山西・綏遠解放区幹部会議での演説 (一九四八年四月一日)
同志諸君、きょうわたしは、おもに山西・綏遠解放区の活動に関係のあるいくつかの問題について話し、そのあとで全国的な活動に関係のあるいくつかの問題について話そうとおもう。
一
わたしは、中国共産党中央山西・綏遠分局の指導する地域におけるこの一年間の土地改革活動と整党活動は成功しているとおもう。
それは、二つの面にみられる。一つは、山西・綏遠解放区の党組織が右翼的傾向に反対し、大衆闘争をおこして、全区三百余万の人口のうち二百数十万人のなかで、土地改革活動と整党活動をなしとげたか、または現になしとげつつあるということである。もう一つは、山西・綏遠解放区の党組織が、運動のなかでうまれたいくつかの「左」翼的傾向を是正して、全活動を健全な発展の軌道にのせたということである。この二つの面からみて、山西・綏遠解放区の土地改革活動と整党活動は成功しているとおもう。
「これからはだれも、もう封建的にはふるまえなくなった、もうひどいことはやれなくなった、もう汚職はできなくなった。」これは、山西・綏遠解放区の人民のことばである。これは、山西・綏遠解放区の人民がわれわれの土地改革活動と整党活動についてくだした結論である。かれらのいっている「もう封建的にはふるまえなくなった」というのは、われわれがかれらを指導して闘争に立ちあがらせ、新解放区の封建的搾取制度と旧解放区、準旧解放区の封建的搾取制度の残存物を消滅したか、または現に消滅しつつあることをさしているのである。かれらのいっている「もうひどいことはやれなくなった、もう汚職はできなくなった」というのは、つまり、以前は、多くの悪質分子が党と政府の組織内にまぎれこんでいたり、多くのものが官僚主義の作風をつのらせ、権力をかさにきて人をいじめ、強制命令の方法で任務を遂行して大衆の不満をかったり、また汚職の罪をおかし大衆の利益をそこなうなど、そうした階級構成の不純または作風の不純という深刻な現象が、わが党と政府の組織内にある程度存在していたが、この一年間の土地改革活動と整党活動をつうじて、こうした状況はすでに根本的にあらためられた、ということをさすのである。
「以前われわれにとって致命的であったものが、いまはとりのぞかれた。以前はなかったものが、いまはある。」これは、この席にいる同志のひとりがわたしにいったことばである。この同志のいう、致命的であったものとは、党と政府の組織のなかにあった階級構成の不純と作風の不純、それによって引きおこされた大衆の不満、という深刻な現象をさすのである。こうした現象はいまでは根本的にとりのぞかれている。この同志のいう、以前はなかったがいまはあるものとは、貧農則、新しい農会、区と村の人民代表会議、それに、土地改革活動と整党活動によってうまれた農村のまったく新しい気風をさすのである。
こうした反響は、実情に合致しているとぶもう。
これは、山西・綏遠解放区における土地改革活動と整党活動の偉大な成功をしめすものである。これが成功の第一の面である。こういう基礎があったからこそ、山西・綏遠解放区の党組織はこの一年間に大がかりな軍事上の後方勤務をなしとげ、偉大な人民解放戦争を支援することができたのである。もし、成功裏にすすめられた土地改革活動と整党活動がなかったとしたら、こんなに大きな軍事的任務をなしとげることはむずかしかっただろう。
もう一つの面は、山西・綏遠解放区の党組織が、その活動のなかでうまれたいくつかの「左」翼的傾向を是正したことである。その傾向というのは主としてつぎの三つである。第一は、土地改革活動にあたって、農村戸数の九二パーセント前後、人数にして九〇パーセント前後、つまり農村のすべての勤労人民と団結し、封建制度に反対する統一戦線を結成することができるし、またそうしなければならない、というきわめて重要な戦略的方針を忘れて、多くの地方では、階級所属をきめるときに、なんら封建的搾取をしていないかほんのわずかしか搾取していない多くの勤労人民を地主または富農のわく内にいれ、打撃面を拡大するというあやまりをおかしたことである。