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ようこそ魔女探偵事務所へ  作者: 大拓 陽
Still In love

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2/7

慰めの肉球

 魔道具と魔導所に埋め尽くされた部屋、一応事務所として機能してはいるが、いまだ従業員はゼロ。


 そんな魔女探偵事務所のオフィスチェアに座り、机に足を載せたまま呑気に考え事をしているのは、事務所長兼探偵であるアルテミスだった。

 それを叱るように、ルシフェルはアルテミスの頭を踏みつける。


「痛ったた……分かったって……ちゃんと仕事するから。ね?」

 アルテミスはルシフェルを目で追い、そのまま捕まえる。


 今回の依頼は、写真に写っている六歳くらいの女の子を探せというもの。

 オレンジの建物の奥に薄らと海が映っており、後ろには大きな時計台がある。

 街の背景を見るに、港の方だろうか。


「ルシフェル。行くよ」

 善は急げと言うし、アルテミスはその場所を探るべく、ルシフェルを抱えて箒を飛ばす。

 そして、看板を「close」に変えるのもお忘れなく。


 ーーアルテミスの長い髪が風になびかれ、段々と潮の香りが近づいてくる。

 近くの港に着地したアルテミスは、ルシフェルを下ろし港町をしばらく進んだ。


 途中、アルテミスは通行人に場所を尋ねたりもした。

「あの、すいません…この写真に写ってる場所。知りませんか?」

「知らないな……」


 そんな会話を何回繰り返しただろうか。

 休憩に立ち寄ったカフェで、ガラス越しに外を眺める。それから、アルテミスは思わずため息をこぼした。


 アルテミスが港町だと推測した理由はこれだ。

 ・オレンジ造りのレンガの建物が多い

 ・薄らと後ろに海が映っていた


 やはり、これだけの情報では絞り込もうにも絞り込めない。

 ただ、依頼主によると、これが近辺で撮られた写真であることには間違えないらしい。


 この都市にあるのは、湖、山、砂漠。アルテミスは少し悩んだが、もう少しここを探索してみることにした。


「おまたせしました。特製いちごパフェでございます」

 机の上に置かれたいちごパフェを見て、アルテミスは目を輝かせる。スプーンでクリームを掬って豪快に口に放り込んだ。


「美味しすぎる……ほっぺたがとろけちゃう」

 太陽が照らし、クリームはより一層輝く。それは、まるで雲のようだった。


 すると、そのパフェにかぶりつこうとルシフェルが飛びかかる。それを、アルテミスは片手で受け止めた。

「ダメ。これは私のパフェなんだから」

 怒り気味にアルテミスは言った。


 ーー「ごちそうさまでしたっ」

 アルテミスは無事、一人でパフェを完食。可哀想だったので、特別にルシフェルにもパフェを少し分けてあげた。


 店を出たルシフェルは、大きく背伸びをする。

 それから向かった先は、近くの役所。目的は、地図を入手するためだ。


 * * *


「あの、地図ってありますか?」

「もちろんでございます」

 職員は棚の中から地図を一枚取り出し、アルテミスに渡した。


「それから……あのっ、この写真の場所って分かりますか?」

 その職員は、これまでと同様に首を横に振る。

「ここには、時計台なんてありませんよ。海があるので……国外ではないでしょうか」


 そんな純粋な職員のアドバイスに、アルテミスはため息を吐いた。

 街の商店街を歩きながら、色んな人に聞いて周ってみたが、結局なんの成果も得られず、その日は終わってしまう。


 * * *


「ねぇ、ルシフェル……どう思う?」

 涙目で、アルテミスは尋ねた。

 でも、ルシフェルは喋れるはずもなく……でも、アルテミスを慰めるように肉球を顔に押し付けた。


「痛い……でも、ありがとう」


 結局候補として、一番大きいのは、ここ港ではなく砂漠のようだ。

 あの時計台が、ちょうど砂漠にあるという情報を入手したのだ。


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