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ようこそ魔女探偵事務所へ  作者: 大拓 陽
Still In love

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3/8

砂漠から見える海

「海だ……」

 時計台の前に来て最初にアルテミスが放ったのはその一言だった。

 呆然と立ち尽くすアルテミスを見てルシフェルは肩から飛び降りる。それから、海の方へと歩き出した。


「……ちょっ、危ないってば。ルシフェル泳げないじゃん」

 アルテミスは焦ってルシフェルを追う。

 でも、ルシフェルを追った先にあったのは海ではなかったそれは『砂漠』だったのだ。


 そもそも、砂漠に海があるはずないのに、誰が勝手に海があるだなんて受け入れたのだろうか。


 アルテミスは頭を抱える。

「あぁ…この名探偵アルテミスにも分からない謎だなんて……」

 アルテミスは猫背気味に後ろを振り返り、そのまま街の中心へ歩き始める。それを追うようにルシフェルも付いてきて、もう一度肩に飛び乗った。


 * * *


「おじさぁん。何でなの……」

 アルテミスは串焼きを片手に、屋台のおじさんに愚痴を言う。

「何でって……名探偵なんだろ? だからサービスしてやったのに。でも、確かに……この街にもそんな都市伝説があったな」


 ボソッとこぼしたその言葉にアルテミスは食いつく。

「それってどんなの?」

「お昼頃、偶に海を見たって奴がいるんだ。それが今や都市伝説になってるってところだな。お嬢ちゃんもそれを見たんだろう?」


 アルテミスは串焼きを口に含んだまま頷く。それを飲み込んでから、口を開いた。

「その、見た人って紹介してもらえない?」

「まぁ、いいっちゃいいけどよ......」


 * * *


「はじめましてっ、魔女探偵事務所の事務所長兼探偵のアルテミスですっ」

 待ち合わせの時間、元気に扉を開けながらアルテミスは言った。


「よぉ、お嬢さん」

 待っていたのはよくスラム街にいるヤクザっぽい大柄な男。でも、アルテミスは一歩も譲らず、名刺を渡した。


「怖がらねぇんだな……」

「まぁ、私魔女ですから……」

 胸を張って言うアルテミスの言葉にその男は目を見開いた。


「お前さん、魔女なのか……。まぁ、良い。それで、何が聞きたいんだ?」

「話が早くて助かります。砂漠で海を見たって本当ですか?」


「あぁ、あれは去年家族で街を歩いていた時の話だ。時計台の近くで写真を撮ろうと思ってな。俺は、カメラを持って少し離れた所に行ったんだ。その時、奥の方に海が見えたんだよ」

「……なるほど」

 アルテミスは相槌を打ちつつ、一生懸命メモ帳に情報を書き込む。


「一瞬何が起きたのかと思ったよ。砂漠とはいえ、港は近い。だから、津波が来たのかと思ったんだ。それで、パニックになって……家族に言われてようやく目を覚ました」

「なるほど。津波ですか……」


 ようやく、メモが終わったところでアルテミスは顔をあげる。

「ご協力、ありがとうございます」


 それから、ルシフェルを肩に乗せた後、アルテミスはその場から立ち上がる。


 そのまま、お辞儀をして部屋を出ると外では雨が降っていた。本を頭上に載せ、近くのカフェに駆け込んだアルテミスは、机の上にメモ帳を広げた。


「そもそも、あの女の子。どこにいるんだろう……」

 海に気を取られてすっかり忘れていたが、今回の依頼内容は写真に写った女の子を探せというものだった。

 でも、海の件が解決しないと、それが気になって仕方がない気もする。


「まぁ、並行して解決すればいっか。ねっ?ルシフェル」


 今回の調査で浮かんだ案としては、オアシス、または幻覚。

 しかし、前者はアルテミスの経験上、いきなり消えるだなんてあり得ないのでほぼ可能性はないと考えていいだろう。

 と、なると後者の方が現実的である。


 しかし、何故いくつかの人が同じ場所で、同じ光景をみるのか……。


 * * *


 ーーその日の夜は、近くにあった宿に泊った。

 お金が無いのにも関わらず、何故アルテミスはここまで金遣いが荒いのだろうか。


 お風呂から出たアルテミスは、鏡と向き合う。

 アルテミスの顔には、普段はない紋様が薄らと浮き出ていて……。それを覆い隠すかのように、アルテミスは前髪を被せる。


「……鏡……。反射……」

 それを見て、アルテミスの頭にある一つの考えが浮かぶ。海が近い、つまり砂漠に海の光景が反射する。いや、そんなことありえるのだろうか。


 髪を手櫛で溶かして、アルテミスは風の魔法で髪を乾かす。それから、コーヒーを淹れて、窓辺の椅子に腰掛けた。

「ねぇ、ルシフェル……全然っわかんない」


 困り街で、アルテミスは訴える。それを見て、ルシフェルは机に飛び乗った。

「もう無理っ……しばらくはあの子…探す」

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