どうでもいいけど、監禁は勘弁してほしい
「私はほかの困っている村に行って」
「それは危ない」
かぶせるように男の声が遮る。負けないぞ。
「ならば、そのシャン村やガリオン村まで案内がてら送っていただ」
「我々はこれから復興に向け、忙しくなるのだぞ」
それは良かったね、ええと、
「物資の交換などの交流の時に、ついでに連れて行ってくれればいいし、わざわざでなくともいいし」
「この村の泉に何かあったらどうする」
そんなこと、言われても
「もちろん、その時はまた戻ってきて対応するし、私以外の神官だって来るだろうし」
沈黙。
なんだよ。
今まで黙ってシチューを食べていた若い娘が初めて口を開いた。
「私は神官様を見るのは初めて。私が覚えている限りこの村に、神官様が来たことはない」
食べていた人も子供たちまで、沈黙してこちらに、注目。怖い。本当に怖い。
人々の総意が固まる瞬間って、初めて経験したかもしれない。怖い。
水、ゴクリ。
それからは、これと言って内容のある話をするわけでなく、ほぼ雑談。男たちも煮込みを温めなおして、食べ始める。誰かがどこからか酒を持ち込み。その場がわく。
頭が真っ白になって、考えがまとまらない。
冷静になってみればそんなに悪い話ではないのかもしれない。何もわからないまま、山の中をさまようよりはよほど良い。
本当に?
水を汲みに行く。水筒をいっぱいにした。
かつて小さかった泉を守っていた木の蓋が打ち捨てられている。
何か物悲しい。新しくなった泉の石のふちに立てかけてみた。
泉はこんなに大きくなったのか。一日でこれを成し遂げた異世界人達はすごい。
さて、考えよう。
今、誰もこちらに注目していない。しかしながら、すべての目がこちらを向いていないわけではない。
私は仮にも神官様なのだ。うまくやれば、過保護な神様がきっと助けてくれるはず。