いまでは、この傾向はすでに是正されている。こうして人心は大いに安定し、革命の統一戦線は強化された。第二は、土地改革活動にあたって地主と富農のもっている商工業を侵害したこと、経済上の反革命活動を摘発する闘争のなかで、摘発すべき範囲をこえたこと、また徴税政策のうえで商工業に打撃をあたえたことである。これらはすべて商工業をあつかううえでの「左」翼的傾向である。いまではこれらの傾向もすでに是正されて、商工業には回復と発展の可能性がうまれた。第三は、この一年間のはげしい土地改革闘争のなかで、山西・綏遠解放区の党組織は、やたらに人を殴ったり殺したりすることを厳禁しているわが党の方針をしっかり堅持できなかったということである。そのために、ある地方の土地改革では、一部の死刑にする必要のない地主と富農を死刑にしたし、農村の悪質分子に報復行動にでる機会をあたえ、何人かの勤労人民がかれらによって不法にも殺害されたのである。われわれはつぎのように考える。積極的にしかもはげしく人民民主主義革命に反対したり土地改革活動を破壊したりした重大犯罪分子、つまり重大な罪を村かした極悪の反革命分子と悪覇にたいしては、人民法廷と民主政府をつうじて、これを死刑にすることがまったく必要であり正当である。そうしなくては、民主的な秩序をうちたてることはできない。しかし、国民党の側についている一般要員のすべてと、一般の地主、富農、または罪状のわりあい軽いものは、殺すことを禁止しなければならない。同時に、人民法廷と民主政府が犯罪分子を取り調べるばあいには、拷問を禁止しなければならない。この一年のあいだに山西・綏遠解放区でこの面にうまれた傾向も、いまではすでに是正されている。
上述のすべての傾向がしんけんに是正されて、いまでは山西・綏遠中央分局の指導下にあるいっさいの活動は健全な発展の軌道にのっていると、われわれは確証をもっていうことができる。
実際の状況にもとづいて活動方針をきめること、これはすべての共産党員がしっかりと心にきざみつけておかなければならないもっとも基本的な活動方法である。われわれのおかしたあやまりは、その発生の原因をしらべてみると、すべて、われわれがその時その土地の実際の状況からはなれて主観的に自分の活動方針をきめたということからきている。この点は、すべての同志が教訓とすべきである。
党の基礎組織を整頓する活動については、諸君はすでに、中央からだされた旧解放区、準旧解放区で土地改革活動と整党活動をおこなうことについての指示〔1〕にもとづいて、山西・察哈爾・河北解放区平山県の整党の経験、つまり、党外大衆のなかの積極分子をまねいて党の細胞会議に参加してもらい、批判と自己批判をくりひろげて、党組織内の階級構成の不純、作風の不純という現象をあらため、党と人民大衆を緊密に結びつけるという経験をとりいれている。このようにしていけば、諸君は党組織整頓の全活動を正しくなしとげることができるだろう。
救いようのない連中とはちがって、あやまりをおかしはしたがまだ教育することのできる党員と幹部については、その出身のいかんをとわず、すべてこれを見すてないで教育をほどこすべきである。諸君はすでにこの方針をとったか、あるいは現にとりつつあるが、これも正しいことである。
封建制度に反対するたたかいのなかで、貧農団と農会を基礎として区と村(郷)の二つの級の人民代表会議をつくったことは、きわめて貴重な経験である。ほんとうに広範な大衆の意志にもとづいてつくられた人民代表会議だけが、真の人民代表会議である。こうした人民代表会議が、いまではすべての解放区にあらわれる可能性がある。こうした人民代表会議ができあがったら、それはその地方における人民の権力機関となるべきで、そういう機関が当然もつべきいっさいの権力は、代表会議とその選出する政府委員会に帰さなければならない。そのときになれば、貧農団と農会はそれらの機関の助手となる。