存在感をぼかして逃げてみる。ラノベ風に言うと認識阻害
主人公目線に書き直しました。
思いついたのはいつかテレビで見た映像マジック。
少しずつ風景が変わると、よほど注目していない限り、誰もそれを見つけられないという、アレだ。
私の体を誰も気にしない。
木の蓋がある。
ゆっくりと、一歩、さがる。誰もこちらを見ない。
木の蓋と、それにもたれている私がいる。
私は木の蓋、木の蓋は私。
思いきって二歩、歩いてみる。やはり誰もこちらを見ない。
木の蓋だから、誰も気にしない。
もたれて休んでいるから、ほっておこう。
子供たちが、食べ終わった椀を置いて遊びだしている。すぐそのわきを通りすぎる。一人がこちらの方を向いている。しかし、目線があっていない。自分を通り越して遠くを見ているみたいだ。
声を掛けたら、かわいそう。
木の蓋は私。
足は草を踏んでいる。カサカサと音を立てている。心臓がドキドキと音を立てている。一人の女性が立ち上がりドキリとするが、別の女性と話をしながら『おかわり』をもらっている。認識されていない。不思議だ。まるで、テレビのこちら側と向こう側のようだ。
ここにいる。そこにいる。あそこにいる。
そう、木の蓋だからどこにも行かない。ここにいる。
大胆に早歩きで歩き出した。もう、振り返らずに遠くにある樹を目指して歩く。
新しい泉にもたれて休んでいる。
動いていない。ずっとそこにいる。
木の陰に隠れるとき、ちらりと振り返り、とおく人々の集まっている輪を見た。
テグウ・ナと目があった。
どきりとした。
テグウ・ナはごくごくわずかに、頭を下げた。
認識された。でも、見逃してくれた!
人々の笑い声を遠く背中越しに聞きながら、もう振り返ることなくひたすらに走った。
-・・・-・・・-・・・-
さて、どこに逃げたのか。実は異世界で最初に目覚めたあの岩陰に戻ってきていた。
探しに来ていた男たちの声も遠くに聞こえてはいた。
ひたすらカメレオン作戦で周囲に溶け込み乗り切った。もともと少ない村人の人数だ。人海戦術も無理である。しばらく我慢していればそのうちいなくなる。
話に出ていた泉の水が少なくなったらしいシャン村・ガリオン村のことは気になるが、どうしようもなくなった最悪の時にはテグウ村の人が保護してくれるだろう。まさか、訪ねて行って待ち構えていたテグウ村の人と鉢合わせなんて、ごめんだ。
この、拠点より、真逆に行ってみることにした。どうせ、地図も何もないのだ。
この山を越えていかねばならないが。ただただ深いばかりで雪が積もっているわけでもなく、根気よく歩き続ければ、どこかに出るだろう。
過保護神の世界だ。そう信じよう。




