ミケさんはとても用心深い。そこがいい
もう暗くなっているのに、スライムもゴブリンも出ない。どこへ消えてしまったのだろう。
途中でイノシシとタヌキを見たが。それだけだった。
聞けば、野生の生き物がいるということは、魔物がいてもそんなに強くはないという印のようなものだという。
強すぎる魔物がいれば、植物も動物も食べつくされてしまう。
そして、最後には人間が襲われる。
どちらにしても、食料となるものが無くなるのでは、そこに住み続けることは難しい。
「すでにゴールデン町の泉の加護が働き始めている」
ミケさんは、走るのを止め早歩きになっている。これでも、休憩の代わりのつもりらしい。
このペースについていける自分にびっくり。
「うさぎ族の村の距離の分までしっかりカバーできるくらいの、加護だ、と思う。何せあれほどの泉は初めてで経験がない。昔はこうだったという、年寄りの話を根拠にした憶測だ」
「うさぎ村に関しては安心しました」
「犬族は、オオカミ族と統合した村を作っている。魔物に負けないくらいの力の強い種族だから、今回だけは見送ろう」
「いつか、立ち寄ることができたらいいですね」
「本当は立ち寄って、泉を回復し、逃げるのを手助けしてもらうという手もあった。だが、一種の賭けになる。分が悪い賭けだ」
「信用できない、ということでしょうか?」
「彼らは何よりも群れの利益を優先する。その一方で、味方につければ有能で頼もしい」
ふむふむ。
「たった一人でも、裏切り者が出た場合、脅威になる。彼らは鼻が利き、追跡はお手の物だ」
犬ですものねー。
再び、緩い駆け足になる。
「でも、ルさんとダさん? 彼らが追って、来ますか? 私は彼らから話を聞いたテグウ村の男が来るかと思ったのですが」
「それ以上の話は、まず、クマ族の者と合流してからだ」
ミケさん、息が苦しそう。ごめんなさい。
丸一日以上、走ったのち、今度は木に登ったり、降りたり、さらには川に入って、離れたところで上がったりを、繰り返した。
かえって時間がかかったが、犬族対策ということが理解できたので文句はなかった。
クマ族の岩穴を発見、少しでも休みたかったが、ミケさんは許してくれなかった。
クマ族と少量の食料とタヌキの皮四枚を交換した。
「タヌキの皮は匂いをたどってくる者をかく乱させるに最適だ」
早い話が臭いのか。
一度、川のところまで戻る。そして、水際でタヌキの皮で足を包むように指示された。
クマ族の者に教えてもらった、知り合いのクマ族のもとを訪ねる。
ミケさんは拝むように、五日間、かくまってくれるように頼み込む。その際、近くの泉の水の一年間の現状維持の神力をかけることを約束する。
「回復させてはダメなの?」
小さい声でたずねてみる。
「だめだ」
きっぱりと拒否された。
そうですか……。