われわれはかつて、各地の農村で、そこの土地改革の任務をだいたい終えてから人民代表会議をつくるつもりでいた。現在、諸君の経験と他の解放区の経験によって、土地改革闘争のなかで区と村の二つの級の人民代表会議とその選出する政府委員会をつくることが可能でありまた必要であることが証明された以上、諸君はそういうふうにすべきである。すべての解放区でもそういうふうにすべきである。区と村の二つの檄の人民代表会議が普遍的につくられたら、県級の人民代表会議をつくってもよい。県と県以下の各級人民代表会議ができていれば、県以上の各級人民代表会議は容易につくることができる。各級の人民代表会議には、できるかぎり労働者、農民、独立勤労者、自由職業者、知識人、民族商工業者、開明紳士をふくむあらゆる民主的な階層からその代表を参加させるようにしなければならない。もちろん、むりに頭数をそろえるのではなくて、町のある農村地区と町のない農村地区とを区別し、町の大小を区別し、都市と農村とを区別して、むりにではなく自然に、すべての民主的階層を連合させる任務をはたさなければならない。
土地改革と整党という偉大な大衆闘争のなかで、何万という積極分子と幹部が教育され、うまれている。かれらは大衆と結びついており、中華人民共和国のきわめてとうとい財産である。今後も、かれらが活動のなかでたえず進歩をとげるように、教育をつよめるべきである。同時に、かれらにたいして、成功したから、ほめられたからといって、けっしておごりたかぶったり自己満足におちいったりしないよう警告すべきである。
これらいっさいのこと、さきにのべた各方面での成功によって、げんざい山西・綏遠解放区はいままでのどの時期よりもいっそう強固になった、ということができる。他の解放区でも、このようにしたところは、やはりおなじように強固になっている。
二
山西・綏遠解放区がさきにのべたような成功をおさめた原因は、これを指導の面からいえば、主としてつぎの点にある。(1)昨年の春劉少奇同志の面接指示をうけ、また昨年春から夏にかけて康生同志が臨県[赤+”おおざと”]家坡行政村でおこなった活動に援助されて、山西・綏遠分局は昨年六月に地方委員会書記会議をひらいた。この会議では、これまでの活動にみられた右翼的傾向が批判され、党の路線からはずれた各種の深刻な現象が徹底的にあばかれ、土地改革活動と整党活動にしんけんにとりくむ方針がきめられた。この会議は基本的に成功した。もしこの会議がひらかれなかったら、土地改革活動と整党活動がこのように大きな成功をおさめることはできなかっただろう。この会議の欠点は、旧解放区、型旧解放区と新解放区のそれぞれ異なった状況におうじて異なった活動方針をうちださなかったこと、階級所属をきめる問題で極左的な方針をとったこと、どのようにして封建制度を消滅するかという問題で地主の地下隠匿財産の摘発に重点をおきすぎたこと、および、大衆の要求を処理する問題で冷静な分析を欠き、ばくぜんと「なんでも大衆のいうとおりにやる」というスローガンをうちだしたことである。あとのほうの問題は党と大衆の関係の問題であって、これについてはつぎのようにしなければならない。つまり、すべて人民大衆の正しい意見については、党は状況におうじ、大衆を指導して、これを実現させなければならないが、人民大衆のなかからでてくる正しくない意見については、大衆を教育して、それをあらためさせなければならない。地方委員会書記会議は、ただ党が大衆の意見を実行にうつすべきであるという面だけを強調して、党が大衆を教育し大衆を指導すべきであるという面をおろそかにしたので、のちに一部の地区で活動する同志に正しくない影響をあたえ、かれらの追随主義のあやまりを助長することになった。(2)山西・綏遠分局はくとしの一月、「左」翼的傾向をあらためる適切な措置をとった。この措置は、分局の同志が中央の十二月会議〔2〕に出席して帰ってきたのちとられたものである。分局は、このために五項目の指示〔3〕をだした。この傾向是正の措置はひじょうに大衆の要求にかなっていたし、またひじょうに迅速に徹底的に遂行されたので、短期間のうちに、ほとんどすべての「左」弾翼的傾向が是正された。
