探偵募集中♪
ーー後日。
「ねぇねぇ、これ見てよ」
アルテミスの言葉に、ルシフェルは机の上に飛び乗った。
そこにあったのは、新聞。
《砂漠の街で少女が失踪。警察は事件性があると見て、調査》
新聞の見出しにはそう書かれていた。一見すればただの、新聞である。
でも、そこに貼り付けられていた写真にあったのは、この間助けた少女だった。
「あの依頼主さん、ちょっと不気味だったもんね……なんか、すっごく怪しい…」
すると、ドア鈴がカランと乾いた音を立てた。
「いらっしゃいませー。ようこそ魔女探偵事務所へ」
そこに立っていたのは、如何にも都会から来たような……そんな、身なりのきちんとした女性だった。
「どうしました?観光で、迷子になったとか……なら、街の方まで案内とか」
「あの、依頼主さんに聞いていませんか?その、専門家とかなんとか……」
それを聞いたアルテミスは満面の笑みを浮かべて、手を差し伸べた。
「あなた、魔女探偵事務所の探偵になりませんかっ?」
それを聞いた女性は苦笑いを浮かべる。
「あの……、直球すぎませんか?まだ、自己紹介すらしていないのですが」
「給料は、寿命三年分。それに、精神をキレイに整えるメンテナス付き。お安いでしょ……」
「そんなので喜ぶのは、どっかのお馬鹿さんか、魔女くらいだと思います……」
「え、貴方魔女じゃないの?」
気まずそうに、女性は頷く。
アルテミスは後ろを振り返って、そのまま事務椅子に座った。
「魔女に近寄って来る人って少ないからさ……貴方も、魔女なのかと思っちゃった」
「お金がないんですよ…、依頼主さんが銅貨30枚払ってくれるって言うから、仕方なく来たんです…」
「じゃあ、是非魔女探偵事務所で働かない?都会だったら平均給料だけど、ここだったら大金だよ」
「じゃあ、探偵さんの今の所持金は?」
「ステンレス硬貨1枚……」
「めっちゃ、貧乏じゃないですか……。魔女って、そんな貧乏なものなんです?」
女性の質問に、アルテミスは涙目で答えた。
「皆、だいたい雇われてるから…。平均給料は金貨25枚くらいだよ。でも、私はいい子だからこんなに貧乏なの……」
「魔女って、悪いこと沢山すればするほど給料高くなるんですか?よくわからない世界ですね」
「本当だよっ、だから、ね?魔女探偵事務所に……」
「結構です」
* * *
アルテミスは、机の上にコーヒーの入ったカップをを二個置いた。
「すいません……こんな安いもので」
「いえいえ、大丈夫ですよ。私も、よくコーヒーは飲みますので」
「……それで、どんなことが聞きたいんです?」
「砂漠から海が見えることってあるかって話なんですけれど……」
「えーっと……砂漠が海化するという現象は極めて珍しいですが…。無いわけではありませんね」
「じゃあ、遠くから見ると砂漠に見えるっていうのは……、本当に水が沸いているわけではないんです」
それから、その女性は少し考え込んだ。
「……あるにはありますよ」
その女性の言葉に、アルテミスは息を呑む。
「簡単に言えば、錯覚ですね。砂漠なんかで起きやすい現象です。砂漠には木がありません。ですので、砂が太陽の熱で温められますよね。それと反対に空気中は冷たいままです。その間を光が通る時、密度の関係で曲がり、それが連続的に起きる。そうすると、一定の角度になると全ての光が反射して、水があるように見えることがあるんです」
「それが、海に見えた原因だと……」
「多分……そうだと思います」
* * *
それから、特に話すこともなかったので、そのままその女性は帰っていった。
「ねぇ、ルシフェル。あの人、魔女探偵事務所の探偵になってくれなかった……」
今にも泣きそうな顔で、アルテミスは訴える。
それから、アルテミスは魔女探偵事務所の看板に紙を貼り付けた。
《魔女探偵事務所、探偵募集してますっ♪》




