意味の無い護身道具
「す、すごい美味しそう……」
夕食のディナーを目の前にしたアリスは目を輝かせていた。
それはそうと、アリスがすごく鬱陶しい。これじゃあ、任務が進められないじゃないか。
「アリスさん、これ見てください!お肉ですよ?一体……何年ぶりでしょうか」
と、さっきからアルテミスに言っては次の食べ物を探しにいくとーーちょっと、待った。アリスはこんなキャラだっただろうか。
少し違和感を覚えるも、アルテミスは今日の任務を思い出す。まず、最初にアルテミスがすることは勿論。例の魔女を探し出すこと。
普通の魔女を見つけるのはアルテミスでも難しいことだ。だが、しかしプロの魔女ほど分かりやすいものは無い。
アルテミスもかつて、プロの魔女だった。だからこそ、わかる。
プロの魔女の特徴がーー。
昔のアルテミスで例えてみるなら。
人間の振り(分かりやすい)ものをよく使う。これは人間の目には普通に移るだろうが、結局の所、こういう分かりやすいものは統一されている。
だからこそ皆同じ性格になる。
これは、いわゆる職業病みたいなものだ。
ところで、さっきからアルテミスをちらちら見てくるものすごーく怪しい人が居るのだが……。
アルテミスはワインを片手に、そちらをちらりと見た。
すると、彼女は焦って後ろを向く。
それをよーく見ると、どこかで見覚えがあるような……。
「キルケ?」
アルテミスはそう呟いて、彼女に近づいた。
そして、顔を覗き込むとやはりそれは「キルケ」。それに驚いた彼女はアルテミスから逃げるようにして走り出すが、まもなくして転倒。
アルテミスが手を差し伸べると、安心した様子でその手を取った。
「こっち、おいで」
それから、廊下へと呼んだアルテミス。流石に、自分の知り合いが暗殺されるわけにもいかないのだ。
「お久しぶり、キルケちゃん」
「いやいや、私の名前はキルケではなく、キオ・ルテケ。ですよそんな、神話の登場人物と同じ名前にしないでください」
と、修正するキルケにアルテミスは言った。
「それで、キルケちゃん。もしかして、魔女の仕事でここ来た感じ?」
「もしかして、アルテミスさんも?」
「いや、私はもう魔女として働いてないから……。でも、もしキルケちゃんがもし魔女としてここへ来たのなら、ちゃんと告げて貰わなくちゃいけないんだよね」
「何故ですか?」
「もしかしたら、魔女暗殺屋に殺されるかもしれないよ?」
キルケは震え上がって、一歩後ろに下がる。
「まさか、アルテミスさんが魔女暗殺屋に?」
それに対して、アルテミスは笑って答える。
「まぁ、間違っているとは言えないけれど……。私の同僚に魔女暗殺屋が居てね……、それで手伝ってる感じ」
すると、キルケはアルテミスを睨んでステッキを取り出した。
「ちょっと待った。魔女は魔法使えないでしょ」
「あぁ、間違えました。そう……これは脅し用」
焦って、キルケは偽物のステッキをしまい、ポーションを取り出した。
「だから、そのポーションはただのきゅうりジュースでしょ」
「あ、間違えた」
と、魔女に通じるはずもない護身道具を次々と出していくキルケーー」
「あの、私はキルケちゃんを助けようとしてるんだけど……」
「え?」
今更だろうか。本当に暗殺する気だったら、とっくのとうに暗殺してるし……。