三
抗日の時期における山西・綏遠解放区の党組織の指導路線は、基本的に正しかった。それは、小作料・利子引き下げを実施したこと、農業生産と家庭紡織業、軍事工業と一部の軽工業をかなり回復・発展させたこと、党組織の基礎を確立したこと、民主政府を樹立したこと、十万にちかい人民の軍隊を組織したこと、したがってまた、これらの活動を基礎として、抗日戦争を成功実におしすすめ、さらに閻錫山など反動派の進攻を撃退したことなどにあらわれている。もちろん、この時期の党と政府には欠点もあった。それは、いまではまったくあきらかになった、党と政府のなかに存在するある程度の階級構成の不純または作風の不純と、そこからうまれた活動上の多くのよくない現象とである。しかし、全般的な状況からいって、抗日の時期の活動には成果があった。これによってわれわれは、日本が降伏したのちに蒋介石の反革命の進攻をうちやぶることのできる有利な条件をえた。抗日の時期における山西・綏遠解放区の党組織の指導面での欠点またはあやまりは、主として、党と政府のなかに存在するある程度の階級構成の不純または作風の不純と、そこからうまれた活動上のよくない現象を、もっとも広範な大衆に依拠して克服することができなかった、ということである。それは任務としてのこされていたが、諸君はいまそれを完成したのである。当時の山西・綏遠解放区の一部の指導者が、党と大衆のさまざまな実際状況にたいして理解を欠いていたことが、さきにのべた現象をうんだ原因の一つである。この点は、やはり同志諸君が教訓とすべきものである。
四
山西・綏遠解放区の党組織の今後の任務は、最大の努力をはらって、土地改革活動と整党活動をなしとげ、ひきつづき人民解放戦争を発展させ支援し、これ以上人民の負担を重くせず、むしろそれを適当に軽減するようにし、生産を回復・発展させるということである。諸君はいま生産会議をひらいている。ここ数年間、生産を回復・発展させる目的は、一方では人民の生活を改善し、他方では人民解放戦争を支援することである。諸君には広範な農業と手工業があるし、また機械をつかう軽工業や重工業もいくらかある。諸君がこれらの生産事業をりっぱに指導するようのぞむ。それができないようでは、りっぱなマルクス主義者とはいえない。農業の面では、これまで官僚主義分子ににぎられていて、人民大衆にとっては有害無益でしかなかった変工隊や協同組合〔4〕は、いずれもくずれさった。これはじゅうぶんに理解できるし、すこしも惜しいことはない。諸君の任務は、人民大衆に支持されている変工隊、協同組合その他必要な経済組織を注意ぶかく保存し発展させるとともに、このような組織を各地におしひろめることである。
五
全国の情勢は、同志諸君の関心をもっところである。昨年、党の全国土地会議で、新しい方針を採用して土地改革活動を展開し整党活動をおこなうことが決定されてからは、ほとんどすべての解放区で、整党と土地改革に関連する規模の大きな幹部会議がひろかれ、党内に存在する右翼的な思想が批判され、党内にある程度存在していた階級構成の不純または作風の不純という深刻な現象が摘発された。その後、多くの地区ではさらに、適切な措置をとって、「左」翼的傾向を是正したか、現に是正しつつある。こうして、全国におけるわが党の活動は、新しい政治情勢と政治的任務をまえにして、健全な発展の軌道にのった。人民解放軍のほとんどすべての部隊が、この数ヵ月のあいだに、戦争のあいまを利用して大規模な整備・訓練をおこなった。この整備・訓練は完全に指導のある、秩序ただしい、民主的な方法ですすめられた。これによって、広範な指摘員、戦闘員大衆は革命的情熱をもやし、戦争の目的をはっきりと認識するようになり、軍隊内にみられる若干の正しくない思想的傾向やよくない現象がとりのぞかれ、幹部と兵士が教育され、戦闘力がいちじるしく高められた。