第9話
「てめえが最近噂になってる女か……。部下たちを倒していい気になってるんじゃないぞ」
「あら? 私って噂になっているの?」
「冒険を始めて結構時間が経ちましたからね」
「ねえねえ、あのおヒゲうちがやっつけていい?」
トミコが雷魔法を唱えようとする。
「だめよ。あなたがやると丸焦げになって懸賞金がもらえないから我慢してね」
「京香のレベル上げが目的なのを忘れるなよ。盗賊は弱くて経験値が少ないから俺たちが余計なことをするとレベルが上がらないぞ」
「ふざけやがって……。お前ら全員切り刻んでやるぜ!」
剣を振りかざして襲いかかってきた盗賊の頭に京香が足払いをした。
「なに!?」
「必殺……」
体勢を崩した盗賊の頭を逆さに持ち上げて頭頂部から地面に叩きつけた。
「ぐふっ!」
「タイガードライバーだ!」
「死んだんじゃないですか?」
「かっこいい……」
倒れた盗賊の頭はピクリとも動かない。
「見てみろよ。お宝がドッサリあるぜ」
「それは近隣の村や旅人から奪ったものじゃないですか?」
「それなら城に届けたほうがよさそうね。私たちは盗賊たちに懸かっている懸賞金をいただきましょう」
城で盗賊たちを引き渡して懸賞金をもらった帰りに広場で人だかりを見つけた。
「失礼。みなさんなにをしているのかしら?」
「御触書が出たんだ。曹操を魔王に認定するから他の魔王同様に討伐しろだってさ」
「ただでさえ劣勢なのに大変なことになったのう……」
町の人たちの顔は暗かった。
「いずれ徐庶さんと戦うことになるんでしょうか……」
「私が曹操さんの立場なら徐庶さんを重用しないけど? 裏切るかもしれない軍師には重要な相談事なんてできないから事務作業ぐらいしか任せられませんわ」
「教会に行くのを忘れるなよ」
教会の女神像に祈る京香。
『あなたのレベルが2つ上がりました。4ポイントを上昇させたい能力に振り分けてください』
レベル 9↑
腕力 10↑
体力 6
技 6↑
知力 5
素早さ 6↑
幸運 5
「それっぽい強さになってきましたね。今が1番楽しい時期なんじゃないですか?」
「次に行くダンジョンをガッツリやり込む予定なので次のレベルアップは急成長するわよ」
ショップで物資を買う京香たち。
「あれ? ポーションは買わないのか?」
「そんなものに頼らないわ。1号と2号は水と食料の荷物持ちをしてくださる? トミコは戦いで私を手伝ってね」
「わかった」
「体の構造や戦闘力を考慮すると確かにそれが適任ですね」
買い物が終わった京香たちは自宅でダンジョン攻略の計画を話し合う。
「今日はもう遅いので明朝に出発します。これから挑戦するダンジョンは広大みたいだから物資が尽きたり戦利品でいっぱいになると戻ってきて物資を補充して再挑戦という流れになるわよ。それと今はまだ余裕がないからお店は冒険を休む日にしましょう」
2号が京香に質問した。
「そういえばなんでさっきポーションを買わなかったんだ? 必須だと思うんだが」
「それはゲームと違ってポーションをスムーズに使えるとは限らないからですわ。ポーションが必要になるということは身動きが取れないくらい大けがをしているということよ」
「荷物が圧迫されないですしそもそも京香さんがけがをしたところなんて見たことありませんしね」
トミコが水の入ったビンの上をクルクル回る。
「うちビンの蓋を開けられない」
「なるほどな」
翌朝に出発した京香たち。
「遺跡まではスライムしか現れないので楽ですね」
「思ったんだが、急ぐ旅じゃないからスライムや盗賊をコツコツ倒して生活するのもいいんじゃないか?」
「私1人ならそうしていたでしょうね。でもそれだとあなたたちが退屈するでしょう?」
「学校楽しい。遺跡も行きたい」
遺跡の入り口前に到着した。
「ここから地下に続いていく遺跡らしいですわ」
遺跡の中から学校で見かけたことがある冒険者が出てきた。
「あらごきげんよう」
軽く会釈して入れ違いになった。
「僕たちと同じ時期に冒険者になった人が1人で出てきましたね。装備も軽装だったし入り口付近は簡単なんでしょうか」
「まあ最初の町の近くにあるダンジョンだから初日にここに来た冒険者もいるだろうな」
遺跡の中はかがり火が灯されていて明るかった。
「道幅が広くて思っていたより大きい遺跡だな。ランタンを持ってきたけどかがり火が設置されているから光源には困らなそうだ」
「逆にこれだけ明るいと暗闇からの不意打ちができませんわね」
通路を歩いているとスライムが道を塞いでいた。
「ふんっ!」
京香が両手の手のひらでスライムを叩きつぶした。
「攻撃力を上げた成果ですね。でもせっかくだから違うモンスターも探しましょうよ」
「気持ちはわかるけど囲まれないように全て倒していくわよ」
次は通路の角からスケルトンが現れた。
「新しいモンスターが来たぞ」
剣を持ったスケルトンが盾を構えながら突進してきた。
「なかなか賢いようね」
向かってくるスケルトンに京香が盾ごとドロップキックをして壁まで吹き飛ばした。
ガシャン!
そして転倒したスケルトンの頭部をかかと落としで粉砕した。
「すごい!」
「え?」
知らない声が聞こえて振り返る京香。
「いつも教室で一緒に授業を受けている馬岱です! あなたは確か京香さんでしょう? あなたの強さに感動しました!」
強引に握手されて腕を激しく上下される。
「僕はまだレベル2なんですけど京香さんはレベル30くらいですか!?」
「私のレベルはまだ9ですわ。バイアスで強そうに見えるだけであなたと同じ初心者よ」
ポカンとする馬岱。
「よかったらあなたのレベル上げを手伝ってあげましょうか? まあダンジョン攻略のついでだけど」
「え!? いいんですか!?」
「クラスメイトに死なれたら寝覚めが悪いしな」
「水や食料を持っているので必要なら言ってください」
「仲間! 仲間!」
こうして偶然出会った馬岱とともにダンジョン攻略をすることになった。




