魔女の生き方
とはいっても、ここまで来てしまえば、女の子を探すだなんて容易なことである。
「ルシフェル、こっち来て」
怪しい声でアルテミスは言う。でも、怪しいのはそれだけでは無い、目の前に置かれた水晶の中には黒い霧が包まれていた。
「これをちょちょっと、動かせば……。ほら出来たっ、頭が燃えるように熱くなる呪い。これで、すぐ見つかるでしょっ」
効果範囲はちょうどこの街を包む混むくらい、見た目は写真に写っている少女と指定。ただそれだけだ。
「……ん?死なないのかって、そりゃもちろん。大丈夫だよ……あ、でも痛みに弱い人だったら死んじゃうかも」
ーーその時、予想した通り街の方から大きな悲鳴が響き渡った。
それを聞いて、アルテミスは迷わず駆け付ける。
ルシフェルを連れて、箒へ飛び乗った。
アルテミスが降りたのは、町外れの住宅街。そこには、写真に居た通りの少女が居た。
箒を片手に、アルテミスは近づく。
それから、少女の頭に手をポンっと載せて、それから目を見つめた。
アルテミスの目から解き放たれた光は、その呪いを解除する。
「ま、魔女だーっ」
周りの民衆は少女にも目をくれず、逃げ始める。気がついた頃には、周りにはもう誰も居なかった。
「せっかく、名探偵アルテミスが、事件を解決してあげたというのに…」
不機嫌な声色でアルテミスは言う。
「お姉ちゃん……誰?」
少女の質問に、アルテミスはその場にしゃがみ込んで、口を開いた。
「お姉ちゃんはね……探偵さんをやってるんだ」
「でも、魔女なんでしょ……?」
不安そうに、少女は尋ねる。
「大丈夫。お姉さん、呪いはかけるけど、人を殺したり、食べたりはしないから…」
「全然、安心できる答えじゃないです……」
「魔女さんだってね。本当はこんなことしたくないんだよ?でも……魔女に生まれた以上こうやって生きなきゃいけないの」
アルテミスの言葉に、その少女は不思議そうに首を傾げた。
「とにかく、世界には悪役も必要だってこと。でも、この話は誰にも言っちゃダメだからね。約束できる?」
それから、アルテミスは少女に小指を差し出した。少女はそれに答えるように、それをギュッと握りしめる。
「いい子だね。飴ちゃんあげる」
それから、アルテミスは懐からパンプキン味の飴を差し出した。
「ちょっと、付いてきて」
* * *
ーー後日、魔女探偵事務所にて。
「はい、例の子は見つけましたよ……はい……、え、写真の事については専門家を紹介してくれる?」
「……はい、……それでは後日、書類をお送りしますので……はい、ありがとうございます」
アルテミスは、机に足を乗せたまま、受話器を切る。
「ルシフェルっ、海の件に関しては専門家を紹介してくれるんだって……。楽しみだね。本当、依頼主さんは太っ腹」
それから、アルテミスは机の上に置いてあった羽ペンを取り、少女にの位置情報を書き始めた。
あの少女は、魔女の呪いを受けてしまった以上悪者となってしまう。
でも、しっかりと対策はとってある。
作戦その一、少女の呪いを解くと同時に、周りの人たちの記憶を消す。
作戦その二、話している間は、アルテミスがその少女の姿を隠し、その後少女を連れ去った事にする。
作戦その三、裏からこっそりと、その子を合流させる。
この作戦は全て成功した。つまり、何の問題も無いはずだ。
「この、名探偵アルテミスの最初の初仕事ーー目に焼き付けるが良い」
町外れの小屋の中、アルテミスは鼻を鳴らしてそう言った。