こうした民主的で大衆的な新しい型の整軍運動は、今後もひきつづきおこなわなければならない。われわれの実施している偉大な歴史的意義をもつ整党、整軍、土地改革活動は、われわれの敵国民党にとっては何ひとつ実行できないものだということを、諸君ははっきりみてとることができるだろう。われわれの側では、こんなにしんけんに自分の欠点をあらためてわが全党全軍をまるでひとりの人間のように団結させ、こうして、全党全軍は人民大衆と緊密に結びつき、わが党中央のきめたいっさいの政策と戦術を効果的に実行し、人民の解放戦争を成功裏にすすめている。ところが、われわれの敵の側は、すべてが逆である。かれらは、あのように腐りはてており、あのように、日ましにつのる、解決しようのない内輪もめにあけくれており、あのように人民に唾棄されてまったく孤立におちいっており、あのように多くの負けいくさをしている。だから、かれらが滅亡へむかうのはどうしても避けられない。これが中国における革命と反革命の対照的な情勢の全貌である。
こうした情勢のもとでは、全党の同志はしっかりと、党の総路線つまり新民主主義革命の路線をつかんでいなければならない。新民主主義革命はプロレタリア階級の指導する、人民大衆の、帝国主義、封建主義、官僚資本主義に反対する革命でしかありえないし、またそうでなければならず、それ以外のいかなる革命でもない。つまり、この革命では、他のいかなる階級、他のいかなる政党もその指導者にはなれず、プロレタリア階級と中国共産党だけがその指導者になりうるし、またならなければならない、ということである。それはまた、この革命に参加する人びとによってつくられる統一戦線がひじょうに広範なものであり、そのなかには労働者、農民、独立勤労者、自由職業者、知識人、民族ブルジョア階級、それに地主階級から分化してきた一部の開明紳士がふくまれる、ということであって、これがわれわれのいう人民大衆である。この人民大衆によってつくられる国家と政府が中華人民共和国であり、プロレタリア階級が指導し民主的諸階級が同盟した民主連合政府である。この革命で打倒する敵は帝国主義、封建主義、官僚資本主義だけであり、またそうでなければならない。これらの敵を集中的にあらわすものが、蒋介石国民党の反動支配である。
封建主義は帝国主義と官僚資本主義の同盟者であり、またその支配の基礎である。したがって、土地制度の改革は中国の新民主主義革命の主要な内容である。土地改革の総路線は、貧農に依拠し、中農と団結し、段どりをおい、区別をつけて、封建的搾取制度を消滅し、農業生産を発展させることである。土地改革にあたって依拠する基本勢力は貧農だけであり、またそうでなければならない。この貧農層は、雇農とあわせて、中国の農村人口の七〇パーセント前後をしめている。土地改革の主要な、また直接の任務は、貧・雇農大衆の要求を満たすことである。土地改革にあたっては、中農と団結しなければならず、負・雇農は農村人口の二〇パーセント前後をしめる中農と強固な統一戦線を結成しなければならない。そうしなければ、貧・雇農は孤立におちいり、土地改革は失敗するにちがいない。土地改革の任務の一つは、一部の中農の要求を満たすことである。一部の中農には、一般の貧農が手にいれる土地の平均数より多い土地の保有を許さなければならない。われわれが農民の土地平均分配の要求を支持するのは、広範な農民大衆が立ちあがって封建的地主階級の土地所有制度をすみやかに消滅するのを有利にするためであって、絶対平均主義を提唱するのではない。絶対平均主義を提唱するものがあるとすれば、それはあやまりである。いま農村でよくみられる、商工業を破壊し、土地分配の問題で絶対平均主義を主張する考え方は、その性質からいって反動的な、たちおくれた、逆行的なものである。われわれはこうした考え方を批判しなければならない。土地改革の対象は、地主階級と旧式富農の封建的搾取制度だけであり、またそうでなければならない。