第6話
「いつか私も温泉を掘り当てたいですわ」
京香はブンゴ国に戻って温泉に入っていた。
「しかし別の国に行った瞬間にクエスト難易度が跳ね上がって驚いたな」
「近場から順番にクエストをやらないと痛い目に遭いますね」
「リスクを承知で判断したのですが甘かったですわね……。取り返しのつかない失敗をしないためにブンゴ国の授業とクエストをやりましょう」
次の授業は校長が校庭でやるようだ。
「今回はモンスターについて教えます」
校庭にはモンスターの死体が並んでいた。
「モンスターを倒したら町まで運んでお金に変える必要がありますが運搬が大変です。なので必要な部位だけを解体して持ち帰りましょう。この授業ではその解体技術を習得してください」
「今サクッと無茶を言わなかったか? 1回の授業で習得できないだろ」
「魔法の類じゃないですか? ゲームでモンスターがお金を落とすのは解体して売っている描写を省いているだけと聞いたことがあります」
1号の言う通り解体は魔法の授業に近かった。
「解体用のナイフは魔法ショップで売っています。これには魔法の力が宿っていて各部位を損傷させずにキレイに切り取ることができます」
校長が生徒に解体を手取り足取り教えていく。
「1人で冒険する人もいるでしょう。お金が目的なら軽くてお金になる効率のいい部位を持っているモンスターを選ぶ必要があります。当然そういったモンスターは強かったり探すのが大変ですので現在の自分の実力と相談してください」
授業が終わった京香は魔法ショップに来ていた。
「解体用の魔法のナイフは必須なのでさっそく買っておきましょう。ドレスが汚れるからエプロンもほしいわね」
ナイフを買って店を出ると誰かが叫んだ。
「強盗だ!」
声がする方向を見ると袋を担いだ男が走って逃げていった。
「捕まえるぞ!」
「ええ!」
京香たち3人は男を追いかけた。しかし男の足は速く追いついたときには町からかなり離れた廃墟だった。
「逃がしませんわ!」
「チッ! しつこい女だ!」
京香は男にタックルした。
「うわっ!」
そして倒れた男の脚を持ってジャイアントスイングで投げ飛ばした。
「うぎゃっ!」
男は廃墟の壁に激突して崩れてきた瓦礫の下敷きになった。
「見てください! 硬貨が入った袋がここにもありますよ!」
「ここを拠点に他の店も襲ってたのか」
硬貨は全部で3000枚はあった。
「……どうする? 今なら誰も見てないぞ?」
「ネコババですか!? いや、でもそれは……」
男は気絶している。1号と2号は京香を見た。
「ネコババなんてしませんわよ?」
京香の即答に1号と2号は驚いた。
「金持ちになりたいんじゃなかったのか?」
「これがあれば今後の生活や冒険が楽になりますよ?」
京香は険しい顔で言った。
「これは罠ですわ。このゲームの製作者から人間性を試されているのです。なのでここは逆に熨斗をつけて返しますわよ」
「そういえば悪人になったらレベルアップできなくなるんだったな」
「熨斗をつけて返すのは製作者への挨拶というわけですか」
京香は盗まれた金を被害者たちに返す際に自分の持ち金から金貨100枚を見舞金として渡した。
「被害に遭われた方たちに私からの気持ちですわ」
「おお! 盗まれたお金を取り戻すだけでなくお気遣いまでしていただけるとはありがとうございます。お礼がしたいのでこちらへどうぞ」
案内された場所は大通りに面した空き家だった。
「ここは1階が店舗で2階が住居となっています。あなたの冒険にお役立てください」
「まあ……。こんなにステキなお家を? お言葉に甘えさせてもらいますわ」
立地がいいだけでなく中は十分な広さもあった。
「施しは受けないんじゃなかったのか?」
「これを断ると嫌味になってしまうでしょう?」
「なるほど……。京香さんの行動を予想してそれに対する回答も用意されていたんですね」
これで住居と店舗を同時に手に入れた。
「商売を始めるなら僕たちのどちらかが留守番ということですか?」
「まだあなたたちの力が必要だからお店は仲間が増えてからにしましょう。とりあえずクエストを見つけてまたお金を稼がないといけませんわ」
町に出てクエストを探していると何気なく見上げた遠くの空に謎の物体を見つけた。それはどんどん近づいてくる。
「緑色? 翼があって……」
「ドラゴンです」
いつの間にか隣に知らない男が立っていた。そしてドラゴンは町を攻撃し始めた。
「グワッ……ガァーッ!」
ドラゴンのブレスから逃げ惑う人たち。
「うわーっ!」
「ド、ドラゴンだ! 助けてくれ!」
「くっ!」
京香はドラゴンに向かって走った。
「あなたたちは魔法で援護して!」
即座に1号と2号がドラゴンに火球の魔法を撃った。
「グルッ?」
ダメージが入っていないようだったが一瞬ドラゴンの動きが止まった。
「はあっ!」
京香がドラゴンの頬に回し蹴りをした。
「ギャアッ!」
そしてすかさずドラゴンの腹部にジャンプして拳をめり込ませた。
「グアッ!」
「ほう……」
京香の戦いに感心する謎の男。さらに追撃しようとした京香から逃げるようにドラゴンが飛び去っていった。
「近くの森に逃げ込んだみたいですね」
「あなたは?」
自己紹介をする男。
「私は徐庶という者です。すぐに追わないとドラゴンは傷を癒してまた来るでしょう。魔法を使えるので仲間にしてくれませんか?」
「徐庶って有名な軍師ですよ!」
「勝ったな。温泉に行ってていいか?」
「それは心強いですわ。私は京香と申します。よろしくお願いしますね」
ドラゴンが逃げた森にはスライムが生息していたはずだが1匹も見当たらなかった。
「スライムたちはドラゴンが怖くて逃げたのかしら? 邪魔が入らず好都合ですわ」
「……いました! どうやらドラゴンは魔法で傷を回復しているようですね」
徐庶が魔法の杖を構えた。
「先ほどと同じように私が魔法でドラゴンの動きを止めますからその隙にお願いします」
徐庶がドラゴンの上空に爆発魔法を使った。
「グガッ!」
徐庶の魔法が直撃したドラゴンはダウンしてもがいている。
「あなたたち! 火球をドラゴンに撃ちなさい!」
1号と2号に命令しつつドラゴンにダッシュする京香。
「グルルッ!」
起き上がろうとしたドラゴンの膝を台にしてシャイニングウィザードを決めた。
「ギャッ!」
「今よ!」
ドラゴンに撃たれた火球を京香がパンチとキックでさらに威力を上げた。
「グオーッ……」
炎に包まれたドラゴンが崩れ落ちる。いつの間にか野次馬ができていた。
「あいつらドラゴンを倒したぞ!」
「魔法もすごかったがあの姉ちゃんの使った技はなんだ!?」
野次馬だけでなく1号と2号もテンションが高かった。
「ドラゴンを倒した経験値が楽しみですね!」
「店を始めるための商品が用意できたな」
「そうですわね。ドラゴンの素材を入荷したという宣伝はバッチリのようですし」
ドラゴンの死体の周りで多くの人が祭りのように騒いでいたが徐庶だけは冷静だった。
「なぜドラゴンがこんなところに……」
すると1人の男が集団に駆け寄ってきた。
「大変だ! 城が襲われてるぞ!」
「なんですって!?」
知らせを聞いた京香たちは町へ急いだ。




