雰囲気がカッコいい人の名前はミケさん
ここまで案内してくれた偽子供の名前はミケというのだそうだ。
なんと、ミケとな?
そのミケさんの家は木の上にあった。
正直そんな場所にあるとは思っていなかった。
視線を上に向ければ、なるほど、木と木の間に吊るしたり支えたりして家が存在している。
地面の上に立っているのが普通の民家なら、木の上にあるのはワンルーム住宅みたいなものだろうか。マンションではない。それぞれ独立しているからだ。
「我々はその種族属性上、こういった家に住むほうが落ち着く」
ミケさんは自慢げだ。
「しかしながら、家族で暮らしたいなら安定の地面ハウスのほうが良い。不慣れな子供が落ちる事故もふせげる」
単純に重さの問題なのでは、ないのでしょうか? なんだかぐらぐらしそうだ。
「よその獣人町では、犬種族だと普通に地面ハウスが多いし、ウサギ種族だと地面に穴を掘った地下住宅が主だ。クマ種族だと、岩穴を利用することがあるのだが、そうすると住宅難が起こってしまう」
なるほど、穴だらけの山なんて、すぐ土砂崩れしそうですね
「やむなく、別々に分かれて住んでいて、何かあるときだけ集会場に集まるのだそうだ」
村を作らない種族もあるのですね
「ついたぞ、ここが、我々の集会場だ」
いや、なんで洞穴なんですか。クマが町長さんなんですか……。
入口は狭いが入ってみると中は広く鍾乳洞を思わせるような、洞窟だった。
先客がいる。獅子族の女性。頭一つ分高い。肩幅も広い。
猫のミケさんと、種族が違うのが、よくわかる。
彼女の足元に毛足の長い絨毯が広がり、そこにくつろいだように座ったり寝そべったりしているのは、獣人ではなく人間。
久しぶりに見る、人間。
水を飲もうとコートのポケットに手をやり、そういえば水筒を預けたままにしていたのをおもいだした。
「ミケさん、水筒を返してもらっていいですか」
「ナイフはまだ駄目だぞ」
ミケさんは水筒を返してくれた。
一口、水を飲む。