民族ブルジョア階級の利益を侵してはならないし、地主、富農の経営する商工業も侵害してはならず、とりわけ、搾取していないかほんのわずかしか搾取していない中農、独立勤労者、自由職業者、新式富農の利益を侵さないよう注意しなければならない。土地改革の目的は、封建的搾取制度を消滅すること、つまり階級としての封建的地主を消滅することであって、地主個人を消滅することではない。したがって、地主には農民とおなじように土地、財産をわけあたえ、また、生産労働を学ばせ、かれらを国民経済生活の隊列に参加させなければならない。広範な人民大衆からひどくうらまれており、たしかな証拠のあがっている、重大な罪をおかした極悪の反革命分子と悪覇は、処罰してよいしまた処罰すべきであるが、その他のすべてのものにたいしては寛大な政策をとり、やたらに殴ったり殺したりすることをいっさい禁止しなければならない。封建的搾取制度を消滅するには、段どりが必要である。つまり戦術が必要である。周囲の状況の許す範囲と、農民大衆の自覚の程度、組織化の程度におうじて闘争の戦術を決定しなければならず、一瞬のうちに封建的搾取制度の全部を消滅しようとしてはならない。土地改革のさいの全打撃面は、中国農村の封建的搾取制度の実情からみて、一般に農村の戸数の八パーセント前後、人数にして一〇パーセント前後をこえてはならない。旧解放区と準旧解放区では、この数字はもっと少なくなるだろう。業際の状況をはなれ、あやまって打撃面を拡大することは危険である。新解放区ではさらに、地区をわけ、段階をわけなければならない。地区をわけるというのは、しっかり保持できる地区に力を集中して、適切な、その土地の大衆の要求にあった土地改革活動をすすめなければならず、しばらくのあいだまだしっかり保持することの困難な地区では、いそいで土地改革をおこなわず、当面の状況からみて大衆に有利で、しかも可能な活動だけをやって、状況の変化をまたなければならない、ということである。段階をわけるというのは、人民解放軍が占領したばかりの地区では、富農を中立化させ、中小地主を中立化させる戦術をたて、それを実行して、打撃面を、ただ国民党の反動武装組織を消滅し劣紳、悪覇に打撃をくわえるにとどめるというところまで縮めなければならない、ということである。すべての力を集中してこの任務を達成することを、新解放区における活動の第一段階とすべきである。そのうえで、大衆の自覚の程度と組織化の程度の高まりぐあいにおうじて、封建制度全部を消滅する段階へ一歩一歩発展させていくのである。新解放区で動産と土地を分配するのは、いずれも周囲の状況が比較的安定し、圧倒的多数の大衆がじゅうぶんに立ちあがってからでなければならない。そうでないと、冒険することになって、確実性がなく、有害無益である。新解放区では、抗日の時期の経験をじゅうぶんに活用しなければならない。区別をつけて封建制度を消滅するというのは、つまり、地主と富農との区別、地主でも大、中、小の区別、地主、富農のなかでも悪覇と悪覇でないものとの区別をしなければならないということで、土地の平均分配、封建制度の消滅という大原則のもとに、一律にではなく区別をつけて、ちがった状況にある人びとにたいするちがったあつかい方をきめ、実施しなければならない、ということである。われわれがそのようにするならば、人びとは、われわれの活動をまったく情理にかなったものと感ずるにちがいない。農業生産を発展させること、これが土地改革の直接の目的である。封建制度を消滅してはじめて、農業生産を発展させる条件がえられる。どの地区でも、封建制度を消滅し土地改革の任務をなしとげたらすぐに、党と民主政府は農業生産を回復・発展させる任務を提起し、農村のあらゆる動員可能な力を農業生産を回復・発展させる面にうつしていき、協同互助組織をつくり、農業技術を改善し、種子の選別を提唱し、水利事業をおこして、増産を実現できるようにしなければならない。農村における党の精力の最大の部分は、農業生産と町の工業生産を回復・発展させることにそそがれなければならない。