お世話になったくまさんに挨拶するも、ミケさんは何故か不機嫌
ミケさんは、小さな紙に世話になったことのお礼と家を出ることを書きしるし、クマ族の家を出た。
コピペは「直接お礼を言いたい」と思ったが、すぐまた会えることを祈りつつ、そのあとに続いた。
「契約だからな」
と、ミケさんは言い、泉に現状維持の信力をかけていくことにした。
泉の場所はすぐに分かった。
もう、使われなくなったクマ族の住処の中にあった。
一見、井戸のようにカモフラージュされていたが、神官特有の感(?)が、「こっちだよー」と手招きしているようだった。
見ると水たまりとほとんど変わらない水量だった。
「ちょっとだけ、ちょっとだけだから!」
言い訳しながら、
水筒に汲めるくらい、せめて水筒に汲めるくらいの深さに
と、祈った。
水量とともに青い光が増す。
ミケさんが舌打ちをした。ごめんなさい。
手早く、水筒に水を汲んだ。
「神聖で感動的な光景のはずなのに、厄介ごとの予感しかない」
ミケさんは納得がいかなそうに言った。ごめんなさいってば。
「誰か来る! 鉢合わせする、隠れろ」
いきなり切羽詰まったミケさんの声。
えええ?
隠れるところなんて?
ミケさんは皮の被り物を頭までかぶって、部屋の隅に小さくなった。
一見、ごつごつした岩壁の一部にしか見えない。
やむなく、唯一、部屋に残されている、植物の皮で編まれた籠の中へ入る。
丸見えだが、カメレオン策戦でいくしかない。
どたどたと、足音が近づく音が聞こえてきたのと、家にクマ族の男が飛び込んできたのはほぼ同時だった。
あ、クマさん。
お世話になっているクマ族の人だ。
なんだ、良かった。また会えるようにと祈ったが、神様はとても早く願いをかなえてくれたらしい。
クマ族の男は、浅い茶碗で水をすくい、それを酒瓶に入れ始めた。すぐその手が止まった。
泉の変化に気が付いたようだ。きょろきょろとあたりを見回した。
「あ、ここです」
籠から出て、手を振った。
クマ族は茶碗を落としそうになった。
「驚いた、気が付かなかった。猫族の奴は一緒じゃないのか」
「えっと?」
ちらりとみると、ミケさんはまだ擬態を解いていない。あれっ?
「あ、はい、ここへは私一人で」
「そうか」
クマ族は酒瓶を直接、泉に突っ込んで手早く水を詰めた。
「いとこがケガをした。オオカミ族にやられた」
「ええっ」
-・・・-・・・-・・・-
そして、くまさんからダと会ったときの話を聞くことになったのだ。
コピペはクマ族たちに迷惑をかけたことを知り、早くここを発つことは正解だったと思った。
「いとこはその巻き添えをくった。申し訳ないと思うなら、もう少し泉の水を増やしておいてくれ。その様子では可能なのだろう?」
「あ、はいはい、もちろん……」
倍増で足りるかな、えい、えい……。
ふわっと柔らかく、青く光る。
「いとこが待っているから、俺は戻る」
クマ族は、入り口まで戻り、そして振り返って、にやりと笑った。
「ダはまずはゴールデン町・テグウ村まで戻るだろうと思うが、お前を追うことをあきらめないと思う。この周囲に魔物がいなくなれば、お前がここにいることが知れる。すぐに出発することを勧めるな」
「あ、ご親切にありがとうございます」
「では、達者で」
「何から何まで、お世話になりました。ご迷惑をかけて申し訳ありませんでした」
頭を下げる。クマ族の男は出て行った。
最後にきちんとお礼を言えてよかった、にしてもミケさんはいったい、いつまで擬態を続ける気でいるの?
はぁー
ミケさん擬態の岩が深いため息をついた。
「あほ神」
え? なんで? なにが?




