Ⅸ:あっさりと叶った願い
「気づいたのか」
「長くないのですね」
ネイティアン様が確認してくるので、答えたら大きく息を吐いた。
「特殊なスキルを持つ者は使えば使うだけ、命が短くなる。隣国の王子に魅了スキルというものを持った者が居るが」
「千里眼のスキルで確認しました」
ネイティアン様が切り出した話に頷く。
「魅了スキルも特殊だ。使い続ければ長くは生きられぬ。だが、あの第三王子は殆ど使わずに生きてきた。人と会わないようにしてな。婿入り先の公爵家の一人娘も特殊なスキル持ち。だが、あれは魅了スキルや千里眼スキルとは違う性質だ。特殊なスキルだから、使い続ければ長く生きられないのは変わらない。だが、スキルを弱体化させるスキルという。
どちらかと言えば料理人スキルみたいなもので、常時スキルを使用しているようなものだ。婿入りする第三王子のために使用しているのではなく、ずっと常時スキルを使用している状態。そういう状態なら長生き出来るらしい。敢えて使おうと思ってスキルを使用する機会が多ければ、長くは生きられない。そういう特殊なスキルだ」
随分と詳しいのだな、と思う。
「詳しいのですね」
「調停者という特殊なスキルの所為だ。そのスキルを持って生まれた者は、特殊なスキルを持つ者についての観察記録を付けるようだ。そのスキルを持って生まれた者はいつの間にか、その観察記録が自分の元にある。私もいつの間にか私の前やその前の調停者スキルを持った者の観察記録を手にしていた。魅了スキルやスキル弱体化のスキルについては、その観察記録に書かれていた。他にも特殊なスキルについて、いくつか観察記録がある。スキル弱体化のスキルみたいに、常時使用している状態のスキルは他にもある。そのどれもが、敢えて使わないなら長く生きることが出来るようだな。魅了スキルを好き放題使用していた者は、長生きしなかったことが記録されている。ただ私のところにある観察記録の中には、千里眼についての記録は無い」
それだけ珍しい特殊なスキルなのか、単に調停者スキルを持つ人が会ったことが無かったからなのか。
「それではネイティアン様が観察し、記録したいのは私の千里眼スキルについて、ですか」
「聡いな」
さとい。どういう意味か尋ねたら、話を理解しているな、という意味らしい。
「私で良ければなんでも尋ねてください」
千里眼のスキルについて、何を尋ねたいのか分からないけれど、答えられることは答えよう。
あの部屋から出て、違う場所で死にたい。
あっさりとその願いが叶えられたのだから。
「そうか。では褒美は何が良い」
褒美の言葉は知っている。何かが出来たり、約束を守れたり、頑張ったり、やり遂げられたり。そういったことの祝いに、何かを食べられたり、物をもらったり出来ること。
「尋ねられたことに答えられたら、褒美がもらえるのですか」
「そうだな」
信じられなくて確認すれば当然だ、とネイティアン様が頷く。
「褒美、というのは初めてです」
私の言葉にネイティアン様は、「そうだろうな」と頷いた。それもまた、酷い扱いの一つらしい。そんなことはどうでもよくて。
「あのネイティアン様」
「なんだ」
「ケーキというものを食べてみたいです」
甘いお菓子、食べたことが無い。ネイティアン様は分かった、と言った後、なんのケーキが食べたいのか尋ねられた。
「ネイティアン様が食べた中で美味しいと思ったケーキでお願いします」
千里眼のスキルで見たことを話したら、ネイティアン様は片手で顔を覆った。
「調停者のスキルを使用しているときは、腹が減りやすい。何故かは分からん。だが、まぁ分かった。私が美味しいと思ったケーキだな。いいだろう」
そうしてネイティアン様が思い付く質問に答える度に、苺の生クリームケーキや、チョコレートケーキなどが出て来た。どれも美味しいケーキだ。
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