農業生産と町の工業生産を急速に回復・発展させるためには、封建制度を消滅する闘争にあたって、使用できる生産手段、生活物資をすべて最大限に保存するようあらゆる努力をはらうことに注意しなければならず、だれであろうと生産手段や生活物資を破壊したり浪費したりするものにはだんこ反対する措置をこうじて、ぜいたくな飲み食いに反対し、節約に注意しなければならない。農業生産を発展させるためには、自由意志の原則にもとづいて、現在の経済的条件のもとで許される、私有制を基礎とした各種の生産および消費のための協同団体を一歩一歩組織していくよう、農民にすすめなければならない。封建制度を消滅し、農業生産を発展させることは、工業生産を発展させ、農業国を工業国にかえるという任務の基礎をすえるものであって、これが新民主主義革命の最終目的である。
同志諸君が知っているように、わが党は中国革命の総路線と基本政策をきめ、またそれぞれの具体的な活動路線とそれぞれの具体的な政策をきめている。だが、多くの同志は、わが党の具体的な個々の活動路線と政策はおぼえていても、わが党の総路線と基本政策は忘れがちである。もしほんとうにわが党の総路線と基本政策を忘れてしまうなら、われわれは盲目的な、中途はんぱな、ぼんやりした革命家となり、具体的な活動路線と具体的な政策を実行するにあたって、方向を見うしない、右に左に動揺し、われわれの活動をあやまらせることになるだろう。
もう一度いおう。
プロレタリア階級の指導する、人民大衆の、帝国主義、封建主義、官僚資本主義に反対する革命、これが中国の新民主主義革命であり、これが当面の歴史的段階における中国共産党の総路線であり、基本政策である。
貧農に依拠し、中農と団結し、段どりをおい、区別をつけて、封建的搾取制度を消滅し、農業生産を発展させること、これが新民主主義革命の時期における、中国共産党の土地改革活動での総路線であり、基本政策である。
〔注〕
〔1〕 中国共産党中央のこの指示は、一九四八年二月二十二日にだされたものである。この指示は、各解放区の土地改革と整党活動の経験を総括し、土地改革と整党活動の一連の政策と方法をきめ、この二つの活動をすすめるうえでうまれた一部の地区の「左」翼的傾向を重点的に是正した。
〔2〕 十二月会議については、本巻の『当面の情勢とわれわれの任務』の解題を参照。
〔3〕 一九四ハ年一月十三日、中国共産党中央山西・綏遠分局のだした「階級所属の決定をあやまったばあいの是正および中農との団結についての指示」をさす。指示の内容は五項目にわかれている。その要点はつぎのとおりである。(一)階級所属をきめる基準が明確でないために、農民の自然発生的な要求のもとに、少なからぬ人があやまって没落地主または富農ときめられ、とりわけ富裕中農があやまって富農ときめられて、中農との団結に影響をおよばした。これはあやまりである。(二)上述のあやまりについては、適切な措置をとり、あくまで農民を説得して、あやまりをあらためさすべきである。すでにとりあげた財物については、適宜これを返還しなければならない。(三)階級所属をきめるにあたっては搾取関係を唯一の標準とすべきことを、農民と幹部に説明すること。階級所属をあやまってきめたものは、あらためるべきである。(四) 貧・雇農に依拠し、中農と団結する原則をしっかりつかむこと。農民代表会議や農会の指導機関のなかで、中農が三分の一前後の割合をしめるようにするとともに、租税の徴収、土地改革にあたって、かれらの利益に配慮をくわえること。(五)責任者は、農村における党の階級政策についてしんけんに研究すべきである。中農にたいする党の政策にしたがって、あやまりはすべてあらためなければならないが、同時にそれは、大衆をつうじてあらためるようにしなければならない。以上五項目の指示をだすと同時に、山西・綏遠分局はまた、「商工業の保護についての指示」をだし、土地改革における商工業侵害の傾向を是正した。
〔4〕 ここでは、購買販売協同組合をさす。




