第3話
「完成ですわ!」
京香の前に高さ60センチくらいの藁人形2体が立っていた。
「稲藁を分けていただいてあなたたちを編み直したのよ。どうかしら?」
「悪くないですね」
「確かにこれなら荷物を持ったり戦ったりできるようになるな」
動いて確認している藁人形の可動域は広そうだった。
「ついでに名前も決めましょう。丁寧な口調のあなたが1号で乱暴な口調のあなたは2号ね」
「まさか名前をつけていただけるとは感激です」
「それより次の授業に出るんだろ?」
教室に入ると校長による2回目の授業が始まる。
「今回はレベルアップに関する授業です」
教卓の上に女神像が置かれている。
「この女神像は全国の教会にありますが授業のためにお借りしてきました。この女神像にお祈りをすると自分のステータスを確認できます。そして十分な戦闘経験値が貯まっていればレベルアップできるのです」
生徒が順番に女神像の前で祈りを捧げる。そして京香の番がきた。
「屋敷にあった私の像のほうが美しくてよ?」
「失礼なことを言うと怒られますよ」
女神像に祈ると京香のステータス画面が表示された。
レベル 1
腕力 4
体力 3
技 4
知力 4
素早さ 3
幸運 4
「平均的だな。スライム数匹しか倒してないからレベルアップもしないし」
「各能力は低い数字で管理されているみたいですね」
1号と2号が京香のステータスの感想を言った。そして京香が校長に質問した。
「この子たちもレベルアップできますでしょうか?」
「レベルアップには2つ注意点があります。1つ目は人間しかレベルアップできないこと。モンスターや京香さんの藁人形のような存在は作られた時点でステータスが確定します。ステータスの確認はできるのでやってみてください」
京香が1号と2号を女神像の前に立たせる。
レベル 12
腕力 5
体力 18
技 3
知力 4
素早さ 4
幸運 20
「1号も2号も同じ素材と同じ作り方だからステータスがまったく同じですわね」
「現時点だと京香より俺たちのほうが強いな。京香が藁を編むのが上手いからか?」
「我々は作られた存在であるがゆえに頑丈だったりしますからね」
校長が説明を続ける。
「2つ目の注意点は悪人はレベルアップできないということです。これは悪人に力を与えないためだと言われています」
京香がまた質問する。
「レベルを上げきった人が悪人になったら意味がないのでは?」
「レベルは下がることもあるんです。この辺りの話は次の授業でやりますね」
授業が終わって食堂で午後の予定を相談する。
「京香さんがレベルアップするところを見てみたいので町の外でモンスターと戦いませんか? 生活費も必要でしょう?」
「いざとなったら体力がある俺たちが盾になってやるぜ」
「そうですわね。前回の森はスライムしか出ませんでしたから別の場所に行ってみましょうか」
町を出て隣の国とを結ぶ街道を歩いてモンスターを探す。しばらくすると盗賊団を発見した。
「まだこちらに気づいてませんわね……」
盗賊団の中に数人の子供の姿もあった。
「あの子供たちは誘拐されたのか?」
「助けますか?」
「待って。あれを見てごらんなさい」
盗賊団をゴブリンたちが襲撃した。
「今ダ! 攻撃シロ!」
「チッ! 油断したぜ! 応戦しろ!」
「彼らが疲弊したところで漁夫の利といきますわよ」
両者の力は拮抗していたが数で盗賊団が押され出した。そして盗賊団の頭が撤退の指示を出す。
「しょうがねえ! ガキどもを連れて逃げるぞ!」
「今ですわ!」
不意打ちで京香が盗賊団の頭に飛び蹴りした。
「ぐはっ……!」
「お頭!? 誰だてめえは!?」
「ステータスが低いからかパンチとキックしかできないみたいですわね」
1号と2号もゴブリンに体当たりした。
「ギャッ!」
「京香より俺たちのほうがダメージを与えてるな」
「この調子で京香さんの経験値にしましょう!」
京香たちが戦っていると子供たちがある方角を見て叫んだ。
「パパー!」
子供たちの親と思われる武装した男たちがやってきた。
「俺たちも加勢するぞ!」
「変な女と藁人形の次は村の自警団だと!?」
「う、うわーっ!」
数で優勢になった京香たちは盗賊団とゴブリンを全て倒した。
「意外と楽勝だったな」
「最初の町の近くで起きるクエストだから難易度調整されていたのかもしれませんわね」
途中から加わった自警団の男たちが盗賊団を縛っていく。
「村の子供たちを助けてくれてありがとう。盗賊団を城に引き渡すからそこで懸賞金を受け取ってくれ」
「ゴブリンの死体はどうしますか?」
ゴブリンの死体が山積みにされている。
「今の俺たちに運ぶ手段はないぞ」
「じゃあ捨て置きましょうか。まだ利用方法もわかりませんし」
城に戻って盗賊団に懸かっていた懸賞金を受け取る。
「少しお金が貯まってきましたわ」
「金もいいけどレベルアップしようぜ」
「そうですね。あれだけ戦ったんですからレベルアップできるでしょう」
女神像がある教会に行く。中に入るとカラフルなステンドグラスに囲まれた中央にその女神像が置いてあった。
「おや、礼拝ですかな?」
司祭が話しかけてきた。
「レベルアップしたいのですけど」
「では女神像の前で祈りを捧げてください」
京香が女神像の前で祈る。すると京香の体を光が包んで女性の声が聞こえてきた。
『あなたのレベルが1つ上がりました。2ポイントを上昇させたい能力に振り分けてください』
レベル 2↑
腕力 4
体力 3
技 4
知力 4
素早さ 3
幸運 4
「さてどうしましょう?」
「欠点をなくしたらいいんじゃないか?」
「1つの能力を特化させるのもいいですね」
少し考えた後にステータス画面をタッチして上昇させる能力を決めた。
レベル 2↑
腕力 4
体力 4↑
技 4
知力 4
素早さ 4↑
幸運 4
レベルアップが終わると京香を包んでいた光が消えた。
「話しかけてきたのは女神さまかしら?」
「レベルアップの効果はどんな感じですか?」
京香はシャドーボクシングをしてみる。
シュッ! シュッ!
「体が軽く感じるような? でもまだまだ本来の私ではありませんわ」
「レベルが1つしか上がらなかったのは自警団の加勢が入ったからか? 俺たちが京香の経験値を奪っている可能性もあるが」
「とりあえず今日はもう遅いので食事にしますか?」
食堂で夕食を食べながら今日の戦闘を振り返る。
「私も人のことを言えませんがあなたたちの攻撃手段が体当たりだけは寂しいですわね」
「金に余裕ができたら俺たちに武器でも買ってくれよ」
「でもそうすると荷物が持てなくなりますね」
1号と2号の運用に悩む京香。
「もう少し学校の授業を聞いてから判断しましょうか」
今夜から寮生活になる。順調に授業とクエストを両立していた。




