜き、籠へポイっと入れた。
「えー、汚い。柿がはいっているんだよ?」
「汚くはない。命尽きた時点で本来なら自然に消滅するはずのもの。祈りによって形を留められた」
虫も病原菌もいないのね。最初から最後までコピペの出る幕はなかった。
せめて、魔素を飛ばしておこう。
扇風機、ブーン。




