魔女の実態
「アルテミスさん、この宿ディナーが付いてるんだそうです」
そう言いながら、扉を勢い良く開けたアリス。
「もちろん。名探偵アルテミスさんは知っていますよ」
確かにその格好を見ると、ドレスにハイヒール。ドレスコードは完璧で、アルテミスの顔からもその気合の入れ具合が伝わって来た。
でも、本当の理由は。魔女の暗殺なのだがーー。
* * *
ーー少し前。
「何で、魔女が魔女を暗殺しなくちゃいけないの?」
正直、アルテミスはラデルことシュラインが勝手に暗殺でもするのかと思っていたのだが……。
「何言ってるんですか……アルテミスさんも一緒に殺るんですよ?」
と言ってきたのだ。
魔女が魔女を暗殺するだなんて……正直恨みの持っていないただの人間が、同じ人間を殺すようなもの。
魔女への殺人の罪が軽いこの国の法律は一体どうなっているのやら。アルテミスの不満げな顔を見て、ラデルは言った。
「何となく、思っていることは分かりますよ。ですが、魔女が居ることによってこの国の経済は回っているのもまた事実。魔女は裏の世界の立役者なんです」
「そんなこと、知ってるよ」
アルテミスは不貞腐れた顔で言う。
確かに、性格の魔女が多いのは事実。でも、だからといって全ての魔女が悪い訳でも無い、例えば、アルテミスのように。
世界には悪人が居るからこそ、善者がいるのだ。もし、この世界にそういう認識が存在しなかったら皆が平等になっていたはずだ。
でも、それは誰一人として大きな得を得ることができない。
だからこそ、魔女がこの世界に生まれた。彼ら、彼女らは常に冷たい目で見られながら生き続ける。何故なら、魔女は人間では無いのだからーー。
これは当たり前の世界、共通認識なのだ。
『金持ちの道具だということも知らずにーー』
「というか、昔から思うんだけどさ。魔女暗殺屋ってなんで、魔女を殺しているの?」
一般的に考えれば、魔女暗殺屋だからという答えが返ってきそうだったが、ラデルはアルテミスの尋ねたかったことを理解してくれた。
「それは……単純に言うとするならば差別、ですよ。今現在、魔女の9割以上が雇用されています。でも、人を苦しめるのは魔女本人。差別によって雇い主が罰を受けることなどありません。まぁ、代行業者的なところですね。まぁ、後は察してください」
そう言う、ラデルであったが、何故ここまで魔女の内部事情に詳しいのにも関わらず今でも、魔女暗殺屋を続けるのか。アルテミスはとても不思議な感情を抱いた。
「では、アルテミスさん。今回の魔女暗殺依頼ですが、相手はかなり厄介そうです。どうやら超一流企業に専属で付いている超ベテランだとか」
それはつまり、隠すのがとても上手だということ。この話を聞くと、アルテミスに手伝って欲しいとラデルが考えた理由も分かった。
「だから、同族であるこの、魔女アルテミスさんが見抜いちゃえば良いってわけね」
「はい、そういうことです。向こうはベテラン、魔女暗殺屋なんて見つけたら瞬時に見抜いてくるでしょう。でも、そこに魔女が居たらーーアルテミスさんなら上流階級の魔女を見抜くなんて一瞬でしょう?」




